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広報誌特集:変貌するエネルギー地政学 / 3カ月で4倍になった原油価格

変貌するエネルギー地政学

3カ月で4倍になった原油価格

地政学という観点から現在のエネルギーを取り巻く状況について考える時、やはり話の発端は1970年代のオイルショックにまで遡らなければなりません。

1973年10月、第四次中東戦争の勃発を受けて、当時の石油輸出国機構(OPEC)加盟国である中東6カ国は、原油の公示価格を1バレル(約159リットル)3.01ドルから5.12ドルに引き上げると発表しました。そして、1974年1月に再びOPECによる原油価格※の引き上げが行われ、3カ月前の4倍近い11.65ドルにまで上昇しました。当時、多くの国がエネルギーを石油に依存していたため、たちまち世界中がパニックに陥ったのです。

日本は、中東紛争では中立的な立場をとっていたため禁輸の対象にはなっていませんでしたが、それでもアメリカの同盟国であったことから、国民の間では「石油が届かなくなるのでは...」といった不安が高まり、流言飛語に惑わされてトイレットペーパーの買い占め騒動が起きました。石油がなくなったら、影響を受けるのは産業や生活の全てであるにもかかわらず、なぜかトイレットペーパーを買いに走り回った人が多かったということ自体、そのころの混乱ぶりをよく表しています。なお、オイルショックというのは和製英語で、海外では通用しません。英語圏ではoilcrisis(石油危機)と呼びます。

※地政学
地理的な条件が国や社会に与える政治的、経済的、軍事的な影響をマクロ的な視点で研究する学問。海に囲まれた日本ではあまり重視されてきませんでしたが、陸続きのヨーロッパでは国家戦略を考えていく上での根拠の一つになってきました。世界市場で取り引きされるエネルギー資源については地政学的な影響は大きく、今後の動向を予測していく上で重要です。

※石油輸出国機構(OPEC:Organization of the Petroleum Exporting Countries)

石油輸出国機構

※原油価格
原油価格の基準は時代ごとに変わっていきました。1970年代まではOPECが公示するアラビアンライト(サウジアラビア産の軽質原油)の価格が標準でしたが、2度のオイルショックで価格が大きく変動するようになってからはスポット価格へ、そして1986年にサウジアラビアがアラビアンライト原油の価格公示を廃止してからはドバイ原油等のスポット価格やブレント、WTI原油の先物価格に移っています。その途中にあるネットバック価格とは、特定原油の市場価値をより正確に評価するために、精製後の製品価格からコストなどを引いて逆算した原油価格を表しています。

石油メジャーからOPECへと移った主導権

歴史的には、第四次中東戦争がオイルショックの引き金になったのは事実ですが、エネルギー資源を巡る当時の世界情勢を考えると、たとえこの時期に戦争が起こらなかったとしても、遅かれ早かれ原油価格の引き上げが行われ、ショックすなわち危機が、世界中を襲っていたはずです。というのも、それまでの原油価格が1バレル2~3ドルの安値で安定していたのは、いわゆる石油メジャーと呼ばれる巨大な国際石油資本の力が強く、彼らが価格決定権を握っていたからです。しかし、第二次世界大戦後に多くの国でナショナリズムの気運が高まり、産油国を中心に「自国の資源を自国で管理したい」という思いが強くなっていきます。1960年にOPECが結成されたのも自国の利益を守ることが目的であり、当初から石油メジャーとの対決姿勢を示してきました。

それから10年近い攻防の末、1970年にはリビアが初めて産油国による価格改定に成功したほか、OPEC加盟各国は油田の国有化を求め、徐々に主導権を獲得していきました。その動きが一気に進んだのが第一次オイルショックであり、以降、1980年代半ばまで、原油価格はOPECが決定できるようになりました。

第一次オイルショック後、1978年末にOPECが再度原油価格値上げを決定します。続いて1979年2月に始まったイラン革命によって原油の生産が縮小したことから、世界規模で石油の需給が逼迫し、再び危機的状況が訪れました。これが第二次オイルショックです。

■ 原油価格の推移

出所:各種資料より石油連盟が作成

原油価格の推移

1970年代からの原油価格の推移をマクロ的に捉えると、~1973年:安値安定、1974~1978年:第一次オイルショックによる上昇、1979~1985年:第二次オイルショックによる上昇と高値安定、1986~1999年:需要低迷による安値安定、2000年~2003年:同時多発テロの発生で下落するものの、イラク戦争に向け上昇、2004年~:中国の石油需要の急増、アメリカの住宅市場の活況、そして石油供給途絶懸念などにより急上昇となっています。

JOGMEC NEWS Vol.30
内容は2012年9月時点のものになります。
当記事が掲載された広報誌「JOGMEC NEWS Vol.30(2012年9月発行)」も併せてご利用ください。