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  平成21年 4月 7日 2009年03号
Lithium Supply & Market 2009報告(その2)

<金属資源技術部特命調査役  阿部 幸紀 >
<企画調査部企画課長代理 大野克久>

 2009年1月27及び28日の両日、サンティアゴ(チリ)において、Metal Bulletin(英)主催の標記会合が開催され、リチウム需給の現状や今後の見込み等についての講演・意見交換が行われたのに引き続き、1月29、30日の両日、世界的なリチウム生産企業であるSQM社およびChemetall社がチリ・アタカマ塩湖で操業しているプラントの視察が実施された。
 この会合及び視察に、JOGMEC本部2名とサンティアゴ調査員が参加したので、その概要を報告する。本トピックスでは会合の概要について報告したその1に続きその2として、1月29、30日に実施されたプラント視察の状況を報告する。
 LSM’09カンファレンス後の1月29、30日の両日、チリ首都サンティアゴ北方約1,500kmに位置するアタカマ塩湖においてSQM社及びChemetalI社(両社で世界の炭酸リチウム生産の約45%)の操業施設のリチウム濃縮工程と、アタカマ塩湖西方230kmに所在するアントファガスタ近郊カルメンにおいて炭酸リチウム精製工程を視察した。

1.位置関係
 図1に示すように、チリ、ボリビア、アルゼンチンの国境が接する地域には、リチウムの原料であるかん水を産するアタカマ塩湖(チリ)、リンコン塩湖(アルゼンチン)及びウユニ塩湖(ボリビア)が存在しており、この3塩湖で世界のリチウム資源量の8割を占める(表1)。ハイブリッド車、電気自動車の二次電池向けの需要増が見込まれるリチウムイオン電池の原料である炭酸リチウム確保の観点から、我が国企業の関心が高い地域である。
図1 アタカマ塩湖、リンコン塩湖、ウユニ塩湖の位置  

表1 3つの塩湖かん水のリチウム資源量+埋蔵量
(リチウム純分量)

2.アタカマ塩湖
  アタカマ塩湖の湖面を形成する岩塩(写真1)は空隙率が24%であり、かん水はこの岩塩中の空隙を満たしている。SQM社及びChemetall社はアタカマ塩湖でリチウム濃縮プラントを操業しており(図2)、同塩湖にはSQM社所有のかん水汲み上げ用坑井が200ヵ所以上、Chemetall社の坑井が20ヵ所に存在している。
 図3にアタカマ塩湖におけるかん水システムの状況を模した図を示す。アタカマ塩湖かん水はその水質と分布域から大きく3種類に分けられる。塩素を多く含む塩化物かん水(MOP:Muriate of potash)を基本とし、北東部の火山帯から供給される硫酸を高濃度で含む硫酸塩かん水(SOP:Sulfate of potash)、湖南部に分布する石灰岩の影響を受けるカルシウムかん水がある。このうちMOP とSOPの組成を表2に示す。SOPは硫酸塩が阻害物となりリチウム濃縮が困難であるが、SQM社の主産物は肥料であり、リチウムは副産物として回収しているため、SOP分布域でも操業している。一方Chemetall社はリチウムを主産物としているため、処理技術が確立されており資源量も豊富な塩化物かん水付近にプラントを設立している。リチウム濃縮に関しては、Chemetall社の設備の方が蒸発池が大きく、拡張も計画的に実施されており、副産物としてリチウムを回収しているSQM社よりも効率的にリチウム濃縮がされるようにプラントが設計されている。
   
写真1 アタカマ塩湖に表出する岩塩


図2 アタカマ塩湖におけるSQM社、Chemetall社リチウム濃縮プラント操業位置図

図3 アタカマ塩湖におけるかん水システムの状況

表2 アタカマ塩湖かん水の組成(SQM社データ)


3.リチウム濃縮工程及び
 SQM社とChemetall社は同じような工程でリチウムを濃縮している(図4)。汲み上げ量5〜150m3、レベル-40ml(Chemetall社のデータ)でかん水を汲み上げた後、広大な蒸発池(SQM社:1,000万m3)を利用し、SQM社では8ヶ月、Chemetall社は12〜15ヶ月かけ、かん水中のリチウムを0.2%から6%まで濃縮する。Chemetall社によると、効率よくかつ池全体で濃度差なくリチウムを濃縮するためには、蒸発池の形状、深さ、アンデス山脈からの風向き等を考慮する必要があり、同社では蒸発池の水位、電気伝導度及びかん水サンプル採取を毎日実施している。6〜7月の冬期は低温の影響でかん水中のMg分が沈殿しないため、Chemetall社のプラントは操業を中止する。SQM社のプラントも冬期は生産効率が60〜65%まで低下する。


図4 SQM社及びChemetall社、アタカマ塩湖におけるリチウム濃縮工程

4.炭酸リチウム精製工程
 濃縮かん水からホウ素を除去する際には有機抽出剤による溶媒抽出法が用いられるが、アタカマ塩湖では標高が高いために気圧が低く、有機抽出剤の揮発が著しい。そのためこのプロセスを効率的に行うことができない。したがって濃縮されたかん水は、アタカマ塩湖西方230kmの標高の低いアントファガスタ近郊カルメンに所在する両社の精製プラントまでトラックで運搬され、図5に示すフローによって炭酸リチウムが生産される(生産能力SQM:4万トン/年、Chemetall:2.7万トン/年)。SQM社では水酸化リチウムも生産している(生産能力:6千トン/年)。
 精製には1日を要し、最終製品はアントファガスタから外国へ輸出されている。




図5 SQM社及びChemetall社、カルメンにおける炭酸リチウム精製工程

おことわり:本レポートの内容は、必ずしも独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構としての見解を示すものではありません。正確な情報をお届けするよう最大限の努力を行ってはおりますが、本レポートの内容に誤りのある可能性もあります。本レポートに基づきとられた行動の帰結につき、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構及びレポート執筆者は何らの責めを負いかねます。

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