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石油開発最新事情:日本国内のシェール資源について

技術部探査技術課

はじめに

 近年北米を中心に脚光を浴びているシェールガス・オイルについて、日本にその可能性はないのだろうか?と疑問をお持ちの方は多いと思います。米国エネルギー省エネルギー情報局(EIA)が2013年に発表した世界のシェール資源評価(図-1)では、日本は評価の対象にさえなっておらず落胆された方がいるかも知れません。
 しかしながら、日本国内でも年間76万klの原油と31億m3(2012年:それぞれ日本の消費量の1.3日分、9.3日分に過ぎませんが)の天然ガスが生産されているので、地下にはそれなりに油ガスを生み出す地層(根源岩)が存在していることを示します。この油ガスを生み出す地層の主役の一つがシェールです。
 日本国内では、新潟、秋田、北海道、千葉などに油田やガス田が存在しますが、このうち北海道の勇払の油ガスは主に石炭層から生み出されたと推定されており、千葉の水溶性ガス田も起源が違います。従って、日本でシェール資源を探すとすれば、新潟と秋田が有望となるわけです。

図-1 EIAレポートでシェール資源評価の対象となった世界の堆積盆地(EIA/ARI 2013)

図-1 EIAレポートでシェール資源評価の対象となった世界の堆積盆地(EIA/ARI 2013)

シェール資源の特色

 従来型の油ガス層と比較して、シェールを構成する粒子の隙間(孔隙径)は非常に狭いものです。このため流体の通しやすさを表す単位で言うと、従来型の貯留層が1ミリダルシー以上が一般的であるのに対して、シェールは3ケタも4ケタも小さな値を示します。
 しかし、「流体の通しやすさ」は単位断面積当たりの数字なので、例えば井戸と対象層の接触面積を1万倍にすることができれば、4ケタ小さなシェールからも油ガスを生産できることになります。対象とするシェールを水平方向に数千mも掘っていき、更に井戸から水を押し込んで無数の亀裂を作ることで接触面積を拡大して生産する技術が2000年前後に米国で確立されました。
 水平掘削と水圧破砕が開発のキーになることから、以下のような特徴を持つシェールが望ましいと言えます。
(1) 十分な厚みを持つ
(2) 水平方向に連続性が良い
(3) グニャッと変形するよりバリッと割れる
 また、油ガスを十分蓄えたシェールでないと意味がありませんので、
(4) 有機物に富んでいる
(5) 有機物が油ガスに変化する地温に達していた
(6) 油ガスが既に抜けてしまっていない
 (1)と(2)は、水平井がシェールから外れてしまわないために重要で、断層でズタズタ切られたり、褶曲で急な傾斜になっていないこと、(3)は、水を押し込んだ時に亀裂ができるための条件になります。
 地層中の有機物量は、有機炭素の含有量(重量%)で表しますが、北米で既に開発されているシェールでは、軒並み5%、10%といった例が認められます。
 これらの条件を満たす、或いはそれに準ずるシェールが日本にあるのでしょうか?

秋田堆積盆と女川層の特徴

 秋田県には古くから油田の存在が知られており、それらの油は主に中新世(およそ1千万年前)に堆積した女川層から生成したと推定されています。その堆積は、近くに陸がほとんどなくなった頃、冷たい海に繁殖する珪藻の遺骸が数百万年も積もり続けたものと言われています。その上に新しい地層が重なり埋没した結果、現在も地下で500~600mの厚さが認められています。
 油田が成立しているだけに、日本国内としては優秀な2~3%の有機炭素量を示す分析結果が得られています。また、珪藻の殻はシリカ(SiO2:珪酸塩)を成分とするため、女川層は全体に珪質で、ガラスのように割れやすい性質を持ちます。
 ここまでで、資源開発に好ましいシェールの特徴のうち、(1)~(4)が満たされる可能性を示します。
 また、堆積岩が分布する地域の地温勾配(100mにつき何度地温が上がるか)は、2~3℃であることが一般的であるのに対して、秋田堆積盆では3~4℃を示すことも珍しくありません。このことは、他所よりも浅い深度で油やガスを生成する温度に到達することを示します。さらに有利なことには、女川層に含まれる珪藻由来の有機物は、他の起源の有機物より低い温度で油を生成し始めます。
 地層は深く埋積されるに連れ、地温が上昇する一方で上に載る地層の荷重によって隙間の減少が進みますので、油ガスは十分にできて欲しいが隙間も残っていて欲しい、という相反する条件が、秋田堆積盆では高いレベルで叶えられることを意味します。

