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広報誌特集:資源備蓄を問う (1)

なぜ資源備蓄が必要?資源・エネルギーセキュリティの最後の砦として、不測の事態に備える

2013年春、岡山県倉敷市と愛媛県今治市波方町に2つのエネルギー施設が完成した。どちらも、日本のエネルギーセキュリティを担う、石油ガス(LPガス)の国家備蓄基地だ。現在、日本では石油とLPガス、さらにレアメタルといった資源を、政府の主導で備蓄している。なぜ資源を蓄える必要があるのか? どれほどの資源が国内に備蓄されているのか?そして、資源備蓄は国民の暮らしに何をもたらすのか? 日本の資源備蓄を、問う。

資源・エネルギー安定供給体制の確立が、資源に乏しい日本の課題

日本の原油・LPガス・レアメタルの輸入比率<出所:原油とLPガスは、資源エネルギー庁「エネルギー白書2012」を基に作成>

日本の原油・LPガス・レアメタルの輸入比率
<出所:原油とLPガスは、資源エネルギー庁「エネルギー白書2012」を基に作成>

資源小国といわれる日本。 2010年のエネルギー自給率は、水力・地熱・太陽光・バイオマス等による4.8%にすぎず、原子力エネルギー※1を含めても19%にとどまり、残りの約8割のエネルギー資源を海外から輸入しています。 なかでも石油は一次エネルギー総供給の約4割を占め、その8割が中東産です。また、家庭用やタクシー燃料として、国民生活に密着し幅広く利用されているLPガスも、7割以上を輸入に頼っています。 一方、金属資源に目を向けても、基礎素材からハイ テク産業分野まで、日本の産業に必要不可欠な資源であるレアメタルは、地域偏在性が高い資源です。 このような偏りのある供給構造は、資源・エネルギーの安定供給を維持していく上で好ましいものとはいえません。 資源国の政情不安などにより供給が不安定となり、日本経済や国民の生活に大きな支障をきたす恐れがあります。 現に1973年の第四次中東戦争に端を発した第一次オイルショックで、当時の日本は経済混乱に陥り、戦後から続いていた高度経済成長は終焉を迎えるに至りました。

官と民で進められる、資源・エネルギー供給の自立化と多様化

日本では、こうした脆弱な資源・エネルギー供給構造からの脱却を図るため、長期的な視点で供給先の多様化が推進されています。 JOGMECが関与するメタンハイドレート海洋産出試験の成功や、アメリカ産シェールガスの日本向け輸出認可などの最近の報道は、官・民で進めてきたさまざまな取り組みが実を結んだ一例であり、このような出来事の一つひとつが、日本の資源・エネルギーセキュリティの強化につながると考えられています。

志布志国家石油備蓄基地

志布志国家石油備蓄基地

予測不能な突発的な供給リスクに、いかにして備えるか?

一方で、日本への石油・LPガスの供給不足のリスクや想定すべき緊急事態が複雑化、不確実化しつつあります。 中東地域の地政学的なリスクについては、地域・宗派対立・核問題を巡る国際社会との緊張など、さまざまな問題が複合化し、より大規模かつ重大なエネルギー安全保障上の脅威となる可能性があります。 また、インフラ施設等に対する天災や事故に加え、テロリズムの脅威といったリスク、マラッカ海峡を含む関係水域における安全性なども問題視されています。 そして、レアメタルについても、二次電池、強力磁石、超電導材、水素吸蔵合金などでさらなる需要拡大の動きがあり、その重要性がますます高まるなかで、新興国での需要拡大・寡占化が懸念されています。 こうしたリスクを抱えながら、現在の供給構造が今後も維持されていく保証はどこにもありません。 突発的な供給リスクに備えるため、日本では、石油、LPガス、レアメタルの備蓄事業が実施されており、まさに資源備蓄は、資源・エネルギーセキュリティの“最後の砦”といえます。

第一次オイルショックを契機に石油備蓄事業を開始

日本が資源備蓄事業を開始する契機となったのが、前述した第一次オイルショックです。 この世界的な経済混乱が巻き起こった年の翌年、19 74年に日本を含む主要石油消費国により、IEA※2が設立されました。 その設立目的は、(1)加盟国における石油を中心としたエネルギー安全保障の確立、(2)中長期的に安定したエネルギーの需給構造の確立などであり、「OECDの加盟国」でかつ、「前年の1日当たりの石油純輸入量の90日分以上の緊急時備蓄を維持している」ことが加盟条件となっています。 このIEAの設立・加盟が一つのきっかけとなり、日本では、1976年に石油備蓄法(現在の「石油の備蓄の確保等に関する法律」)が施行され、民間の石油精製事業者などによる石油備蓄が義務づけられました。 さらに、1978年には国家石油備蓄も法制化され、国家 備蓄・民間備蓄の2本柱の体制が構築されました。 LPガスについては、1981年の石油備蓄法改正により、民間備蓄がスタート。 1991年には、通商産業省(現在の経済産業省)石油審議会石油部会液化石油ガス分科会において、新たな石油ガス備蓄政策が検討され、LPガスも石油と同様、 国家と民間で備蓄事業を推進する体制になりました。 またレアメタル備蓄制度は、1983年に創設。 石油やLPガスとは異なり、創設当初より官・民協力による備蓄体制がとられています。 JOGMECは、石油、LPガス、レアメタルそれぞれの国家備蓄事業を担い、民間企業と協力して日本の資源備蓄を支えています。

  • 日本の資源備蓄に関する主な出来事

    日本の資源備蓄に関する主な出来事

  • 日本の資源備蓄体制

    日本の資源備蓄体制

IEAとの協調により世界のエネルギーセキュリティにも貢献

CERMの発動実積

CERMの発動実積

日本の備蓄資源については、日本国内の資源・エネルギー供給が不足する恐れのある事態が発生した場合に、国民生活や経済の混乱を防ぐために活用されます。 現に、2011年の東日本大震災発生後には、国家備蓄のLPガスが放出され、東北地方へのLPガス供給にあてられました。 また、日本の石油備蓄は、国内の石油供給のみならず、世界の石油市場の安定化にも役立てられています。 IEAには、CERM※3という制度があり、石油供給の途絶などの緊急事態が発生またはその恐れがある場合には、加盟国が協調して備蓄の放出を行うことになっています。 これまでもIEAによるCERMは複数回発動されており、国際石油市場の価格高騰による混乱の予防や沈静化につながっています。 このように日本の資源備蓄は、世界のエネルギーセキュリティにも貢献しているのです。

  • レアメタルを備蓄している国家備蓄倉庫

    レアメタルを備蓄している国家備蓄倉庫

  • 上五島国家石油備蓄基地

    上五島国家石油備蓄基地

※1:原子力発電の燃料となるウランは、エネルギー密度が高く備蓄が容易であること、使用済燃料を再処理することで資源燃料として再利用できること、発電コストに占める燃料費の割合が小さいこと等から、海外への資源依存度が低い「準国産エネルギー」と位置づけられている。
※2:IEA:International Energy Agency(国際エネルギー機関)の略称。 経済協力開発機構(OECD)の下に設立された機関で、現在、日本を含む28か国が加盟している。
※3:CERM:Co-ordinated Emergency Response Measures(協調的緊急時対応措置)の略称。1984年にIEAで合意された



JOGMEC NEWS Vol.33
内容は2013年6月時点のものになります。
当記事が掲載された広報誌「JOGMEC NEWS Vol.33(2013年6月発行)」も併せてご利用ください。