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広報誌特集:シェールガス革命の正体 / シェールガス革命と3.11以降の日本

広報誌特集:シェールガス革命の正体

米国で始まった「シェールガス革命」は、エネルギーのほぼ全量を輸入に頼っている日本にどのような影響を及ぼすのか。
2011年の東日本大震災に伴う原子力発電所の稼働停止を受け、天然ガスへの依存度が高まったが、LNGの価格高騰が一因となり、日本は2013年に過去最高の貿易赤字を記録した。
シェールガスをめぐる世界の動向、そして今後、日本がとるべきエネルギー戦略について探る。

シェールガスとは

 シェールガスとは、泥岩の一種である頁岩(シェール)の微細なすきまに閉じ込められた天然ガス(90%以上がメタン)を取り出したものです。高い水圧により人工的な割れ目を作り、さらに割れ目内に細かい砂粒を送り込むことで割れ目を保持する「水圧破砕技術」。この技術が1998年にシェール層へ応用されたことをきっかけに、2010年前後から商業的な大規模生産が行われるようになりました。

3.11以降、一次エネルギーに占める 天然ガス比率は24.5%に拡大

 2011年の東日本大震災に伴う原子力発電所の稼働停止を受け、日本では石油、石炭、天然ガスを燃料とする火力発電への依存度が高まっています。なかでも、天然ガスの一次エネルギーに占める比率は、2010年の19.2%から、2012年は24.5%にまで拡大しました。天然ガス火力発電所は、震災以前に計画されていたものも含め、多くが稼働を開始し、今後も増設される見込みです。
 一方、石油火力発電所は、1970年代の石油ショック以降、国際的な取り決めによって新設が原則禁止となっており、今後も新設の予定はありません。そのため、震災後は老朽化した発電所も稼働しています。
 また、近年になって注目を集めているのが、石炭発電です。石炭火力発電は、環境問題がクローズアップされるとともに、日本においては減少していきましたが、国産技術の開発によって燃焼効率を世界先端レベルに高めることが可能になってきています。

3.11以前・以後の一次エネルギー比率
現時点における天然ガスの世界での主要な流れ(イメージ)

LNGの価格高騰が一因となり、 2013年に過去最大の 貿易赤字を記録

 天然ガスへの依存度が高まった日本では、LNGの価格高騰が一因となり、2013年に過去最大の貿易赤字を記録しました。そもそも天然ガスは、米国において、ガス田周辺の住民を中心に消費が始まり、第二次世界大戦以前から既に、パイプラインを敷設することで遠方の住民が利用できるようになっていました。その後、さらにLNG(天然ガスを冷却・液化して容積を小さくしたもの)をタンカーで輸送することで、海外などの遠隔地でも利用が可能になったのは、本格的には1970年前後からのことです。こういった経緯があるため、現在においても、天然ガス液化施設や輸出基地を保有している国々は限られ、輸送が容易な石油とは違って、天然ガスの世界的な市場は形成されていません。米国や英国では天然ガスの需給によって価格が決定されますが、日本においては、天然ガスは石油の代替エネルギーであったこともあり、LNG輸入価格は原油価格連動型となっています。

 日本のLNG輸入価格に影響を与える原油価格は、2004年から上昇し始め、2008年後半には下落したものの、以後、金融緩和等による景気回復と石油需要増大の見通しに伴う石油需給引締り観を背景に、株式市場と連動するようになりました。さらに円安も重なり、日本のLNG輸入総額は、2010年には3.4兆円程度であったものが、2013年には7.0兆円を突破しました。

シェールガス革命は、 日本の救世主となり得るのか

 日本は現在、豪州、カタール、マレーシアなどからLNGを輸入していますが、米国からシェールガスが直接輸入されるようになるのは、早くて2017年になると見られています。と言うのも、シェールガス革命以前の米国は、将来LNGの輸入大国になると見られていたため、LNG輸入基地は整備されてきていましたが、液化施設や輸出基地など、LNG輸出のためのインフラは、シェールガスが増産されてからも、建設がほとんど始まっていないためです。

 米国国内の天然ガス価格は、高水準のシェールガス生産が一因となり、2012年時点で100万Btu※当たり2米ドルに低下しました。この情報をもとに、日本は安価なLNGを輸入できるという見解が出てきたことから、「バラ色のシェールガス革命」という誤ったイメージが形成されてしまいました。しかし、2米ドルという価格が形成されたのは、暖冬により国内で天然ガスの需要が緩んだという理由も加わってのことであり、将来もこの価格が維持される可能性は低いでしょう。なぜならシェールガスの開発・産出コストは、100万Btu当たり4~6米ドルとされており、コスト割れが長引けば産出を持続することができないためです。4~6米ドルという価格は、現在の日本の輸入価格である17米ドルよりは安価ですが、実際に日本がどの程度の価格で、どの程度の量の天然ガスを米国から購入できるのかを検証しておく必要があります。

 まず価格については、天然ガスの液化費用とタンカー輸送費用がかかりますから、米国の天然ガス価格が4米ドルという前提でも、LNGとして日本に輸入する時点で10米ドル程度になると考えられます。これは、現在の輸入価格の17米ドルよりも約40%安価という計算になります。他方、輸入量に関してはどうでしょうか。現在、市場関係者の間では、2020年までに米国から輸出されるLNGの総量は最大で約6,000万トンと考えられており、これは日本のLNG輸入量約8,750万トンの約3分の2を占める計算になります。しかし、その全量が日本に輸出されるわけではなく、ヨーロッパ、中国、インド、韓国、東南アジア、中南米に分散してしまうため、日本向けの輸出量は約1,500万トン、日本が現在必要とするLNGの6分の1程度にとどまると推定されます。日本が輸入する天然ガスの6分の1が40%安価になるということは、全量に対する価格引き下げ効果は約7%に過ぎないことになり、この程度の価格引き下げ効果では、為替相場の変動に呑み込まれてしまう可能性があります。

 つまり、シェールガス革命は、これだけで日本のエネルギー問題を全て解決する特効薬とは言い難いことが分かります。しかしながら、シェールガス革命にいち早く対応することによって、後述のように、エネルギーの安定供給確保に向けた取り組みの一つとすることが可能になります。

※ Btu:British Thermal Unit(英国熱量単位)。1Btuは、1ポンド(約454グラム)の水を1華氏度(約0.57℃)引き上げるのに必要な熱量。

世界の天然ガス価格(2005~2013年)

世界の天然ガス価格(2005~2013年)


 



JOGMEC NEWS Vol.37
内容は2014年6月時点のものになります。
当記事が掲載された広報誌 「JOGMEC NEWS Vol.37(2014年6月発行)」も併せてご利用ください。