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石油開発最新事情:物理探査分野の実験紹介

はじめに

 技術部実験研究基盤課では油層工学分野、地質地化学分野、物理探査分野の実験・分析業務を担当し、各種データの取得を行っています。そのなかでも今回は物理探査分野に焦点を当て、日常の実験内容から最近のデータ取得技術に関して紹介していきたいと思います。

物理探査分野の実験

 物理探査分野の実験では図1のような三軸圧縮試験機を用い、主に岩石力学試験および弾性波速度測定試験が行われています。岩石力学試験では、近年シェール開発等で適用されている水圧破砕技術等を想定した貯留岩コアの歪み測定試験や破壊試験を実施しています。また、弾性波速度測定試験では室内実験から得られた速度データにより油ガス田にて取得されている地震探査データとの比較や、データの高精度化に活用されています。
 本稿では特に弾性波速度測定試験について少し掘り下げて説明させて頂きます。弾性波速度測定試験は図2のような圧電素子と呼ばれる振動子を用い、その振動子から発生した振動(波)が岩石中を伝わる伝搬速度を測定しています。

三軸圧縮試験機(左)と圧電素子(右)の写真

より精度の高いデータ取得を目指して

 最近実施した研究においては、油ガス田の砂岩層を対象とした異方性評価に関する実験が行われ、岩石試料における軸方向や側方向など多方向の弾性波速度データを取得いたしました。一般的に弾性波速度の測定方法は、軸方向については、図3に示すようなバッファーと呼ばれる緩衝金属内に設置した圧電素子により伝搬時間が測定され、そのデータには「波」がバッファー内を伝搬する時間が含まれることから、実験後にバッファーのみの伝搬時間を除くことで真の岩石試料内における伝搬時間が求められます。また側方向の速度測定には専用のスリーブにより、直接試料に圧電素子を密着させることで「波」が岩石内部を伝搬する時間が求められます。しかし比較的異方性が小さいと推定される油ガス田の砂岩層を対象とした実験結果において、数10m/secではありますが側方向の伝搬速度が速くなる現象が確認されました(図6左)。そこで、側方向にも軸方向同様の伝搬時間の設定が検討されました。この場合、図4のように圧電素子同士を密着させ伝搬時間を求め、測定デーダから除くことで真の岩石内の伝搬時間を求めることも考えられますが、この方法ではオシロスコープ上において発振時と受振時の間隔があまりにも短く、明確な時間差をオシロスコープ上から読み取ることができませんでした。

  • 図3.圧電素子が添付された金属バッファーとスリーブ試料

    図3.圧電素子が添付された金属バッファーとスリーブ試料

  • 図4.素子合わせ

    図4.素子合わせ

 そこで伝搬時間にこだわるのではなく、長さの異なる均質媒体を用いた試料内部の伝搬時間から長さ0mmにおける伝搬時間を割り出す手法を検証しました(図5)。試料は30mm、50mm、70mmのアルミニウム2024を用い、それぞれの伝搬時間を測定し、その傾きよりP波、S波それぞれの長さ0mm時の伝搬時間をY切片より求めました。

図5.無試料時伝搬時間決定イメージ

図5.無試料時伝搬時間決定イメージ

 その測定結果を砂岩試料のデータに適応し、軸及び側方向のP波の速度分布を検証したところ、適応後ではV0°(深度方向の波)とV90°(水平方向な波)の速度差が小さくなっており、異方性が小さいと推定される結果と整合的であることが分かります(図6右)。これらの結果からこの手法を用いることにより、数10m/secのより精度の高い弾性波速度を求めることが可能となりました。

図6.側方向緩衝時間適応前後(P波:左は適応前、右は適応後)<br />*Vertical:縦抜きのコア Horizontal:横抜きのコア

図6.側方向緩衝時間適応前後(P波:左は適応前、右は適応後)
*Vertical:縦抜きのコア Horizontal:横抜きのコア

 このように弾性波速度測定の実験では非常に小さな値(例えば数10m/s)を扱うため、データの扱いには注意を払いながら、より精度の高いデータ取得を目指して日々実験に取り組んでいます。

(注)図6グラフ中のデータは実データではなく、イメージです。


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