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石油開発最新事情:最近の随伴水処理技術に関する動向

CCS・環境技術課 川村 和幸 

はじめに

 随伴水(Produced Water)とは、一般的には在来型資源である油・ガスの生産にともない副次的に生産される地層水のことをいいます。近年、非在来型資源であるシェールガスの開発が活発になり、シェール(頁岩)を大量の水(フラクチャリング流体又はフラック水)で水圧破砕した後、ガスの生産とともに地上に戻ってくる水(フローバック水)も随伴水として分類されることがあります。
 JOGMECが2011年に行った「随伴水処理動向調査」では、フローバック水も含めて全世界で一日あたり約3億バレル(48百万kL:東京ドーム約400杯分に相当)の随伴水が生産されており、これは年々増加していることがわかりました※1。
 随伴水には、油ガス成分以外にも、塩分(TDS:Total Dissolved Solids)、多種にわたる有機物及び無機物、重金属類(これら有機物、重金属類の中には有害とされる物質も含まれています)、さらには、自然起源の放射性物質(NORM: Naturally Occurring Radioactive Material)が含まれている場合があります。これらは生産される地域、地層(堆積環境)、炭化水素の種類等によって含まれている組成や量が異なっています※2。このため、随伴水の処理にあたっては一様の処理技術は無く、多種の水処理技術を組合せ随伴水の性状に応じてオーダーメードで対応しているのが現状です。
 ここでは、既存の随伴水処理技術からシェールガス開発におけるフローバック水を対象とした最近の随伴水処理技術の一部についてご紹介します。

現状の随伴水処理

 全世界で生産される随伴水の約68%は陸上油田にて、残りの約28%が海洋油田で生産されています※1。このうち、陸上油田で生産された随伴水は、約90%が地下圧入されています(廃棄専用の井戸への圧入処分、もしくは、原油の増進回収法(EOR)の一種である水攻法利用等)。海洋油田の場合は、逆に10%程度の圧入処分にとどまっています。海洋油田の場合は、大型の水処理装置をスペースの限られた洋上プラットフォームに導入することも、廃棄専用の圧入井戸の掘削にかかるコストも高価であることが主たる理由です。このため、海洋油田では随伴水は原油とともにパイプラインで陸上に送り、そこで油水分離後、圧入処分または処理を行っていますが、パイプライン内の流量には制限があるため、原油に対し随伴水の比率が増加するのにしたがい、原油の生産量が相対的に減少し処理コストのかかる随伴水が多くなる事例もあります※3。

既存の随伴水処理技術

図-1 既存随伴水処理プロセス

図-1 既存随伴水処理プロセス

 既存の随伴水処理は、随伴水に含まれる油分や固形分(SS:Suspended Solids)を除去するため3段階に分けて処理を行っています(図-1)※1。
 図-1に各処理段階及び使用されている処理装置の例を示します。このような処理を経て三次処理後の水質によっては、直接地下圧入、もしくは海洋等の放流基準に適合する場合は海洋投棄が行われています。三次処理後の処理水の水質によっては、再利用や放流基準に達していない場合があり、膜分離(RO等)、脱塩処理等が付加されることもあります。
 このように、既存技術では油水分離だけでも3段階にわたって処理が必要であることから海洋のプラットフォーム等へのこれらの適用は非常に厳しいものがあります。そこで、JOGMECでは、メキシコ国営石油会社の要請を受けて、メキシコの洋上油田における随伴水処理の課題解決のため(株)日立製作所と共同で凝集磁気分離法(FMS:Flocculation and Magnetic-Separation)による小型で高性能な随伴水処理システムを開発しました。実際に、メキシコの洋上プラットフォームにFMS実証機(処理能力10,000bpd)を設置し、セパレータにて分離された随伴水の処理を実施し、油分を15ppm以下まで除去できる結果を得ました。

最近の随伴水処理技術

 既存の随伴水処理は地下圧入のための油水分離を目的とした物理的処理が主体でした。しかし、年々増加する随伴水に加えて、近年の環境規制強化、シェールガス開発に伴うフローバック水の増加により地下圧入自体も困難になりつつあります(米国)。特に、シェールガス開発では大量の水を使用するため、河川や湖沼等からの取水制限が行われており、随伴水やフローバック水をその場で処理して再利用もしくは有効利用することが求められています。
図-2はシェールガス開発におけるガスとフラック水の動きを示したものです。
 シェールガス開発では、井戸1本あたり約8,000kL~25,0000kLの水(フラック水)が必要とされ、フラック水のうち15~25%がフローバック水として概ね30日以内に地上に戻ってきます※4。また、表-1は米国のMarcellus Shaleにおけるフローバック水の井戸毎の水質(well-7はBarnett Shaleのデータ)を示したものですが、井戸毎に水質が異なり、塩分濃度(TDS)は約100,000mg/L~200,000mgLと幅広く、地下圧入にあたり地層閉塞の要因となるスケール物質を形成するカルシウム、ストロンチウム、マグネシウム等を多量に含有し、226Raで示すNORMまで含まれていることがわかります※4。

図-2 水圧破砕におけるガスとフラクチャリング流体の動き

図-2 水圧破砕におけるガスとフラクチャリング流体の動き

 このように多種多様にわたる性状のフローバック水の処理及び再利用のため、米国のRPSEA(Research Partnership to Secure Energy for America)をスポンサーとし、GTI(Gas Technology Institute)が水資源保護、フローバック水の再利用、脱塩を目的に実施したBarnett ShaleとMarcellus Shaleを対象とした水管理と再利用に関する報告では、蒸発法や膜処理法等による高効率、省エネルギー処理に向けた取り組みが行われています※5。以下は、その取り組みの一部です。

