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広報誌特集:油価下落を招いた要因と今後の展望を探る(1)

油価下落を招いた要因と今後の展望を探る

下落した原油価格は今後、どのように推移していくのか。
今回、JOGMEC調査部の 野神隆之と高木路子に、価格下落の原因および2020年に向けた中期的展望について話を聞いた。

2003年5月以来の最安値を記録した原油価格

野神隆之

 原油価格は2月11日、1バレル=26.21ドルの終値を記録した。これは2003 年5月以来、13 年ぶりの安値となる。消費国・日本には歓迎とも思えるが、原油安は産油国の財政圧迫を引き起こすなどの影響を及ぼしている。
 「原油価格が上昇し始めた2004 年は、中国石油需要が前年比で約16パーセントの急増を示しました。これを受け市場では、今後、中国が先導する形で世界の石油需要は右肩上がりで伸びていくと予想されるようになったのです。一方、当時、非OPEC 加盟国の石油生産量は頭打ちの傾向が出てきていたため、OPEC産油国による価格支配力が増大するのではないかとの認識が市場で広がりました。その結果、原油価格が上昇し、2008 年のリーマンショックの直前には、1バレル=147ドルまで高騰したのです。リーマンショック後、一旦、原油価格は下がったものの、世界主要国による景気刺激策もあって回復、2014 年前半頃まで1バレル当たり100ドル前後の原油価格水準は続きました」
 こう語るのは、JOGMEC 調査部の野神隆之だ。
 しかし、リーマンショック後の原油価格高騰時である2010年以降、米国でシェールオイルの生産が伸び始めたのである。当初、シェールオイルは非OPEC 加盟国の生産量の頭打ちを打破するには、不十分と見られていた。
ところが、2014 年には、世界の石油需要が前年比で日量80万バレル伸びる中、シェールオイルを含めた米国の石油生産量は日量170万バレルも伸びるなど、供給過剰感が市場で認識されるようになり、原油価格が下落し始めたのである(図1)。
 「加えて、2014 年11月に開催されたOPEC総会では、OPEC 加盟国は原油を減産しないと発表しました。その結果、市場では原油の供給過剰感が一層強まり、原油価格の下落に拍車をかけたのです」と野神は付け加える。
 さらに2016 年1月に実施されたイランの制裁解除も、供給過剰感に追い打ちをかけている。イランは制裁開始前の2011年には、日量360万バレルの原油を生産し、そのうち200万バレルを輸出していた一大産油国。制裁解除に伴い、イランのザンギャネ石油相は、早期経済回復を目指し、すぐに日量50万バレルの増産を指示。半年以内に日量100万バレルに引き上げると発表した。
 こうした原油の供給過剰による価格の下落を受け、OPECを主導するサウジアラビアと加盟国のベネズエラ、カタール、非OPEC 加盟国ながら有力産油国であるロシアの4産油国は、2016 年2月、増産の凍結を発表。減産には合意しなかったものの、現状維持を図ることで、供給過剰感の緩和を狙ったのだ。しかし、足元では依然として供給過剰感が緩和されたとは言い難い状況が続いている。

原油価格の下落を追いかけるように、シェールオイル掘削リグの稼働数が大幅に減少している。<br />このようにスピーディーな生産量調整がシェールオイルの特長の1つだ

原油価格の下落を追いかけるように、シェールオイル掘削リグの稼働数が大幅に減少している。
このようにスピーディーな生産量調整がシェールオイルの特長の1つだ

原油価格に応じて弾力的に増産するシェールオイル

高木路子

 今後、油価が上昇に転じる可能性はあるのだろうか。
それに対し、野神は1つの要因として、最近の米国のシェールオイルの減産を挙げる。
 「原油価格の下落により、収益が上がらなくなってきたため、シェールオイルの開発・生産事業を減速させる事業者が出てきています(図1)。それにより需給が引き締まれば、価格が上昇に転じる可能性は大いにあります」
 在来型大型油田は、例外を除き、事業開始の決定から生産開始まで約5~10年を要すると言われている。投資額も巨額だ。それに対し、シェールオイルの場合、シェール層に井戸を掘り、原油の採取を開始するまでの期間は早ければ数カ月。投資規模を大小選べるので中小企業でも投資しやすい。しかも、シェール層は古い油田の周辺に広がっているため、原油生産で長い歴史を持つ米国では探鉱作業もほとんど不要だ。そのため、1つの井戸から取れる原油量は在来型より大幅に少ない場合が多いものの、井戸の本数が多く、小回りが利く。つまり、儲かるなら新たに井戸を掘ってシェールオイルを増産し、供給過剰で価格が下がれば新たな掘削を停止すればいいというわけだ。市場動向に応じて柔軟に対応できるショートサイクルな供給源なのである。
 JOGMEC 調査部の高木路子はこう説明する。「需給変動に応じて意図的に生産量を変え、価格安定を図る国をスウィング・プロデューサーと言います。1980 年代以降、OPEC 最大産油国のサウジアラビアがこの役を担ってきました。しかし新しくシェールオイルが登場し、市場価格が高くなれば即座に生産を伸ばせる新しいタイプのプロデューサーとして、米国が加わったのです」

2013~2015年まで、米国のシェールオイルの年間生産量は約150万バレル/日も増加してき た。<br />2014年に至っては、需要増加量の倍以上がシェールオイルだけで増えた計算だ

2013~2015年まで、米国のシェールオイルの年間生産量は約150万バレル/日も増加してき た。
2014年に至っては、需要増加量の倍以上がシェールオイルだけで増えた計算だ






JOGMEC NEWS Vol.44
内容は2016年3月時点のものになります。
当記事が掲載された広報誌「JOGMEC NEWS Vol.44(2016年3月発行)」も併せてご利用ください。