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坑廃水処理への取り組みが岩手県民100万人の生活を守る!

坑廃水処理への取り組みが岩手県民100万人の生活を守る!
佐藤直樹

JOGMECの多様な業務を支えるメンバーを紹介する当連載。
今回は、松尾管理事務所長、佐藤直樹を取り上げます。

国内最大の坑廃水中和処理施設を365日24時間体制で運営・管理

 岩手県北部に源流を持つ北上川は、東北一の大河。松尾管理事務所は、この北上川の支流の1つ、赤川の上流部で、旧松尾鉱山新中和処理施設の維持管理をしています。
 今の美しい姿からは想像できませんが、かつて北上川は汚染され、大きな社会問題になりました。1914 年に始まった松尾鉱山の開発で発生した強酸性の坑廃水が赤川に流出し、北上川に流れ込んでしまったのです。そこで赤川上流部に中和処理施設が建設され、1982 年に稼働開始。その維持管理を岩手県から委託されたのが、我々JOGMECです。松尾鉱山は1972 年に閉山しましたが、坑廃水は今でも大量に発生し続けています。その量は年間約900 万立方メートル。これは日本一の水量です。そのため、施設は365日24時間体制で運営・管理しなければなりません。万一、災害や事故で処理が停止すれば、川の水が農業・工業・生活用水として利用できなくなり年間約500 億円の被害が生じると予測され、北上川沿いに住む岩手県民約100 万人に影響が及ぶことは避けられません。岩手県の人口が約130万人と言われれば、その被害の大きさがわかると思います。そのため、機器装置のメンテナンスや防災訓練の経験を毎日地道に積み重ね、決して坑廃水処理が停止しないよう努めています。

旧松尾鉱山新中和処理施設で毎日欠かせない3つのこと

ちょっとした異状や変化に気づくため施設内の巡回は欠かせません

坑廃水の水質チェックは欠かせない日課

坑廃水の水質チェックは欠かせない日課

 中和処理には、鉄酸化バクテリアを利用した処理方法を採用しています。バクテリアで坑廃水内の鉄を酸化し、安価な炭酸カルシウムで中和。処理された酸性度の低い上澄み水を赤川に放流します。この処理には巨大かつ多様な設備が必要となり、ひとつでも欠ければ処理はできません。毎日必ず施設を巡回し、配管からの漏水、機器装置の不具合や水質値の異状がないか確認を行っています。

365日、盆も正月だって事故や災害に備えています

毎日、日中は必ずJOGMEC 職員が処理施設に常駐する

毎日、日中は必ずJOGMEC 職員が処理施設に常駐する

 処理施設では、中和処理作業の請負会社が分散制御システムで各機器装置の稼働状況の監視、制御を行い、24 時間体制で処理設備を稼働させています。松尾管理事務所の職員も、お盆や正月に関係なく、交代で処理施設に常駐。事故や災害が発生した際、迅速かつ適切に対応できるようにしています。八幡平は、自然環境も厳しい場所。機器装置の故障だけでなく、雷や暴風、豪雪など、自然災害にも注意が必要です。

目標水質に一瞬でも抵触しないため引き継ぎノートに必ず記入・報告しています

貴重なデータが詰まった引き継ぎノート

貴重なデータが詰まった引き継ぎノート

 処理施設に常駐する松尾管理事務所の職員は、交代制のため、前日の様子を翌日の担当者に引き継ぐ必要があります。水質や機器の調子は毎日変化し、特に水量は、気圧の変化や降水量等にも影響されます。そのため、気圧などの気象データから作業内容まで引き継ぎノートに記し、毎日報告会をすることで、作業の効率化はもちろん、エラーや不具合に適切な対処ができるようにしています。

「坑廃水処理」という仕事で大切なことは?

「一滴も流出させない」という強い信念

 美しい自然と人々の生活を守るため、岩手県や請負会社とともに「一滴も坑廃水を流出させない」という信念を持って邁進し、その結果、操業開始以来35 年間、無事故・無災害を達成しています。今後も国や地方公共団体を巻き込んだ防災訓練を行うなど、徹底した安全対策を施し、さらにこの記録を伸ばしていきたいと思います。それが、学生時代を過ごした第二の故郷、岩手県への私なりの恩返しなのです。

岩手県環境生活部の藤原聡史さん(前列左)、松本聡さん(中央)と、<br /> 佐藤直樹所長(前列右)をはじめとする管理事務所のメンバー

岩手県環境生活部の藤原聡史さん(前列左)、松本聡さん(中央)と、
佐藤直樹所長(前列右)をはじめとする管理事務所のメンバー

JOGMEC NEWS Vol.48
内容は2017年3月時点のものになります。
当記事が掲載された広報誌「JOGMEC NEWS Vol.48(2017年3月発行)」も併せてご利用ください。