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対談集:Talk Session4 福島敦子×河野博文

キャスターでありエッセイストでもある福島敦子さんが、エネルギーについて、資源についての疑問をJOGMECに投げかける対談企画。最終回は理事長の河野博文が、これからのJOGMECにとってどんな課題があり、それについてどう取り組んでいるのかお答えします。

「資源新時代」に向けてJOGMECが果たしていく役割とは

河野博文(JOGMEC理事長) 福島敦子(キャスター、エッセイスト)

河野博文(JOGMEC理事長) 福島敦子(キャスター、エッセイスト)

エネルギーを取り巻く状況が大きく変わってきた

福島 中国やインドなどの急激な経済成長で、エネルギー資源の安定的な確保が難しくなっていますが、このような激動の時期にJOGMECの舵取りをするのは責任重大ですね。
河野 確かに新興国のエネルギー需要の増大に加え、資源国のいわゆる「資源ナショナリズム」の台頭などもあって資源確得競争は世界的に激化しています。中でも日本は東日本大震災以降、停止している原子力発電分の電力を火力発電で賄わなければならず、燃料、特にLNGの調達が急務となったのですが、そのため昨年は31年ぶりの貿易赤字を記録しており、いろいろと難しい局面です。
福島 需要が増大する一方で、シェールガスのような新しいタイプのエネルギー資源が開発され、世界第2位のエネルギー消費国であるアメリカが天然ガスに関しては輸出国になるかもしれないというのも、大きな時代の変化ですね。
河野 シェールガスの生産が盛んになったことでアメリカの天然ガス価格は安くなっていますが、ガスを液化したLNGという形でしか輸入できない日本の調達コストが直ちに下がるというわけにはいきません。天然ガスの液化基地をつくるには、場合によっては数兆円という膨大な資金が必要になるため、最初に販売価格の決定方式を決めて長期売買契約を結ぶのが基本ですし、アジア向けのものについては価格が原油にリンクしています。だからといって日本が現在の高油価を反映した高い天然ガス(LNG)を買い続けるわけにもいかず、取引形態を含めてどういう戦略が必要なのか考えていく必要があるでしょう。
福島 アメリカのシェールガスが、直接日本に輸入されることはないのですか?
河野 今のところアメリカは、日本などFTA非締結国への天然ガスの輸出については個別に審査することとしていますが、これまでに本土48州から輸出した実績はありません。ただ、この状況は今後変わる可能性があり、そのあたりの動向も将来のLNG価格に大きく影響してくると思いますね。※
福島 再生可能エネルギーを含めて、日本でのエネルギーの選択肢は現在増えているといえますでしょうか?
河野 日本は元々再生可能エネルギーのパイオニアだったのですから、その活用を考えていくべきでしょう。ただ、基幹エネルギーという意味では今後も化石燃料に重きを置くのは必然であり、シェールガスなどの非在来型を含めた天然ガスや石油を、いかに安定的に日本に持ってくるかに注力するのが常に変わらぬ私たちの使命だと思っています。

※FTA非締結国への天然ガスの輸出について
FTA(自由貿易協定)非締結国への天然ガスの輸出許可権限を持つアメリカのエネルギー省は、2012年12月、外部に委託して作成したLNG輸出問題に関するレポートを公表。それによると「いかなるシナリオでもアメリカにとってLNG輸出はプラス効果がマイナス効果を常に上回る」、「LNG輸出によって悪影響を受ける産業・雇用の範囲は極めて限定的」との報告。

