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想定外を想定内へ 東日本大震災以降も続く備蓄業務の戦い(1)

想定外を想定内へ 東日本大震災以降も続く備蓄業務の戦い

久慈と神栖 被災した2つの備蓄基地

「水封式地下岩盤タンク方式」は地下の岩盤内に掘った空洞に石油を貯蔵する方式。<br /> 岩盤の亀裂を水で満たすと同時に石油より水圧を高く保つことで、石油を空洞内に封じ込める

「水封式地下岩盤タンク方式」は地下の岩盤内に掘った空洞に石油を貯蔵する方式。
岩盤の亀裂を水で満たすと同時に石油より水圧を高く保つことで、石油を空洞内に封じ込める

 日本では石油と石油ガス(LPガス)の多くを輸入しているため、万が一の供給途絶に備えて備蓄が行われている。
 国直轄の「国家備蓄」と、民間石油会社等による「民間備蓄」のうち、国家備蓄の統括管理を担うのがJOGMECだ。現在、国家石油備蓄基地は全国に10カ所、国家石油ガス備蓄基地は全国に5カ所整備されている。2016年12月末現在の備蓄量は、国家石油備蓄が約4800万キロリットル(製品換算で約4700万キロリットル)、国家石油ガス備蓄が約130万トンだ。
 そうして備蓄が行われている中、2011年3月11日、東日本大震災が岩手県久慈市にある「久慈国家石油備蓄基地」(以下、久慈基地)と、茨城県神栖市にある「神栖国家石油ガス備蓄基地」(以下、神栖基地)の2カ所を襲った。
 「水封式地下岩盤タンク方式」を採用し、約175万キロリットルの備蓄容量を持つ久慈基地。津波で地上施設は総合管理事務所以外すべて流されたものの、漏油や火災は一切起こらなかった。これは地下の岩盤タンク入口の防潮扉を閉止したことで、重要な地下設備が守られたためだ。ところが1点だけ、想定外の出来事が発生する。それは地上に設置されていた非常用発電機が、大きな損傷を受けたことだ。
 久慈基地が採用する「水封式地下岩盤タンク方式」は、地下の岩盤に空洞を掘り、その中に石油を貯蔵する方法。自然地下水のほか岩盤中に水を人工的に供給し、岩盤内の亀裂を水で満たす。同時に、水圧を石油の圧力よりも少し高くする。そうすることで、石油を岩盤タンクに封じ込める方法だ。その際、タンク内に湧き出た水が底にたまるため、24時間365日、水をポンプで排出する必要がある。ところが津波で電力が途絶え、予備用電源さえも喪失。水封のための水の供給、岩盤タンク内の水の排出、両方ができなくなってしまったのである。そのままでは、岩盤内に石油がしみ出し、深刻な環境汚染を引き起こす可能性もある。そこで久慈基地は、各関係機関と連携し電源確保に奔走。震災の影響で非常用電源が不足する中、電源確保に成功したものの、基地のさらなる安全性強化を意識させられる出来事となった。

神栖基地では、隣接する民間基地所有の桟橋付近で鉄鉱船が座礁。<br />震災後、監督官庁等から安全の確認ができるまで<br />外航船からの石油ガスの受け入れはできないとの見解が示され、<br />民間基地側での在庫が底をつく可能性が発生した

神栖基地では、隣接する民間基地所有の桟橋付近で鉄鉱船が座礁。
震災後、監督官庁等から安全の確認ができるまで
外航船からの石油ガスの受け入れはできないとの見解が示され、
民間基地側での在庫が底をつく可能性が発生した

 一方、沿岸部にありながら、東日本大震災時の被害は最小限にとどまった神栖基地。しかし同基地では、石油ガスの放出という形で震災への対応を迫られることになる。というのも、地震発生時、隣接する民間のタンクに外航船から石油ガスの受け入れを開始しようとしていたところ、作業員が危険を察知。配管を手動で切り離し、桟橋施設の損傷を回避できたものの、桟橋近くで大型船が座礁したため、石油ガス船が桟橋に着けなくなってしまったのだ。その結果、石油ガスの供給が途絶え、民間石油会社の石油ガスタンクが数日後には底をつくという事態が発生したのである。
 しかし当時の「石油の備蓄の確保等に関する法律」は、あくまで「我が国への石油の供給が不足する事態」を、国家備蓄の放出条件としていた。つまり、災害により国内の特定の地域への供給が不足する事態に対して、石油ガスを放出することを前提としていなかったのである。とはいえ直面したのは未曾有の大震災。実際、石油ガスの供給が途絶え、在庫が底をつく可能性が十分に考えられる。そうした状況を鑑み、各関係機関が協議を重ね、国の指示により2011年4月、4万トンの石油ガスが神栖基地から隣接する民間の石油ガスタンクに初めて放出されることになる。これは国家備蓄史上、初めての経験となった。
 ここで重要なのは、いずれの事例も自然災害などを想定したさまざまな対策がなされていたことから、原油の流出や供給不足といった最悪の事態が避けられたことだが、その一方で、東日本大震災は、それまでの想定を大きく超えた国家備蓄基地の危機をもたらしたのである。

JOGMEC NEWS Vol.48
内容は2017年3月時点のものになります。
当記事が掲載された広報誌「JOGMEC NEWS Vol.48(2017年3月発行)」も併せてご利用ください。