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対談集:Talk Session2 福島敦子×林 歳彦

キャスターでありエッセイストでもある福島敦子さんが、エネルギーについて、資源についての疑問をJOGMECの職員に聞く4回連続の対談企画です。今回のテーマは金属資源の探査について。
日本に欠かせない金属鉱物資源を確保するために行われる国際的な活動とは? JOGMEC資源探査部長の林歳彦が答えます。

絶対に必要な金属を探し、日本に安定供給していく使命感があります

林歳彦(JOGMEC資源探査部長) 福島敦子(キャスター、エッセイスト)

林歳彦(JOGMEC資源探査部長) 福島敦子(キャスター、エッセイスト)

地上に現れたわずかな岩石の変化が金属のありかを教えてくれる

福島 金属資源の探査では実際にどんな作業を行うのですか?
 基本的には鉱床(経済的に採掘できる有用な鉱物を多量に含む岩石の集まり)があると思われる地域を足で歩き、自分の目で発見していきます。
福島 見るだけで分かるのですか?
 金属鉱床はマグマに溶けていた銅や金などの金属がそこから発せられる熱水によって抽出され、一定の場所に運ばれて濃集していくことで形成されます。従って、地上を歩きながら露頭と呼ばれる岩石が露出した場所を調べ、そこに熱水で変質した鉱物を確認できれば、「この下に金属鉱床があるかもしれない」と推測できるわけです。
福島 例えば、どんな鉱物なのですか?
 例えば安山岩は長石という白っぽい鉱物を含みますが、これが熱の作用を受けて白い細かな雲母になっていれば熱水変質帯である可能性が高いとか、そういった熱水活動のフットプリント(足跡)を探していきます。
福島 地上だけの探査では金属鉱床の場所までは分からないですよね。
 最終的にはボーリングを行って地下の鉱物を採取しなければ確証にはなりません。
福島 1,000件探しても価値のある鉱山になる可能性は3件ほどしかないので「せんみつ」と呼ばれるとか。
 最近はもっと厳しくなって1万件に3件の「まんみつ」と言われるほどです。
福島 それは大変ですね。私の読んだ資料にも、金属鉱床は深部化、奥地化、低品位化していると書かれていましたが、それと関係があるのですか?
 その通りです。地上付近の浅いところにある鉱床はほとんど掘り尽くされてしまったので今はもっと深いところを探しますし、探すエリアも人の住んでいるところからどんどん離れて、アクセスのしにくい地域が対象となっています。
福島 「奥地」というのはどういうところなのですか?
 例えば、アルゼンチン・チリ国境近くの銅鉱床の探査では、人が住む最後の村から数百キロメートルも離れていて、しかも標高が4,000メートルから5,000メートルというアンデス山中ですから、車も入らず、馬に乗って進んでいきました。
福島 えっ、乗馬経験はあったのですか?
 初体験でしたが、小さな馬なのでどうにかなりました(笑)。でも、こういう仕事をしていると、嵐の海上を小さなボートで数時間移動するとか、虫だらけの小屋で寝るとか、人が行かないような場所ばかりですので、冒険談みたいな話はたくさんありますね(笑)。

福島敦子×林歳彦

物理的なデータから地質状況を読みとるノウハウ

福島 前号の『JOGMEC NEWS』(Vol.29)では、銅の特集の中で金属資源の探査技術は、年々進歩していると解説してありました。例えば人工衛星によるリモートセンシングとか。
 リモートセンシングは非常に有効な探査方法ですね。鉱物は種類によって特定の波長の光を吸収しますから、衛星写真を分析することでその分布が分かります。それによって奥地まで含めた広い範囲を調べられるようになったのです。
福島 そして、可能性のあるエリアを実地調査するのですね。
 その時も、露頭の観察や試料を採集して調べるだけでなく、さまざまな機器を使った物理探査を行うことで地中深くの様子を探っていきます。
福島 JOGMECでは探査機器の開発もしていると聞きましたが。
 電磁探査に用いられる「SQUITEM(スクイッテム)」という機器は、JOGMECが開発しました。最新の「SQUITEM III」では地下1kmくらいまでは測定できます。JOGMECが探査機器の開発まで手掛けるのは第一に、先ほども話したように、より深いところを探査する必要があるからです。そして第二に、資源外交上の強みになるからです。資源会社や資源国も、優れた探査技術や機器を持っている国や企業と一緒に探査・開発事業をしたいと考えていますから、パートナーに選ばれるためにも新技術への挑戦は欠かせません。
福島 金属資源の探査の技術では日本はどのレベルにあるのですか?
 かなり進んだ位置にいます。人工衛星や探査機器を駆使できるだけでなく、そこから得られたデータを分析し、探査に活用していける技術がありますから。
福島 データを集めただけではだめなのですね。
 衛星や探査機器から得られるデータは、光の波長や電気の伝導率、磁場の強さといった物理的な数値でしかありません。そこから地中の様子をいかに読みとっていくかが最も重要な技術であり、ノウハウなのです。
福島 そうした人材が国内に多くいらっしゃるのですか?
 この分野の専門家は多くはいません。世界的に技術者不足ですね。JOGMECでも次代の人材育成には力を入れています。

JOGMECの探査事業は日本企業にバトンタッチされ金属資源の安定供給につながる

福島 探査事業によって発見された鉱床は、その後、どうやって開発されるのですか?
 JOGMECでは鉱山の開発や運営までは行いませんので、そこで得られた権益を日本の企業に買ってもらい、開発してもらうことにより、日本への金属資源の安定供給に貢献しています。
福島 そこからは企業の仕事になるのですね。
 探査も大変ですが、その後の開発には、さらに多くのお金と時間がかかりますから、このあたりは分担していこうという考えです。この多額のお金に対しては、JOGMECが資金的な支援をします。
福島 鉱床発見から採掘事業が始まるまではそんなに時間がかかるのですか?
 早くて10年、中には数十年かかるケースもあります。地元との折衝や設備を整えるのはそんなに簡単ではありません。
福島 そんなに苦労が多いのに、林さんたちが資源開発の仕事を続けるモチベーションはなんでしょう。
 例えば銅を例にとると、この金属は30年以上前から「あと30年で枯渇してしまう」と言われていたほどで、常に資源開発を続けていかなければ供給はストップし、産業や生活が成り立ちません。さらに最近では、レアアースのように緊急に必要性が生じた金属もあり、そういった需要にも応えていく必要があります。日本国内に大きな金属鉱山がない以上、海外で探査事業を展開するのは当然であり、日本への資源の安定供給のためにという使命感が、仕事の喜びにもなりますね。
福島 その使命感が産業や私たちの暮らしを支えてくれているのですね。

福島敦子×林歳彦
JOGMEC NEWS Vol.30
内容は2012年9月時点のものになります。
当記事が掲載された広報誌「JOGMEC NEWS Vol.30(2012年9月発行)」も併せてご利用ください。