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対談集:Talk Session3 福島敦子×大竹健司

キャスターでありエッセイストでもある福島敦子さんが、エネルギーについて、資源についての疑問をJOGMECの職員に投げかける対談企画。今回のテーマは国家石油ガス備蓄事業について。
完成間近の倉敷基地および波方基地の意義や技術について大竹健司が答えます。

地下岩盤タンクにLPガスを備蓄する日本初のプロジェクト

大竹健司(JOGMEC石油ガス備蓄部建設計画管理課長) 福島敦子(キャスター、エッセイスト)

大竹健司(JOGMEC石油ガス備蓄部建設計画管理課長) 福島敦子(キャスター、エッセイスト)

運用コストも含めるとメリットの多い地下タンク方式

福島 岡山県倉敷市と愛媛県今治市に建設中のLPガス(液化石油ガス)備蓄基地を長く担当されているそうですが、現在の進捗状況を教えていただけますか。
大竹 両基地とも地下と地上にある設備・施設は完成していて、現在、運用に向けてのさまざまなテストや準備を行っている段階です。いずれも2012年度中の操業開始を予定しています。
福島 地下タンクにLPガスを備蓄すると知って驚いたのですが、これは日本でも初めての試みだそうですね。
大竹 国の石油ガス備蓄事業は、国内に5カ所の備蓄基地を建設し、計150万トンのLPガスを備蓄できるようにする計画です。これらのうち茨城県の神栖基地、石川県の七尾基地、長崎県の福島基地の3カ所を地上タンク方式で、倉敷と波方の2カ所を地下岩盤タンク方式で建設することになったのです。
福島 どうして2種類の方式を採用したのですか?
大竹 地上タンク方式は、日本でも実績があるので既存の技術を活かせます。一方、地下岩盤タンク方式は海外では多くの実績※があるものの、日本では実績がありません。従って、新しい技術にも挑戦すべきだとの考えからこちらの方式も採用になりました。
福島 地下岩盤タンク方式のメリットは何ですか?
大竹 建設コストは地上タンク方式より多くかかりますが、50年以上運用すると考えた場合、維持管理コストを含めた総予算は地下の方が少なくて済みます。
福島 トータルでみれば、地下タンクの方がお金がかからないのですね。
大竹 それに地上の場合は、LPガスの圧力が上がりすぎないように冷却し続けなければなりませんが、地下岩盤タンクは地下水の圧力でLPガスを封じ込めることができるので、その必要がありません。
福島 圧力だけで液化状態を保てるのですか?
大竹 例えば、卓上用ガスコンロのカセットボンベや百円ライターにはLPガスと同じ成分のガスが入っていますが、圧力をかけているので冷却の必要はありません。同じように地下岩盤タンクなら摂氏20度ほどで大丈夫です。このほか、地下岩盤タンク方式は、地上タンク方式と比べて地理的条件などの制約が少ないので大容量の設備をつくりやすく、また地上用地が少なくて済むので周辺の環境に与える影響が小さく、さらに自然災害に強いといった利点もあり、世界中で採用されている備蓄方式と言えます。