開発を手掛ける日本企業を資源の専門機関として資金・技術面でサポート

福島 エネルギーの安定供給のためには、電力会社やガス会社などの大口ユーザーが資源開発から手掛け、権益を得るのも一つの解決策ですね。
河野 市場にあるものを買ってくるだけでは、資源価格も需給バランスによって決まる以上、日本が販売側に発電用の燃料を大量に輸入するから低価格でと頼んでも、販売側もビジネスですから簡単には応じてくれません。そういう状況を改善するためにもユーザーによる上流投資、つまり資源開発プロジェクトに自ら参加していく姿勢が大切です。
福島 日本企業の資源開発プロジェクトを支援するのも、JOGMECの役割ですね。
河野 震災が起きた2011年3月以降、日本企業が展開する天然ガスやシェールガス開発プロジェクト7件に対して出資や債務保証を行いました※。
福島 日本企業も積極的に海外で資源開発を進めているのですね。
河野 市場で調達するのと違って開発投資はリスクを伴いますが、安定的な資源確保につながるだけでなく、そのプロジェクトが採算性の高いものであれば配当というかたちで利益が得られます。開発投資の目的としては、むしろ、こちらが本来のものなのでしょうね。ただ、民間企業だけでは資金力などでも十分とはいえない面があるので、専門機関であるJOGMECがさまざまなかたちでサポートしていかなければと思っています。
福島 権益確保というと何か強引な手法のように聞こえますが、資源開発においては普通のビジネス形態なのですね。
河野 要するに開発プロジェクトの経営に参画し、投資比率分の生産物や収益を得るということですからね。昔は1社で開発を全て行うというケースもありましたが、今は複数の企業でコンソーシアムを組んで行うのが一般的であり、そこにどう食い込んでいくかが重要なのです。
福島 食い込んでいく、というのは?
河野 例えば油田の開発でいえば主に産油国が入札を行うわけですが、資金力のある企業が有利ということになります。従ってJOGMECの出資・債務保証による支援が意味を持つのです。ただし、金額だけでなく包括的な技術協力などを求めたり、技術能力を評価するなど産油国によって対応が違う場合もあります。
福島 「技術力」がものをいう時代になってきたのですね。
河野 日本の優れた環境技術などは大きなセールスポイントですよ。資源国には、油・ガス生産時に排出される水や炭酸ガスによる環境負荷を下げたいというニーズがあり、生産施設などのエネルギー施設で導入されている日本のシステムは技術的に高い評価を受けているのです。従って、こうした技術を含めて日本の強みを上手に活かして資源の安定供給につなげるのも、JOGMECの新しい役割だと思っています。もちろん、日本の技術力を上手に活かすためには外交による資源国へのアプローチも大切であって、そういう部分で支援していくのも資源外交の現場の担い手としてのJOGMECの仕事なのです。

※JOGMECが支援を決めた日本企業が展開する天然ガス・シェールガス開発プロジェクト(2011年3月以降分)

JOGMECが支援を決めた日本企業が展開する天然ガス・シェールガス開発プロジェクト(201
福島敦子×河野博文

新たに石炭と地熱の開発支援事業を展開

福島 エネルギーに関していえば、石炭と地熱に関する開発支援もJOGMECの管轄になりましたね。
河野 資源開発への支援機能を集約していくというのが今の日本の基本的な政策で、2012年9月にJOGMEC法が改正・施行されました。石炭は日本にとって現在も発電燃料や製鉄原料として不可欠の資源ですが、新興国の需要の急増によって需給がタイト化しています。このため、JOGMECはモザンビークで進められている新たな大規模石炭鉱山開発プロジェクトへの支援を行うなど、安定供給に努めていきます。
福島 アフリカまで鉱山開発に行っているのですね。
河野 石炭は日本国内で長く採掘が続けられていたため、世界的に獲得競争が激しくなっていく中で、安定的に輸入する政策があまり積極的に打ち出されてきませんでした。しかし、日本には石炭の開発や利用に関しての高度な技術があるのですから、それを活かして新たな開発を進めるべきだと思います。
福島 日本は石炭の先進国だったのですからね。
河野 そうですね。現在も活動を続けている釧路の炭鉱では、アジアなどから研修生を受け入れて技術指導をしているほどです。つまり、日本は技術面で有利な立場にあるのですから、その強みを活かさない手はありません。
福島 日本は、地熱資源が豊富だといわれながら、なかなか開発が進みませんね。国立公園内で開発ができないという問題や、温泉の枯渇を懸念する方々がおられるそうですが。
河野 日本の地熱資源のポテンシャルは世界第3位ですから、再生可能エネルギーの比率を高めるという目的からも、もっと開発を進めていくべきだと思っています。国立公園の問題は、環境省も一定条件を満たせば許可する方針ですので解決すると信じています。温泉業界の皆さんのご心配については、温泉の源泉の深度と発電用の貯留層の深度が全く違うといった点などを丁寧に説明し、心配を解消してもらうことが大切でしょうね。
福島 地熱発電のほうがもっと深い層から水蒸気を取り出すので、影響はないのですか?
河野 基本的にはそうなのですが、温泉業に従事される方々が心配される気持ちも分かるので、十分な説明とともに対話が必要です。新たに地熱発電所ができたら、そこを中核にした地域開発や観光開発を進めるという方法もあるので、温泉業界の方々との共存共栄といった道も考えていきたいですね。それから、地熱発電といっても大規模なものばかりでなく、湧き出す温泉の熱をそのまま利用する小規模なものもあります。温泉業者の方々にとってはそういうエネルギー利用の方法もあるわけで、いろいろなかたちで地熱資源を活用していけたらいいですね。

