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石油・天然ガス技術開発と環境保全(2015)

二酸化炭素排出抑制に貢献し原油生産量を増加させる「原油回収率向上技術(EOR)」の適用

 石油開発において、油層が持つ自然のエネルギーを利用した一次回収では、地下の石油は5~25%程度しか地上に回収されません。
 今日、大規模な油田を発見するのは益々困難になり、また油田の探鉱・開発費用も大幅に上昇しているなか、既存油田の貯留層内に流体を圧入することで原油回収率を向上させる技術「原油回収率向上技術(EOR=Enhanced Oil Recovery)」が世界的に期待を集めています。
 JOGMECは1970年代から先駆的にこのEOR技術に注目し技術開発に取り組んでおり、このなかでも圧入流体に二酸化炭素(CO2)を用いる原油回収率向上技術(CO2EOR)は高い原油回収率が期待されるとともに、多量のCO2を地中に封じ込めることも可能であることから、大気中へのCO2排出抑制、ひいては地球温暖化防止にも寄与する技術としての側面もあります。
 また、原油回収率向上技術で使用する二酸化炭素の調達・確保のための技術として、これまで発電所等から大気中に排出されてきた二酸化炭素を分離・回収する技術を、JOGMECの二酸化炭素を用いる原油回収率向上技術に適用する試みを行っています。
 JOGMECでは、2010年にアブダビ沖合いの大規模海洋油田を対象に産油国国営石油会社とともにCO2EORの適用化調査を開始しアブダビから高い評価を得ています。また、2012年からベトナム国営石油会社とベトナム海上油田においても、CO2による原油生産量の増加とCO2の地下貯蔵の両者を目指す調査も実施しています。

CO<sub>2</sub>EOR イメージ図

CO2EOR イメージ図

天然放射性物質(NORM)評価・マネジメント技術開発

三菱重工業のガンマ線カメラ<br />”STROCAM7000HS”

三菱重工業のガンマ線カメラ
”STROCAM7000HS”

 天然温泉に放射能泉があるように、石油・天然ガスの生産流体(主に随伴水)に自然起源の放射性物質NORM(Naturally Occurring Radioactive Material)が含まれることはめずらしくありません。
 地下の水が介在して地表で観測されるNORMは、放射線物質のうち水に溶けるラジウムが主因であると考えられます。油田・ガス田においてラジウムは、マグネシウムやカルシウムと同じように随伴水に溶けて地上に運ばれ、ガス・油・水を分離するセパレータやそれらを分岐するマニホールドや配管等、地上設備の内壁でスケールとして付着することがあります。スケールを取り除く頻度が十分でない場合には、NORMが濃集して放射線管理区域として管理しなければならないレベルにまで放射能濃度が高くなることもあります。また、タンク等のオイルスラッジでも放射能濃度が高くなる場合があります。
 JOGMECでは産油国・産ガス国の操業現場を対象に、NORMの調査と評価、そして、対策までを含めた共同研究を実施してきました。その経験を踏まえて、実用的なNORMマネジメントを構築するための動向調査や日本独自の技術開発を進めています。
 平成25年度からは国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)の元で三菱重工業株式会社が開発・製品化したガンマ線カメラ(ASTROCAM7000HS)を更に改良してNORMを可視化する開発に着手しました。
 この開発に成功すれば、油ガス田におけるNORMの調査を、広範囲に、高精度に、しかも、短期間で実施できるようになることから、より質の高い日本発のNORMマネジメントが構築できると期待されています。

膜型CO2分離技術

膜エレメントとガス分離処理の模式図

膜エレメントとガス分離処理の模式図

 二酸化炭素(CO2)やメタン(CH4)等の温室効果ガスは、油ガス田からも大気中に放出されています。CO2とCH4を効率よく分離できれば、ガスのアップグレーディングとともに、CO2は有価物質として有効利用でき、温室効果ガスの削減にも貢献すると考えられます。そこで、JOGMECは平成25年度から、千代田化工建設株式会社と三菱化学株式会社と共同で、油ガス田向けに低コストでCO2とCH4を効率的に分離できるCO2分離膜及び膜分離システムの開発に取り組んでいます。
 また、本開発では、無機セラミックスのゼオライト(アルミ(Al)とケイ素(Si)と酸素(O)の化合物(アルミノケイ酸塩)のなかで、規則的な細孔構造を持ち、その細孔径が数Åである結晶の総称でもあり、分子ふるい、イオン交換材料、触媒、吸着材料として利用されています)を適用したCO2分離膜を用いて天然ガス中に含まれるCO2ガスを分離する技術です。石油ガス事業分野において、天然ガスを燃料或いは化学原料として使う場合、その中に含まれるCO2は使用上好ましくなく、天然ガスの効率的利用を目的とした冒頭に述べたガスのアップグレーディングのためにはCO2量を減らす事が求められます。ガスからCO2を分離除去するには、吸収法、吸着法、ふるい分けなど種々の技術が使われますが、ここで開発する技術はゼオライトの均一な細孔構造に起因する分子ふるい効果を利用する技術です。天然ガスの主成分であるCH4分子とCO2分子の大きさの違いに着目し、目の大きさを均一に調整した篩(ふるい)に当たる均一な細孔を持つゼオライトを利用することで、原料ガスと分離後のCO2ガスの圧力差を利用してCO2分離を行います。この技術では、多孔質アルミナ上にゼオライト膜で形成したCO2分離膜を結晶成長させる構造を取っています。
 実際のシステムでは、図に示されるような外観の細管を数百本束ねたモジュール構造の設備を考案しています。CHA型ゼオライト膜は無機材料であり、上記の分子ふるい効果で分離ができ、しかも均一な緻密薄膜に結晶化されているため有機材料の膜に比べCO2分離性能及びCO2透過係数が高く、耐久性に優れていると考えられます。今後は、千代田化工建設株式会社、及び三菱化学株式会社と共に小規模実証試験を通してCO2分離技術を確立し、海外の産油国等における現地実証により、石油・天然ガス分野における環境負荷を低減可能な、日本の最先端技術となるように取り組んでまいります。