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石油開発最新事情:シェールガス・シェールオイル開発技術

技術部非在来型油ガス田技術課

はじめに

 「シェール革命」、最近は急激な原油安の影響からか、その言葉は多くは聞かれなくなってきましたが、エネルギーを語る上で21世紀初頭はまさにシェール開発により石油開発産業の構造が大きく変わった時代だと振り返ることが出来ます。
 そもそもシェールガス・シェールオイルといっても何か新しい物質が見つかったわけではありません。原油や天然ガスは地層が堆積する間に蓄積した有機物が地下深く沈降することにより高温・高圧下にさらされることで原油や天然ガスに変化していきます。このような岩石を根源岩(頁岩:シェール)といいます。在来型油ガス田はこのように生成した原油や天然ガスが、根源岩からしみ出して地層内を移動して集積することで成立しています。これと違いシェールガス・シェールオイルは根源岩から動けずに留まったままの原油や天然ガスが開発の対象となっています。根源岩であるシェールの浸透率(流体の通りやすさ)は在来型油ガス田を形成する砂岩や炭酸塩岩の数万~数百万分の1と非常に小さいため従来の生産方法では経済的に生産できませんでした。
 これを克服したのは、「水平坑井」と「水圧破砕」といった技術です(図1)。垂直に掘削すれば根源岩の厚さ(100m弱がほとんど)が接触エリアとなりますが、堆積する根源岩に沿って水平に坑井を掘削することにより、最近では3,000m以上の区間を接触エリアとする坑井も数多く見られるようになりました。さらにこうして掘削した坑井を10~30の細かな区間に分け、区間毎に高圧の水を圧入して割れ目(フラクチャー)をつくる水圧破砕作業を実施します。発生させたフラクチャーはそのままだと閉塞していきますのでフラクチャーを維持するプロパント(図2)と呼ばれる砂などの支持材を入れることで高い生産性を保持します。水平坑井と水圧破砕を安価に実施する事で、既存油ガス田で見られるような経済性を有したシェール開発が可能となりました。

図1 シェール開発イメージ

図1 シェール開発イメージ

図2 フラクチャリングに使用するプロパント

図2 フラクチャリングに使用するプロパント

シェールガス・シェールオイル開発の特徴

 2000年初頭より広がったシェール開発は、陸上掘削リグ業者や水圧破砕をするサービスカンパニーが多様なサービスを提供し、縦横に張り巡らされたパイプラインで迅速に生産に移行できるなど、各種インフラに富んだ北米で一気に開発が進みました。当初シェールガスを中心に開発されてきましたが、米国内におけるガス価格の低下もあり、2010年頃から開発の中心がシェールオイルに移行しました。高油価を背景に一時期は1,500基を超える掘削リグでシェール開発が進みました。シェール坑井は1ヶ月以内で掘削することが多く、2万に近い坑井が最盛期には掘削されたことになります。
 シェール開発が進んだことにより様々なことがわかってきました。
北米で開発されているシェールエリアは100km以上に渡り広範囲に分布しています。ある程度は一様に分布していますが場所によって坑井の生産性が良かったり悪かったりする事例が見受けられました。また一度生産を開始すると急激に生産量は減退して数年で初期の1割程度の生産に落ちてしまいます。このためシェール開発は次々と新しい坑井を掘削することで生産量を増加させてきました。
 在来型の油ガス層である砂岩や炭酸塩岩の孔隙(隙間)はμm(マイクロメートル:1/1,000,000 m)ですが、シェールの孔隙はオーダーがnm(ナノメートル:1/1,000,000,000 m)オーダーとかなり緻密です。JOGMECでは電子顕微鏡を使って地下から採取したシェールコアの孔隙分布モデルを作成することでこの微細な孔隙を特定して、この孔隙の中での流れをモデル化する研究をしています(デジタルロック技術(図3))。
 また坑井あたりの生産性を上げるためには水圧破砕も重要な技術です。より生産性を向上させるためには、より多くの大きなフラクチャーを地下で生成する必要があります。シェールコアの鉱物の同定や力学的特性の測定を行い、モデル計算を繰り返すことでより生産性を向上させるフラクチャー生成の研究も進められています。
 地下で生成するフラクチャーは直接目で見ることは出来ません。圧入する流体の量から間接的にフラクチャーの広がりを推定することは出来ますが、より直接的な方法として、フラクチャーが生成する際に発生する微小の音を測定してフラクチャーの生成範囲を測定するマイクロサイスミック技術も発展してきました。
 また、同じシェールを開発しても場所により生産性が異なることがわかってきています。これまでは実際に坑井を掘削することで生産性の善し悪しを判断し生産性の良い場所(スィートスポット)を探す作業が行われ、投資効率の良い場所での開発に集約されてきました。今後に向け実際に坑井を掘削する前に、地下構造把握に使用する地震探査データを処理・解析し岩石の物性分布を解釈することでより効率的にスィートスポットを探す技術にも取り組んでいます。

図3 電子顕微鏡(FIB/SEM)を使ったデジタルロック技術

試料表面をイオンビームにより切削加工しながら、<br />電子顕微鏡により連続的に断面観察を行う(FIB/SEM)

試料表面をイオンビームにより切削加工しながら、
電子顕微鏡により連続的に断面観察を行う(FIB/SEM)

FIB/SEMにより得られたシェールの空隙構造<br />(左:シェールの3次元可視化データ、右:赤色は有機物を、青色は空隙を示す)

FIB/SEMにより得られたシェールの空隙構造
(左:シェールの3次元可視化データ、右:赤色は有機物を、青色は空隙を示す)

シェール開発技術の今後

 最近は経済環境の変化から化石燃料の需要が後退し、原油安の状況です。このような環境下では、多数の坑井掘削や水圧破砕の適用など開発コストの高いシェール資源開発はこれまでと比較して停滞気味になっています。現時点では地上・地下条件の良いエリアでの開発にとどまりますが、基本投資単位の小さいシェール開発はいったん油価の上昇が見られた場合は比較的短期間に生産量の増加が望まれます。より安定した化石燃料の供給のためにもシェール資源に対して統合的な技術開発をJOGMECは進めてゆきます。

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