※海外の地下岩盤タンク
現在、12カ国、計70カ所に地下岩盤タンク方式による備蓄基地がある。

福島敦子×大竹健司

地震国日本でも安全な地下備蓄技術を確立する

福島 地下に掘った穴にガスを貯めるということですが、地震による被害はないのですか?
大竹 地下施設はもともと地震に強く、今回のように地下180メートルほどのところに貯槽(タンク)をつくった場合、揺れの大きさは地上の3分の1程度に減ります。ただし日本列島は、活発な地殻変動などの影響を受けており大陸のように岩盤が均質ではありません。従ってボーリングを含めた調査を綿密に行い、岩盤の安定しているところだけを掘るように設計を変更したほか、岩盤に亀裂があるところには特殊なセメントミルク※を注入するなどして必要な強度を確保しています。
福島 地震で割れるようなものではないのですね。
大竹 もちろんそうです。しかも地下に貯蔵する場合は水封式といって地下水の圧力を利用してLPガスを封じ込めるので、岩盤だけでガス圧を抑えているわけではありません。
福島 水で抑えるのですか?
大竹 地下水には深さに応じた圧力があり、備蓄するLPガスの発する圧力がそれ以下であれば拡散したり外に漏れたりはしません。この自然水封式に対して、今回の2基地の場合には地上からの注水によってさらに水圧を高める人工水封式を採用しており、自然の水圧より高いガス圧にも対応できるようになっています。
福島 注水は電力で行うのですか? 非常時の電源確保は大丈夫なのでしょうか。
大竹 注水用と排水用、そして監視センサー用の電源は欠かせません。東日本大震災による津波で原子力発電所の電源が失われたことは、私たちにとっても衝撃でした。このため当初の計画よりも安全性を強化するかたちで電源の見直しを行い、同じ高さの津波にも耐えられるようにしていきます。
福島 常に新たな改善改良を施してゆくのですね。
大竹 私はこの事業に2000年頃から携わっていますが、その間、いろいろな仕事をしてきました。建設地の決定、周辺住民の方との対話、環境アセスメント、技術検討、工事、テストなど、どれも新しい試みです。
福島 10年以上も一つのプロジェクトに携わるのは、根気のいるお仕事ですね。
大竹 自分の役目だと思って取り組んできましたから、大変だとは思いませんでした。ただ、日本初、先例のない施設をつくるだけに、今までにない工夫が必要な場面は多かったですね。例えば周辺住民の方や自治体にご理解をいただくためにも、分かりやすい技術資料や実験模型を使って説明するなど、多くの手間をかけました。時間がかかり、しかも技術的に難しいということも含めて、民間企業ではなかなかできないプロジェクトだと思いますね。
福島 だからこそ、JOGMECが行う意義があったのですね。
大竹 エネルギーの備蓄は、日本のような資源に恵まれない国にとって非常に重要です。それに必要な新しい技術やノウハウの開発はJOGMECの使命と言っていいでしょう。

※セメントミルク
セメントと水とを練り混ぜてできたミルク状のもの。

LPガスは日本の半数の家庭を支える重要なエネルギー

福島 ところでLPガスはLiquefied PetroleumGa(s 液化石油ガス)の略称だそうですが、これはプロパンガスと呼んでいるものと同じですか?
大竹 そうです。石油と一緒に油田から産出されるガスを液化したものが大半で、成分にはプロパンだけでなくブタンも含まれることから今はLPガスと呼ばれます。
福島 主な用途は何ですか?
大竹 家庭用の燃料ガスとして日本の全世帯の半数にあたる約2,500万世帯で使われているほか、タクシーの主流はLPガス自動車です。最近ではハイブリッドカーの燃料としても利用されています。またブタンは化学工業の原料としても欠かせません。
福島 つまり日本家庭の半分はLPガスで食事をつくったり、暖房や、お風呂を沸かすのに使っているのですね。災害時にも強いと聞いたのですが?
大竹 そのとおりです。LPガスは配管が短く災害後の点検が容易なため、点検で問題がなければすぐにガスの使用を復旧でき、防災都市づくりにも必須のエネルギーと言われています。それだけ重要なエネルギーだからこそ、国家による備蓄が決まったのです。
福島 何日分、備蓄するのですか?
大竹 既に操業中の地上3基地に、今回の倉敷と波方を含めた国家備蓄基地全体で約40日分、そして民間のガス会社に50日分の備蓄を義務づけていますから、合わせて約3カ月分は確保できます。ですから、もし中東からの供給が途絶えても、その間に対策が打てるのです。
福島 LPガスの中東依存度は80パーセントだそうですね。
大竹 石油と一緒に生産される分が多いのでどうしてもそうなってしまいます。もちろん、エネルギーの多様化と供給地の分散は進めなければなりませんが、その一方で必要な量を備蓄する事業は欠かせません。JOGMECがその両面で大きな役割を果たし、国民の生活を守っていかなければいけないと思っています。

福島敦子×大竹健司
JOGMEC NEWS Vol.31
内容は2012年12月時点のものになります。
当記事が掲載された広報誌「JOGMEC NEWS Vol.31(2012年12月発行)」も併せてご利用ください。