探査・開発・事業支援などさまざまな分野のプロが資源ビジネスを応援する

福島 前々回の対談では、資源探査部長の林歳彦さんにお話を聞かせていただいたのですが、金属資源開発も時代とともにますます困難になっているそうですね。より奥地の、より標高の高いところで探さなければならず、しかも鉱石の品位はどんどん低くなっているとか。
河野 彼のような探査のプロの活躍は、JOGMECにとって誇りです。実は一度彼に、チリのアンデス山脈の標高5,000メートル付近まで連れて行かれました。そこはJOGMECが探査をしてワールドクラスの銅鉱床を発見したところなのですが、日本の鉱山会社が現在開発中のカセロネス鉱山のさらに奥の標高の高いところにありまして、私は空気が薄いため倒れそうだったのに、彼は落として転がっていったヘルメットを追いかけて走っていた(笑)。富士山よりかなり高いところでのあの元気は、やはり現場で足を使い調査活動を続けてきたからなのでしょうね。
福島 JOGMECでは金属資源開発に関して、衛星を使った宇宙からのリモートセンシングを活用し、その結果に基づき地上を歩いて調査をし、有望な鉱床をみつけていくことが多いそうですね。
河野 もちろん、民間の開発プロジェクトへの支援もしていますが、自分たちで鉱床を発見し、その成果を民間企業に引き継いでいくことで日本への安定供給につながるケースもたくさんあります。
福島 だからこそ金属資源探査技術について、JOGMECは強いのですね。
河野 それは自信を持って言えます。昨年も南アフリカで新しいプラチナの鉱床をみつけたのですが、チリのケースと同様に、ほかの開発会社が目を付けなかったところに可能性を感じ、「ここを掘りましょう」と言ったのがぴたり当たった。技術力だけでなく、日本経済のために必要な資源を探し出すといった責任感や熱意みたいなものが強いのでしょうね。
福島 エネルギー資源についてもそうなのでしょうが、JOGMECはあくまでも開発の現場の感覚と視点を大切にしてプロジェクトの推進や支援を行っていくということなのですね。
河野 そこが大事です。案件としては資金面での支援のケースが多いものですから、「JOGMECと金融機関はどう違うのか?」と疑問を持たれる方がおられるのですが、私たちは開発事業者と一緒に考え、現場を理解した上でどんなサポートができるのかを考えます。当然、リスクも共有するパートナーになるという考え方です。
福島 JOGMEC職員なら誰もが「現場の感覚と視点」を持っているのですね。
河野 もちろんそうありたいと思っています。私もアンデスだけでなく世界中のあちこちを回ってきました。資源開発の仕事の醍醐味は、資源がみつかった時の喜びや感動に尽きます。私は、幸運にも東シベリアの開発プロジェクトで石油を発見した現場を訪問したことがありますが、あのような興奮はなかなか味わえるものではありません。