表-1 ペンシルバニア州Marcellus Shaleガス井における随伴水性状

表-1 ペンシルバニア州Marcellus Shaleガス井における随伴水性状

蒸発法※5

図-3 MVRプロセスフロー

図-3 MVRプロセスフロー

 シェールガス開発では、水の再利用を最大限に行い廃棄する水の量を極力減らすための長期にわたる水の管理が求められています※5。この目的に適合する処理技術が蒸気再圧縮型の蒸発装置です(MVR:Mechanical Vapor Recompression)。報告書では、フローバック水を専用の処理施設(Maggie Spain Facility)に搬入し、前処理にて油分、SS、鉄イオン、カルシウムイオンなどを除去した後MVRにて蒸留水と濃縮水に分離しています(図‐3)。この方法によって、MVRの目詰まり等による稼働停止を最小限に抑えて70%以上の蒸留水を回収しているようです。さらに、膜(RO膜等)では処理が不可能な、TDS:70,000mg/L以上の塩水も処理可能である結果が得られています。また、この処理施設で使用する電力は天然ガスを利用した発電を利用するなどの工夫がされています。

膜分離※5

 シェールガス開発のみならず、在来型の油ガス田で生じる随伴水には油分、有機物、塩分、人為的に加えた化学薬品(エマルジョンブレーカーやフラクチャリング流体用のケミカル等)が含まれている場合があり、これらの物質は膜を用いた随伴水処理において深刻な膜の目詰まりを誘発します。そこで、膜の表面に目詰まり防止のため皮膜処理を行う方法が試みられています。報告書では、UF膜(Ultrafiltration membrane)及びRO膜(Reverse Osmosis membrane)の表面にポリドーパミン(PDOPA: Polydopamine)処理を行い、Barnett Shaleガスフィールドにてパイロットテストを行っています。UF膜の場合は、非処理膜との比較において60時間の試験の結果、フラックス(流量)が50%改善される結果が得られています。RO膜は、UF膜通過後の水を対象に実験を行ったところ、非処理膜との比較ではフラックスに差は見られませんでしたが、塩分やカルシウム、マグネシウム等のイオン類は非処理膜に比べて安定した除去率が得られています。

電気透析(ED:Electrodialysis )※5

図-4 電気透析(膜処理)による脱塩処理プロセス

図-4 電気透析(膜処理)による脱塩処理プロセス

 随伴水の塩分(TDS)濃度は海水レベルから高い場合は、飽和塩分濃度に近い場合もあります。特に、シェールガス開発におけるフローバック水の塩分濃度は高いことで知られています。水の再利用及び有効活用(灌漑等)においては脱塩が必要となります。そのひとつに海水淡水化等で実用化されているRO膜がありますが、海水レベルの塩分濃度の処理が経済的に限界とされています。そこで、電気透析(ED)法による脱塩の試みがされています。ED法によっても経済的な塩分処理は、TDSで60,000mg/L程度が限界のようです。報告書では、図-4に示すように随伴水の塩分濃度によって処理装置を使い分けて、脱塩水と濃縮水に分離する研究がされています。  図-4に示すように随伴水は、先ず、電気伝導度によって、2系統に分類されます。電気伝導度の中程度のものはED法又はRO膜による処理が行われます。電気伝導度の高いものは蒸発法による処理が行われます。濃縮された高塩分水は米国の法律によりClassⅡの井戸に圧入処分され、脱塩水はフラック水に再利用されるフローとなっています。

まとめ

 最近の随伴水処理技術に関する動向として述べて参りましたが、世界的に増加する随伴水対策として地下圧入だけでは対応が困難な状況になりつつあり(特に米国)、水の再利用は必須の状況となりつつあります。これまでの随伴水処理は物理的手法による油水分離が主体でしたが、水の再利用、脱塩等を考えると高度で且つ安価な処理が求められることになります。ここで紹介した技術はほんの一部に過ぎす、この他にも脱塩の方法として膜蒸留法(Membrane Distillation), FO(Forward Osmosis)等の技術も開発途上にあります。日本の水処理技術は世界的に優れており、この技術を集約すれば多種多様にわたる随伴水処理に対応できるものと考えます。

参考文献

※1 “Trend Survey on Produced Water Treatment in Oil and Gas Fields” OTM Consulting Ltd, 18 March 2011 for(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構
※2 J. A. Veil, M.G. Puder, D. Elcock, R.J. Redweik, Jr., 2004, “A White Paper Describing Produced Water from Production of Crude Oil, Natural Gas, and Coal Bed Methane” prepared by Argonne National Laboratory for the U.S. Department of Energy, National Energy Technology Laboratory.
※3 平成22年度技術センター年報「石油生産現場における随伴水動向調査」、(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構、2011年8月31日
※4 J.M.Silva, 2012, “Produced Water Pretreatment for Water Recovery and Salt Production”, General Electric Global Research Center for Research Partnership to Secure Energy for America.
※5 T. Hayes, B. F, Severin, 2012, “Barnett and Appalachian Shale Water Management and Reuse Technologies” Gas Technology Institute for Research Partnership to Secure Energy for America.