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石油開発最新事情:無機膜(ゼオライト膜)を用いた二酸化炭素(CO2)分離回収技術に関する技術開発(1)

技術ソリューション事業グループ

はじめに

 ガス田より生産される天然ガスや原油生産に伴う随伴ガス中には、化学工業の原料や燃料となる炭化水素(メタン(CH4)、エタン(C2H6)、プロパン(C3H8)、ブタン(C4H10)やそれ以上の高分子量の炭化水素など)が含まれています。また、既存のガス田や油田から生産されるガスの主成分は一般的にCH4です。一方、これらのガスの他に、不純物として二酸化炭素(CO2)、窒素(N2)、水(H2O)、硫化水素(H2S)、水銀(Hg)等なども同時に産出されます。これらの不純物は、ガス精製設備にて分離除去され、精製されたガスがパイプラインや天然ガス液化設備に供給されます。

 世界のガス需要の増加に伴い、今後、多くのガス田の開発が必要とされています。これまでは、陸上で不純物の少なく生産コストの低いガス田が開発されてきました。しかし、高まる需要を背景に、今後は海上や不純物を多く含むガス田を開発する必要があり、生産コストの上昇が見込まれます。

 世界の天然ガスの埋蔵量の40%は、CO2やH2Sを10%以上含む天然ガスであり、その多くが中東、東南アジア、旧ソ連に分布しています(図1)。これらの地域の産ガス国では、CO2を多く含むガス田を開発するためにCO2を効率よく、経済的に分離できる技術を必要としています。JOGMECでは、従来から適用されているCO2分離回収技術と比較して、エネルギー消費が少なく、装置のコンパクト化が可能なCO2分離膜を利用した技術に着目し、化学的に安定な無機膜(ゼオライト膜)を用いたCO2回収分離技術を開発しています。

Source: Foster Wheeler, “New Challenges and Solutions in Designing Large Sour Gas Projects” 図1 CO<sub>2</sub>やH<sub>2</sub>Sを10%以上含む天然ガスの確認埋蔵量

Source: Foster Wheeler, “New Challenges and Solutions in Designing Large Sour Gas Projects”
図1 CO2やH2Sを10%以上含む天然ガスの確認埋蔵量

CO2分離回収技術

 天然ガスや随伴ガスでは、主にガス中のCO2とCH4を分離する必要があります。代表的なCO2分離回収技術としては、溶液吸収法、固体吸着法、深冷分離法、膜分離法があります(表1)。これらの中で、アミン系の吸収剤を用いた溶液吸収法が一般的に普及しています(例えば、CO2含有量をppmレベルまで低減する必要のある液化天然ガス(LNG)の生産に利用)。しかし、溶液吸収法は吸収剤の再生に多量の熱エネルギーが必要になるうえ、供給ガス(CO2除去前)のCO2濃度が高くなるにつれて吸収剤の使用量も増えるためにコストが増加するといった課題があります。一方、膜分離法は、CO2とCH4の分子サイズ差や溶解度差、分圧差等を利用して動作するので、他のCO2分離技術のように加熱・冷却や圧力スウィング等のエネルギー投入が必要ないためにエネルギー消費が少なく、装置構成がシンプルなために低コストです。また、供給ガス中のCO2濃度が高くなるほど分圧差が大きくなり分離特性が向上することから、溶液吸収法に比べて運転コストや設備規模の面で有利になります。

表1 CO2分離技術の比較
  溶液吸収法 固体吸着法 深冷分離法 膜分離法
装置サイズ 大きい 中程度 大きい 小さい
エネルギー消費 多い 多い 多い 少ない
CO2純度 高純度 中程度 高純度 低純度
設備コスト 高い 中程度 高い 低い
技術段階 商業化 商業化 商業化 開発段階

膜分離によるCO2分離・回収技術

 CO2分離膜は、膜中のCO2とCH4移動度の差を利用してそれぞれのガスを分離します。その移動度は、多孔質膜では細孔径、材料の種類、クヌーセン拡散、表面拡散、毛管凝縮、分子ふるい等に影響され、非多孔膜では膜への溶解度、膜中の移動係数に影響されます。したがって、CO2分離膜の特性は、膜の材料、構造によって大きく変わります。CO2分離膜としては、セルロースやポリスルフォン、ポリイミド等の高分子材料、ゼオライト等の無機材料が開発されています。JOGMECが民間企業と共同で開発しているゼオライト膜MSM(Mitsubishi high-Silica Membrane)は、CHA型のゼオライトを適用したCO2分離膜です。  
 高分子材料を使用したCO2分離膜は、近年、CO2分離システムに適用されつつあります。しかし、高分子材料ではCO2とCH4の膜への溶解度や膜中の移動度の差を利用することからCO2分離性能(透過係数、CO2/CH4分離比)が低く、耐熱性や耐化学性、耐水性等の耐久性に劣るため、膜分離法に期待される特性をさらに向上する必要があります。一方、多孔質アルミナ上にゼオライト膜を形成したCO2分離膜(図2)は、ゼオライトの結晶構造中の均一な細孔構造に起因する分子ふるい効果を利用することによりCO2を分離します。ゼオライト膜では前述のようにCO2の透過機構が単純なためにCO2分離性能が高く、無機材料であるために耐久性に優れており、複数の研究機関や企業で開発が進められています。特にゼオライト膜MSMは、表2に示すように高分子CO2分離膜と比較して耐久性に優れており、ゼオライト膜の中でも比較的CO2透過係数(CO2 Permeance)が優れることから開発を進めています。

図2 ゼオライトCO<sub>2</sub>分離膜の構造

図2 ゼオライトCO2分離膜の構造

表2 高分子CO<sub>2</sub>分離膜とゼオライトCO<sub>2</sub>分離膜の比較

表2 高分子CO2分離膜とゼオライトCO2分離膜の比較