福島敦子×河野博文

資源国のニーズに応え「国づくり」の手伝いをすることで深い信頼関係を築いていける

福島 資源国との関係で変わってきたと感じることはありますか?
河野 資源を保有する国も、ただそれを売って利益を得るだけでなく、中長期的な経済成長や国づくりを願っています。日本など資源輸入国は、そういったニーズに真摯に対応していく必要があるのではないでしょうか。
福島 例えばどんなことでしょうか?
河野 どの国でも必ず求められるのが人材の育成です。資源の採掘と生産を基幹産業にしていくにはその分野の専門家が必要ですが、多くの資源国では教育の機会が十分ではありません。このためJOGMECでは資源国から年間100人から200人くらいの技術者を招き、研修を行っています。
福島 どんな国の方がいらしているのですか?
河野 さまざまですね。最近ではモザンビークやイラクからも研修生が来ています。
福島 教育以外にはどのような取り組みをされているのですか?
河野 ボリビアのウユニ塩湖でリチウムの開発に協力していますが、産業育成のためのインフラづくりを手伝ってほしいとの要望があったため、どんな施設が必要になるか、グランドデザインの提案をしました。このような、直接は資源開発に関わらない仕事であっても、相手国との深い信頼関係を築いていくためには重要なのです。
福島 資源国も日本とより深い関係を望んでいるのですね。
河野 最も期待されているのは技術力ですね。資源の採掘や生産といった分野だけでなく、幅広く日本の技術を活かしたいと考える国はたくさんあります。例えばモザンビークの鉱山開発では産出する石炭を港まで運ぶ手段として、鉄道の新設が計画されています。日本は鉄道先進国なのですから、こうした部分で協力できればより深い関係が築けますし、日本企業にとってもビジネスチャンスが広がります。ほかにも日本は、IT、情報処理、超電導、センサー、工作機械、ロボットなど多くの分野で優れた技術を有し、資源国はこれらを高く評価している一方で、日本の技術関係者の多くは、資源開発といった異分野についてご存じでないため、いまだこの分野で日本の優れた技術が十分には活かされていません。
 そこで、JOGMECは来年度から、従来の関係者はもちろん、国内のあらゆる異業種企業や組織の参加を期待して、日本の先端技術を資源分野であるいは資源国で活かすべく、マッチング事業を始めます。つまり、日本の技術情報を把握し、資源開発に精通する立場を活かし相互の橋渡しをしようと考えています。
 世界の国営石油会社などの年間の調達額は、試算するとなんと60兆円もあります。膨大な市場です。そこに、日本企業がチャレンジしうまくいけば、日本企業および相手国双
方にとって有益です。
 今年5月には最初の本格的な国際フォーラムを開催する予定です。ぜひ成功させて、日本の産業や世界の資源開発に貢献していきたいと思っています。

楽しみな開発プロジェクトが次々と進行中

福島 現在、JOGMECが手掛けているプロジェクトで、特に楽しみにしているものはありますか?
河野 たくさんありますよ。今年(2013年)成果が期待できるものでは、JOGMECが支援しているカザフスタンのカシャガン油田とイラクのガラフ油田における開発プロジェクトからの生産開始が楽しみです。「ファーストオイルが出た!」というニュースが届くのをどきどきしながら待っています(笑)。
福島 子どもの誕生を待っているお父さんみたいですね(笑)。
河野 まさにそんな気持ちですよ。資源開発は時間がかかるので、待つのも大変ですが。
福島 ほかにも長く待っているプロジェクトがありますか?
河野 グリーンランドの石油開発ですね。昔から資源量はかなりあると言われているものの、リスクが大きすぎて民間企業が参加する機会がなかったのです。そこで私たちは20年あまりにわたって、こつこつと基礎調査を続けてきました。近々、その結果が出るので、いよいよ本格的な探鉱活動の判断をすることになります。
福島 私たちが利用している資源は、長い開発期間を経て、日本に届けられるのですね。
河野 そうですよ。先ほど紹介したチリのカセロネス鉱山は、JOGMECが探鉱融資と開発にあたっての債務保証を行った案件ですが、今年、ようやく日本向けの銅鉱石の初出荷が行われる予定で、これも楽しみの一つですね。
福島 最近になって始まった「将来が楽しみ」なプロジェクトにはどんなものがありますか?
河野 日本の国産資源として期待されるメタンハイドレートの開発プロジェクトでは、今年の春に世界初の洋上での連続産出試験が行われますし、新潟県の佐渡南西沖では油・ガスの発見が期待できることから、4月から試掘を開始します。また最近注目が集まる海底の金属資源についても、精力的に探査を続けています。昨年8月には、専用の掘削試験機による海底熱水鉱床の採掘試験を実施しましたし、今年も採掘システムの開発を進めていくつもりです。
福島 エネルギー資源の安定供給のために、世界各地で多様なプロジェクトが同時進行で動いているのですね。
河野 今後、日本の資源・エネルギー需要は余り増えないのではないかと指摘する人がいますが、たとえ国内需要が大きくは伸びないとしても、資源開発は継続していく必要があるのです。なぜなら、新興国の成長によって安定確保はますます難しくなっていますし、現在の経済規模を維持するだけでも相当量のエネルギーや金属資源が欠かせないからです。日本の成長の足かせとならないように、長期的視点に立って資源開発を続けていくことこそが、JOGMECの最大の役割だと信じています。

福島敦子×河野博文
JOGMEC NEWS Vol.32
内容は2013年3月時点のものになります。
当記事が掲載された広報誌「JOGMEC NEWS Vol.32(2013年3月発行)」も併せてご利用ください。