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対談集:Talk Session1 福島敦子×石井 彰

キャスターでありエッセイストでもある福島敦子さんが、エネルギーについて、資源についての疑問をJOGMECの職員に聞く4回連続の対談企画です。 今回のテーマはエネルギーについて。日本を取り巻くエネルギーの現状とこれからを、JOGMEC客員上席研究員の石井彰が答えます。

今、エネルギーの世界で「天然ガス」が注目 されている理由とは?

石井彰(JOGMEC客員上席研究員) 福島敦子(キャスター、エッセイスト)

石井彰(JOGMEC客員上席研究員) 福島敦子(キャスター、エッセイスト)

エネルギー不足は製造業の競争力を失わせ日本経済の足を引っ張る

福島 東日本大震災とそれに伴う福島の原子力発電所の事故以来、私たち生活者の間でもエネルギー問題に対する関心が高まっています。
石井 エネルギーについて考えていただけるのは嬉しいですね。
福島 まずは日本の電力事情について、現状においては50基の原発全てが停まっている中で夏の電力需要のピークを迎えるわけですが…。
石井 はっきり言って大ピンチです。皆さんは家庭のエアコンが利用できるかどうかといった点で心配されているのかもしれませんが、日本全体としては産業用、主に製造業への電力供給の不安があります。電力が足りなければ企業は生産拠点を海外へ移転し、産業の空洞化がますます進みます。さらに日本に残った企業も高い電力コストによって競争力を失ってしまうでしょう。
福島 製造業は日本経済を支える存在だけに深刻な問題ですね。原子力が使えない状況で必要な電力を確保するにはどうしたらいいのでしょうか?
石井 規模からいえば、原子力の代替の役目を果たせるのは火力発電だと思います。しかし石炭を燃料とする発電所は既にフル稼働ですから、比較的、余裕のある天然ガス火力発電の出力を上げて対応していくしかありません。ただ、これからの天然ガスの調達にかかる費用は年間6兆円以上になりそうで、日本のGDPが約500兆円であることを考えると、日本経済に与えるインパクトも非常に大きいと言えます。

福島敦子×石井彰

小規模で不安定なエネルギーだけでは社会を支えられない

福島 中長期的な代替手段として一般的には再生可能エネルギー(自然エネルギー)への期待が高まっていますが…。
石井 再生可能エネルギーのうち、水力発電はもう大きく伸ばす余地はありません。地熱発電とバイオマス発電は期待できるので開発を進めるべきですが、ある程度の規模になるにはもう少し時間がかかると思います。
福島 太陽光発電と風力発電はどうなのですか?
石井 もちろん導入を進めていくべきでしょうが、いずれも供給量が少ない上に供給が不安定であるため、原子力発電の代替という考え方はせず、まずは小規模電源として考えるべきでしょう。
福島 そのあたりは一般的なエネルギー報道を見ているだけではなかなか分かりませんね。
石井 新聞やテレビなどマスコミからの情報だけでは、誤解を招きやすいところがありますね。太陽光発電と風力発電はコストもまだまだ高いし、大規模に導入しようとすると広大な土地が必要になり森林伐採などの新たな自然環境破壊につながる可能性があります。これは、水力発電所の建設において日本の多くの河川が姿を変えたことを思い出していただければ分かると思います。そう考えていくと現実的には、私はやはり天然ガスをもっと活用した中長期的なエネルギー戦略を策定していくべきだと思いますね。

技術革新で資源量が飛躍的に伸びた天然ガスは開発から手掛けることで有利に使える

福島 先ほどのお話では、日本では今、天然ガスの調達費が膨大になっているということでしたが、それでも石井さんが天然ガスに注目している理由はどこにあるのですか?
石井 実は天然ガスは、本来安い燃料なのです。このためヨーロッパの多くの国では早い時期から天然ガスをエネルギーの中核と考えてきました。日本でも20年以上の長期契約を結んで購入してきましたが、石油価格にスライドする価格設定となっていたことと、さらに突発的な原発代替分を慌てて市場から買い集めているせいで、結果的に現在ヨーロッパの2倍もの高い価格になってしまっているのです。
福島 賢い消費者ではないということですね。
石井 四方を海に囲まれている日本では、液化天然ガス(LNG)にしてタンカーで輸入しなければならないため不利だと主張する人がいます。しかし、サハリン経由で東京までパイプラインを敷くことは、技術的にも事業的にも可能なのに、なかなか実現しない。だから私はいつも「そういう思い切ったことをしなければエネルギーを有利に確保することはできない」と言い続けています。
福島 天然ガスは資源として十分にあるのですか?
石井 油田やガス田から生産される「在来型」と呼ばれるものに加え、近年の技術革新によってシェールガスやタイトサンドガス※、炭層メタン(CBM)※といった「非在来型」のものも採取できるようになりました。その結果、今後400年は持つといわれるほどです。
福島 新しい技術の開発によって資源量が飛躍的に伸びたのですね。そんな天然ガスを上手に使うにはどうしたらいいのでしょうか?
石井 大事なのは長期的な戦略を立てて確保と利用を行っていくことです。例えば電力・ガス会社をはじめとする大口ユーザーや国内のエネルギー関連企業が、産出国で権益(採掘権など)を獲得して資源開発を進めれば、市場の動向に左右されることなく低コストによる安定した調達が可能でしょう。そして、このような活動を積極的に支援しているのがJOGMECなのです。
福島 CO2の問題はどうなるのでしょう?
石井 同じ熱量で比べた場合、天然ガスのCO2排出量は石炭の3分の1程度です。したがって、古い石炭火力発電施設を天然ガス用にリプレイスし、しかもコンバインドサイクルやコージェネレーションなどを含めた効率のよいプラントを積極的に導入していくことで、同じ出力を維持したままCO2の発生を抑制できるのです。
福島 エネルギーのことを考えていくには、客観的な情報と幅広い知識が必要ですね。
石井 大切なのは日本全体という広い視野で考えることです。そのためには単純なイメージ論や感情論に流されるのではなく、できるだけ広い知識に触れ、エネルギー問題は複雑で奥深いものだということを理解してほしいですね。

※タイトサンドガス(Tightsand Gas)
浸透率が低い砂岩に含まれる天然ガス。一般に地層深度が深いため、掘削費用がかさむなどの理由で開発があまり進まなかったが、シェールガスと同様、フラクチャリング(地層に坑井から高圧水を注入して割れ目をつくり、ガスの流れをよくする方法)などの坑井刺激法が普及し、米国では生産量が増大している。

※炭層メタン(CBM:Coalbed Methane)
石炭の生成過程で生じたメタンガスが地下の石炭層やその近くの地層に貯留されたもの。従来は炭鉱爆発事故の原因の一つとして厄介者扱いされてきたが、近年は資源としての価値が注目され、ボーリングにより採掘される傾向にある。米国ではすでに商業生産が始まったほか、カナダ、ロシア、中国、オーストラリア、ウクライナ、インド、英国などでも開発の動きがある。

福島敦子×石井彰
JOGMEC NEWS Vol.29
内容は2012年6月時点のものになります。
当記事が掲載された広報誌「JOGMEC NEWS Vol.29(2012年6月発行)」も併せてご利用ください。