秋田堆積盆南部における資源量評価の試み

 秋田県南部の由利本荘市には由利原油ガス田や鮎川油ガス田が成立しており、国内では大きな原油生産を続けています。特に、鮎川油ガス田は地上からの深さ1,500m付近の女川層が生産層になっており、1990年前後に発見された当初から珪質岩(シェールの一種)から産油している可能性が検討されてきました。
 鮎川油ガス田を操業する石油資源開発は、JOGMECの支援を得て平成24年度に女川層の亀裂を伴う珪質岩区間に酸処理を実施し、生産性の大幅な改善(日量40kl)に成功しました。このことを以て、「日本で初めてシェールオイルの生産に成功した」とは言い切れないところもありますが、今後に期待を繋ぐイベントになったと思われます。
 そんなこともあってJOGMECでは、平成25年度から秋田県南部に、どのくらいのシェール資源が期待できるのか、ベースンモデリングと呼ばれる数値シミュレーションを用いて推定を試みています。
 その手順は、ごく簡単に書くと以下のようです(図-2)。

  1. 川層が露出する場所における観察を元に女川層の特徴を整理する
  2. 坑井データから得られるファシス分類、物性値の取得などを整理する
  3. 1.と2.の情報を外挿して3次元地質モデルを作る
  4. 3.の地質モデルをシミュレータにかけて油ガスの生成量、残留量を試算する

図-2 ベースンモデリングによる資源量評価のワークフロー

図-2 ベースンモデリングによる資源量評価のワークフロー

 ベースンモデリングは、従来型の油ガス田が成立する条件を満たす場所を推定するために開発されてきたツールなので、油を生成する温度に達したシェールから出てくる油がどこに移動していくか?に視点が置かれています。
 ところが、シェールの資源量を推定する場合は、シェールにどれだけの油ガスが残っているか?が大事になります。
 試算結果について具体的な数字は未だ公表できませんが、非常に興味深い途中経過が得られています。地下のシェールに多量の油ガスが埋蔵されているということは推定されそうですが、日本の厳しい環境基準をクリアし、なおかつ経済的に見合わなければ資源とは呼べませんので、未だいくつもの課題を乗り越えて行かねばなりません。

終わりに

 このシェール資源の評価をやってみると、非常に面白いことに気付かされます。その理由は、従来型の油ガス田を探そうとするときは、地質構造が浅い方に盛り上がっている場所=背斜軸付近を中心にものを考えるのに対して、シェールの場合は堆積盆の深い部分に視点が移り、シミュレーションにおいてもシェールに残る油について考えるのです。
 今回のスタディには、石油資源開発株式会社から多数の坑井データをご提供いただいたが、坑井位置が背斜軸部に偏在するため、堆積盆スケールの3次元地質モデルを作成するには、ずいぶんと思い切りが必要でした。長年探鉱が行われてきた国内の堆積盆地にして、我々が知り得たのは未だほんの一部に過ぎないのだと痛感させられます。
 わかっていない=可能性がある、とポジティブ思考で、国内のエネルギー資源を再考して行きたいと思います。

引用・参考文献
B.P.Tissot and D.H.Welte (1984): "Petroleum Formation and Occurrence", Second Revised and Enlarged Edition, Springer-Verlag, p. 699.

EIA/ARI (2013): “World Shale Gas and Shale Oil Resource Assessment”

石油資源開発株式会社2014年4月7日プレスリリース:「秋田・女川層タイトオイルに係る取り組みについて」

熊田ほか(2014MS): 「女川タイトオイルの資源量評価-その(3)地質および油ガス生成モデリングによる調査」TRCウィーク発表資料

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