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石油開発最新事情:出砂現象 そのメカニズムと対策


石油天然ガス金属鉱物資源機構 技術部 開発技術課

 石油の生産が始まってから終了するまでの坑井の一生の間に、安定的な生産を妨げるさまざまな障害が発生しうるのですが、「出砂現象」はそのような障害の一つです。2013年に行われたメタンハイドレート第1回海洋産出試験は出砂の発生によって予定よりも早く作業を終わらせざるを得なくなりましたが、メタンハイドレートに限らず出砂は油田の寿命と経済性を決める重要な要因になっています。では、出砂とはどんな現象で、どんな対策が考えられるのか紹介します。

出砂とはどんな現象か、発生するとなぜ困るのか

 出砂とは、地層を構成する岩石の断片である固体分(砂)が、原油や天然ガスに運ばれて、一緒に油ガスを生産している坑井の中に流れ込む現象です。
 坑内に入り込んだ砂は油ガスとともに地表に運ばれますが、もしも流速が十分でなくて砂が運びきれないと、坑内が砂で埋まって生産を継続できなります。いったん砂で埋まった坑井を再開するためには、再び掘削リグを運んで来て坑内をクリーニングする作業を行わなければならないので、莫大な費用がかかります。
 一方で、砂を十分運べたとしても、その砂は坑内や生産設備の配管の内側を摩耗したり重要なバルブを詰まらせたりして漏洩事故などにつながる恐れがあります。また、地表に運ばれた油分を含んだ砂の処理にもコストがかかります。特に海洋生産プラットフォームでは、運搬や処理に大きな費用がかさむことになります。
 このように出砂の発生は坑井の寿命を短くし、経済性を悪化させます。一方で、後に述べる出砂対策のコストもばかになりません。

どうして出砂が起きるのか

 石油貯留層から原油を生産する過程で、貯留層内の流体の圧力は徐々に下がって行きます。それにしたがって、地層を構成する岩石の粒子間に働く力(有効応力)が徐々に増加して行きます。一方で、地層の応力を支えていた坑内の圧力は下がっているので、坑井の周辺で岩石の破壊が始まり、破壊によって生じた岩石の断片である砂が、流体の粘性による力で(Morita and Boyd, 1991)坑内に流入し始めます。パーフォレーション仕上げ(坑井に鋼管ケーシングを下ろして外側をセメントで固めた上、火薬によってケーシングと地層に孔(パーフォレーショントンネル)を穿つ坑井仕上げ方法)の場合は、そのトンネル周辺の地層が崩壊するという形で砂が生み出されます(図1)。
 一方、オイルサンドやメタンハイドレートのような、未固結の堆積物の間に存在している炭化水素資源の場合、それらの成分を取り除いてしまうと、堆積物は浜辺の砂のように自由に動き得る状態になるので、岩石の貯留層より出砂が起きやすいと言えます。この場合は、坑井周辺で地層の不安定化、流動化などより複雑な状況が生じると考えられます(図2)。坑井の周辺では流速が速くなり、砂に加わる流体からの力が大きくなって砂の粒子が動き始めますが、その背後では砂の粒子が動きやすくなるのと同時に、流体も流れやすくなって、その部分に流れが集中して、ワームホール状の構造が作られて、継続的に砂と流体が生産され続けると考えられます。
 また、経験的に知られている事実として、坑井の閉塞(シャットダウン)や生産再開などで坑内の状態が急に変わると、それをきっかけに出砂が起きる事があります。これは、坑井の周辺の砂に力学的にほぼ安定な状態が確立されていたのに、水力学的なショックがその安定を壊して、出砂の原因となるのだと考えられています。
 また、坑井の水付き(油の中に水が混じってくること)が起きるのと一緒に砂が出始めることがあります。これは水濡れ性の砂の場合は油が多いと界面張力によってみかけの強度が発現しているのに対して、水が増えるとそのみかけ強度が失われて砂が動きやすくなることや、粘土鉱物の水和・膨潤により地層強度が低下することが原因と考えられます(Wu and Tan, 2005)。
 また、火薬の爆発で生じたパーフォレーショントンネル周りのデブリの影響や、水と一緒に移動して来た細粒の固体の沈積などの影響で局所的に浸透率が低下している部分があると、その部分で圧力勾配が大きくなり、大きな力が砂の粒子に働くこと、また原油にガス分が混じると、ガスの早い流速と、気泡が砂粒子を押す力が生じることなどから、出砂がおきる場合があるようです。
 このように出砂はそれぞれの油田の条件により、さまざまな理由で発生し得ます。多くの場合は井戸の寿命の後半で起きることが多いのですが、未固結堆積物の中では生産開始後比較的早い時期から出砂が問題になり得ます。

 図1 一般的な出砂障害発生の模式図:坑内と地層内の流体圧力が低下するため、地層の有効応力が増加してパーフォレーショントンネル周辺の岩石の破壊が生じる。さらに、坑内の急激な圧力変動や水付きの影響など、様々な要因が加わって出砂が起き、坑井の埋没や、配管の摩耗などの障害を発生させる。

図1 一般的な出砂障害発生の模式図:坑内と地層内の流体圧力が低下するため、
地層の有効応力が増加してパーフォレーショントンネル周辺の岩石の破壊が生じる。
さらに、坑内の急激な圧力変動や水付きの影響など、様々な要因が加わって出砂が起き、
坑井の埋没や、配管の摩耗などの障害を発生させる。

図2 未固体堆積物における出砂障害発生の模式図:砂が地層内に流れ込む流体によって流動化し、ワームホール状の流路が形成され(地盤工学で言う内部浸食ないしはパイピング)、周囲の砂を崩しながら坑内に流入すると考えられる。

図2 未固体堆積物における出砂障害発生の模式図:砂が地層内に流れ込む流体によって流動化し、ワームホール状の流路が形成され
(地盤工学で言う内部浸食ないしはパイピング)、周囲の砂を崩しながら坑内に流入すると考えられる。