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石油開発最新事情:IEA-EOR年次総会開催報告

 JOGMECが日本代表として参加する国際エネルギー機関・原油増進回収実施協定(IEA-EOR)の第36回年次総会が9月に札幌において開催されました。本稿では、本年次総会の開催報告を行います。

IEA-EOR国際共同研究プロジェクトの概要

 IEA-EOR国際共同研究プロジェクト(以下、IEA-EOR)は、IEA(International Energy Agency)内に設けられているエネルギー研究開発委員会(Committee on Energy and Research Technology, CERT)の国際協力事業の一環として、昭和54年(1979年)5月に参加国の政府機関または政府指定の団体が実施協定に調印し発足しました(図1)。
 IEA-EORでは、EOR(Enhanced Oil Recovery, 原油増進回収法)に係る総合的な技術開発を行うための研究、開発、実証の報告及び情報交換を行うことを目的としており、13の参加国により運営されています(図2)。日本の代表は、経済産業省の指示によりJOGMECが務めています。
 世界のエネルギー需要は、中国・インドの生活水準の変化や中東のエネルギー政策によって2035年まで増加すると予想されています。現時点における開発計画や既存技術により生産できる石油の量は埋蔵量の30~35%程度と言われており、大半が地下に残った状態にあります。そこで、IEA-EORでは今後のエネルギー需要に対応した石油の増産を行うため、EOR技術に関する総合的な技術開発を支援しています。
 IEA-EORの活動の一環である年次総会は、参加国が持ち回りでホストを務めることによって開催され(表1)、日本では過去に1985年、1995年、2005年の3回開催しています。年次総会では、IEA-EORの運営について執行委員会により議論し、シンポジウム並びにワークショップにて研究成果を報告し、各参加国におけるEORに関する動向や最新EOR技術の情報交換等を行っています。

図1 IEAにおけるIEA-EORプロジェクトの位置付け

図1 IEAにおけるIEA-EORプロジェクトの位置付け

図2 IEA-EORの主要課題と参加国

図2 IEA-EORの主要課題と参加国

表1 年次総会の開催国

表1 年次総会の開催国

第36回年次総会概要

 2015年第36回年次総会は、9月7日(月)~11日(金)にかけて札幌市ならびに苫小牧市内において開催されました。年次総会の運営は、石油開発技術本部 技術部EOR課が行い、年次総会専用ホームページ(図3)を通してプログラム等の各種情報発信ならびに参加登録を実施しました。年次総会のスケジュールは、以下の通りです。

9月7日(月) 執行委員会 ※執行委員のみ
9月8日(火) ワークショップ
9月9日(水) ワークショップ
9月10日(木) シンポジウム
9月11日(金) フィールドトリップ ※希望者のみ

図3 第36回年次総会のホームページ

図3 第36回年次総会のホームページ

執行委員会

 執行委員会には、執行委員であるカナダ、デンマーク、フランス、英国、ノルウェー、ベネズエラ、中国、メキシコ、日本に加え、オブザーバーとして韓国が参加しました。冒頭、JOGMEC理事の市川から歓迎の挨拶を行い、過去に日本(千葉市)では3度の年次総会を開催したことや本年次総会を初めて札幌市において開催することとなった経緯を紹介しました。また昨今の低油価に伴い、石油開発分野において世界的に研究活動が制限されている状況やその状況下においてもEOR技術が今後も重要となることを述べ、執行委員と本年次総会の重要性について共有しました。執行委員長代理Stenby教授(デンマーク)から開催挨拶の後、オーストリア、オーストラリア、ロシア、アメリカが本執行委員会を欠席したことや来年からコロンビア、韓国が正式加入することになったことが報告されました。
 日本の執行委員であるEOR課長の高橋から本年次総会の概要説明を行い、50件を超えるアブストラクトの登録があり、その中から42件を採択したこと、学会や各社アンケートを通じてシンポジウムテーマを「New Paradigm for EOR」と設定したこと等を報告しました。また、来年度以降の開催国に関して検討を行い、2016年の年次総会はフランスにおいて9月18日(日)~22日(木)に開催されることが決まりました。

図4 執行委員会メンバーと執行委員会の様子

図4 執行委員会メンバーと執行委員会の様子

ワークショップ

 ワークショップには11か国から53名(内、日本から24名)が参加しました。参加者の所属は、海外からは政府機関(英国、ノルウェー、メキシコ)、研究機関(フランス、カナダ)、大学(デンマーク、韓国)、国営石油会社(中国)でした。日本からの参加者は、JOGMECの他、国際石油開発帝石株式会社、石油資源開発株式会社、日本海洋石油資源開発株式会社、 JX日鉱日石開発株式会社、日揮株式会社、京都大学、早稲田大学でした。
 2日間のワークショップでは、IEA-EORにおいてテーマとして掲げる6つのタスク(図2上部)に関して29件(内、日本から6件)の講演があり、活発な議論が行われました。発表内容は、CO2EOR(二酸化炭素を圧入して増産する方法)に加え、EORに関する基礎的な研究成果、中でも近年低環境負荷・低コスト技術として期待が高い低塩分濃度水攻法に関する報告が目立ちました。

表2 ワークショップの発表テーマの内訳

表2 ワークショップの発表テーマの内訳

表3 日本からの発表題目(ワークショップ)

表3 日本からの発表題目(ワークショップ)

シンポジウム

 テーマは「New Paradigm for EOR」で、EORに関連する新規技術や新規適用事例等に関して12件(日本4件)の講演がありました。効率的なEORやコスト削減を目的とした既存EOR技術の応用例、新素材(ナノセルロース)の適用、特殊な流体分析技術、分子動力学を利用した界面現象の把握等幅の広い研究について報告があり、質疑応答では盛んな議論が行われました。

表4 日本からの発表題目(シンポジウム)

表4 日本からの発表題目(シンポジウム)

フィールドトリップ

 フィールドトリップは6か国18名(内、日本から11名)が参加し、石油資源開発株式会社(JAPEX)北海道鉱業所、日本CCS調査株式会社苫小牧事務所へ訪問しました。JAPEXでは勇払油ガス田の特徴や現在の開発状況等について説明を受けた後、バスに乗車して施設を回り説明を受けました。日本CCS調査株式会社では、現在までに行ったCCS実証試験に関する調査内容や今後予定しているCO2圧入計画について説明を受けた後、CO2圧入井近くへ移動し、CO2処理設備等を見学しました。EORの専門家が多いためか、参加者からガス生産を維持する方法やCO2の圧入方法について多くの質問がありました。

図5 日本CCS調査(株)における現場見学風景。(左)CO<sub>2</sub>圧入井,(右)CO<sub>2</sub>地上設備

図5 日本CCS調査(株)における現場見学風景。(左)CO2圧入井,(右)CO2地上設備

おわりに

 本年次総会は日本が10年ぶりにホスト国を務め、滞りなく成功裏で閉会しました。総会全般を通じ、活発な議論が行われ、各国のEOR技術の研究開発の現状および今後の方向性について情報共有することができました。本年次総会が日本から参加した技術者や研究者、学生にとって、EORに関する世界の最新技術について情報収集する場となり、また、各国研究者との意見交換やネットワーク構築の一助となり、今後の石油・天然ガス開発へ活用されることを期待します。

 IEA-EOR第36回年次総会の開催にあたり、多大なるご協力を賜りました下記の皆様に、この場を借りて感謝申し上げます。

●共催
石油技術協会
●フィールドトリップ
石油資源開発株式会社/北海道鉱業所
日本CCS調査株式会社/苫小牧事務所

免責事項

 本資料は(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油開発技術本部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。
また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。

 したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。