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広報誌特集:北極圏資源開発

北極圏資源開発

資源開発フロンティアとして、北極圏に世界から熱い視線が向けられています。
北極海を覆う海氷面積が減少していることから新たな航路が開かれ、また、資源開発の動きも活発化。
JOGMECもエネルギー資源の安定確保や安全保障の強化、さらには北極圏における新たな地域秩序の構築を担うといった観点から、積極的に資源開発に参加しています。(取材協力:調査部 本村真澄)

北極圏とは?
減少が続く北極海の海氷面積

 北極海の海氷面積は常に変化しており、それは衛星画像などを通して追跡されています。 近年は減少傾向が続き、2012年9月には史上最小面積を記録しました。 特にベーリング海周辺の減少が顕著で、水温の高い海水がこの海域に流れ込んでいるためと見られています。 2013年にいったん氷の面積が増えるなど、一方的に著しい減少が続いているとはいえませんが、海氷面積の減少がしばしば観察されていることは事実です。

減少が続く北極海の海氷面積
新たに開かれた北極海航路
オビ河号の航路

 この海氷面積の減少を受けて、新たな北極海航路が活用されています。 2012年12月5日には、ロシアのLNG船「オビ河号」がノルウェーのスノービットガス田からのLNG約6万tを積んで 航行。 千島列島沿いに南下し津軽海峡から日本海に入って、北九州戸畑港のLNG基地に接岸しました。 航海に要したのは29日間です。 仮にスエズ運河を利用すれば、この倍近い日数がかかると考えられ、しかも冬季にこの日数での航海が可能になったことは、大きな驚きをもって受け止められました。

有望な地下資源が眠る北極圏

 海氷面積の縮小は航路開拓だけでなく、資源探査も容易にします。 もともと北極圏にはかなりの量の地下資源が眠っていると考えられ、米国地質調査所が2008年7月に公表した資料「環北極圏資源評価(CARA)※」によれば、北極圏の未発見資源量は、石油が900億bblで世界の未発見石油の13%、天然ガスが1,670兆cfで、未発見天然ガスの30%を占めています。 特に石油は、アラスカ・ノースロープからチャクチ海にかけて、天然ガスはこれに加えてバレンツ海や隣り合うカラ海域が有望視されています。 バレンツ海はティマン・ペチョラ盆地、カラ海は西シベリア盆地という、すでに確立した産油ガス地帯の北方の延長域に位置しており、その点からも石油・天然ガスが存在する可能性は高いとみられます。 しかもバレンツ海はメキシコ湾流が流入することから、冬も結氷しません。 カラ海も、冬季は一時結氷するものの、氷は薄く厳冬期を除けば、ほぼ1年を通して作業が可能です。 その点でもこの両海域は資源探査・開発の有望地域と考えられています。

※北緯66.56度以北を対象としたもので、ヤマル半島などの陸地も含む。

資源開発プロジェクトが活発化

 北極圏における資源探査や開発は、法的な権利や作業の容易さから、大陸棚を広く有する国が有利になります。 その点では、ロシアが大陸棚の約60%にあたる270万㎢を保有しており、資源量はもちろん海象条件に恵まれたバレンツ海を臨む点なども合わせて、資源開発では最も有利な位置にあり、同じ理由からノルウェーも有利です。 一方、アラスカは大陸棚が狭く資源の埋蔵量にも恵まれていません。 現在の北極圏で行われている主な資源開発プロジェクトには、次のようなものがあります。 【実施場所は、右上の「北極圏プロジェクト位置図」参照】

1.シュトックマンガス田
バレンツ海のシュトックマンガス田は、北極圏の資源開発で最も早く着手されたものです。 埋蔵量は133兆c(f 世界8位)で、ロシアのガスプロム社が開発計画の策定にあたり、フランスのトタール社とノルウェーのスタットオイル社も参加しました。 しかし、LNG基地が置かれるムルマンスク近くの集落まで約565kmと非常に遠いために輸送が難しく、事業は2019年まで停止の予定となっています。

2.プリラズロムノエ油田
バレンツ海南部のペチョラ海の南東部では、1989年にプリラズロムノエ油田(埋蔵量6.1億bbl)が発見されました。 2011年には耐氷能力の高い着床式のプラットフォームが設置され、2013年12月、生産開始となりました。 ガスプロム社の子会社が事業にあたっています。

3.カラ海 探鉱鉱区
カラ海の東プリノボゼメルスキー鉱区(1~3)において、2011年8月にロシア最大の国営石油会社ロスネフチ社とエクソンモービル社が提携して探鉱に当たることで合意し、2014年に試掘を行う予定となっています。 ロスネフチ社がライセンスを取得し、そこからエクソンモービル社が33.3%の権益の譲渡を受けました。

4.バレンツ海西部 探鉱鉱区
バレンツ海西部のロシアとノルウェー両国の境界上の鉱区では、両国間で40年近く境界設定を巡る係争が続いていましたが、2010年4月に、お互いの主張の中間線とすることで合意が成立し
ました。 ロシア海域ではロスネフチ社がライセンスを取得。 その後、海域南側の中央バレンツ鉱区ではイタリアの国営石油会社エニ社と、一方北側のペルセエフ鉱区ではノルウェーのスタットオイル社とそれぞれ共同探鉱を進めることで合意しています。 また、バレンツ海のノルウェー側では、1984年にスノービットガス田(埋蔵量6.8兆cf)が発見され、2006年には年間420万tのLNGが生産されました。 その後、2012年には、この海域で新たに鉱区公開が行われ、また、中間線でロシアと分割した海域では、2013年に鉱区入札が行われました。 今後、開発体制が整えられていくことになります。

グリーンランドで2か所の探鉱鉱区を落札
新たな地域秩序の構築を目指して

 資源開発の新たなフロンティアとして注目されている北極圏ですが、一般の報道などでは「加熱する資源争奪戦」といった論調も見られます。 しかし、実際にはほかの地域同様、国際法規や商業上のルールに則って厳正に開発が進められています。 むしろ複数の国が資源開発に関わり、鉱区の開発について様々な合意を重ねることは、この地域に新たなルールや制度をもたらすことにつながります。 さらに開発が進めば、雇用が生まれ、インフラストラクチャーも整備されるなど、新しい地域秩序がつくられていきます。 日本にとって北極圏の開発は、エネルギー資源の安定確保につながるだけではなく、国際秩序に関与していくチャンスともいえるのです。

JOGMEC NEWS Vol.36
内容は2014年3月時点のものになります。
当記事が掲載された広報誌 「JOGMEC NEWS Vol.36(2014年3月発行)」も併せてご利用ください。