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広報誌特集:鉱害防止に挑む 日本の鉱害問題

日本に存在する5,000か所の休廃止鉱山

 

 石油や天然ガスなどのエネルギー資源と同様、金属資源の多くを海外からの輸入に頼る日本ですが、かつては銅や銀などの生産が盛んに行われ、世界有数の鉱山国といわれた時代がありました。 日本の金属鉱業は明治以降、産業近代化の先鋒として発展。 国を挙げての鉱山開発が進められ、採掘された金属資源が多くの富を生み出すとともに、雇用や社会資本など様々な利益を社会にもたらしました。 その生産量は、高度経済成長期にピークを迎えましたが、その後は良質な資源の枯渇と急速な円高進行などの影響を受け、各地の鉱山が次々と閉山に追い込まれていきます。 こうして活動を終えた鉱山の一部が、今もなお、周辺地域をはじめ我が国にとっての「負の遺産」として、存在しているのです。
 というのも、鉱山の開発・操業は、企業や地域に大きな利益をもたらす一方、「鉱害」という環境問題発生の可能性をはらんでいます。 また、金属鉱山より発生する「鉱害」は、他の一般産業の「公害」とは異なり、操業を停止した後も水質汚染や有害廃棄物の残置などにより周囲の環境に悪影響を及ぼし続ける可能性を有しているのです。 日本の鉱害問題では、明治時代初期に発生した足尾鉱毒事件や、水俣病などとともに四大公害病の一つに数えられるイタイイタイ病の要因となった神岡鉱山の鉱害が知られています。
 2013年10月、日本が提案した「水銀に関する水俣条約※1」が国際条約として採択されるなど、現在我が国は、世界の環境汚染対策をリードする立場といえます。一方、国内に目を向けると、日本各地、5,000か所にも及ぶ休廃止鉱山(いわゆる鉱山跡)のうち、かつて何らかの鉱害防止対策が必要とされた鉱山が約450か所ありました。 これらの多くで対策が進んだものの、現在でもなお97か所について鉱害防止事業を実施中、あるいはその必要がある※2のが現状です。
 このように、日本における鉱害は、すでに克服された過去の出来事ではなく、今もなお対応や解決策が求められる現在進行形の課題なのです。

※1:水銀に関する水俣条約:地球規模の水銀及び水銀化合物による汚染や、それにより引き起こされる健康・環境被害を防ぐために制定された国際条約
※2:国が法律(金属鉱業等鉱害対策特別措置法)に基づき定めている基本方針によって対象鉱山が示されている。 現在の第5次基本方針では97鉱山が対象となっている

第5次基本方針期間(2013~2022年度)における対象鉱山の位置図

※義務者不存在鉱山:日本の休廃止鉱山には、かつて鉱山を経営していた企業が現存する「義務者存在鉱山(休止・廃止)」と、経営していた 企業が消滅した「義務者不存在鉱山(廃止)」がある。 大企業が経営していた大規模鉱山の多くは閉山後も企業が管理しているが、中小規 模の鉱山の多くは経営企業が倒産・消滅し、義務者不存在となり、その鉱害防止対策は地方公共団体に任されている。

  • 第5次基本方針期間(2013~2022年度)における対象鉱山の位置図
  • 銅・亜鉛鉱石国内生産量の推移

日本の主な鉱害問題

足尾鉱毒事件

 明治初期に発生した「日本の公害の原点」といわれる鉱害事件。 足尾銅山では当時最先端の製錬技術が外国から導入され、鉱山開発が急速に拡大する一方、採鉱、選鉱、製錬する過程で発生する重金属を含んだ廃水及び野積みされた廃棄物(各工程で発生する不要物)の山が廃水として度々流出し、下流の漁業や農業に被害を及ぼした。 また、銅の製錬で使用する燃料(木炭)や坑道の支柱として使う木材を確保するため、足尾銅山周辺の山林が乱伐されると共に、当時頻発した山火事により山は緑を失い、さらに製錬所から排出される亜硫酸ガスの拡散により、樹木が枯れたことも洪水の増加に拍車をかけることとなった。

イタイイタイ病

 大正から昭和20年代にかけて、富山県神通川流域で全身の痛みを主訴とする原因不明の奇病が多発。 後に神岡鉱山の亜鉛鉱石の主要鉱物である閃(せん)亜鉛鉱に含まれるカドミウム廃水が原因であることが解明され、1968年に公害病に認定された。





JOGMEC NEWS Vol.35
内容は2013年12月時点のものになります。
当記事が掲載された広報誌「JOGMEC NEWS Vol.35(2013年12月発行)」も併せてご利用ください。