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石油開発最新事情:フルウェーブフォームインバージョンを用いた地下イメージング

技術部 探査技術課

はじめに

 地下構造の正確な可視化(イメージング)は、石油開発における重要なテーマの一つです。
 石油を集積できる地下構造が存在することは油田の成立条件の一つであり、探鉱の初期段階では反射法地震探査等を用いて石油が胚胎している可能性のある構造を抽出することが必須となります。また、経済的成功への影響が大きい埋蔵量の多寡は、構造の大きさに寄るところもあり、構造を正確に把握し埋蔵量評価の精度を向上させることや、生産の障害となるような断層等がないかを把握することは、事業リスクの低減にもつながります。
 そのような中、近年の石油開発の対象がより複雑な構造へと推移していることもあり、イメージングの精度向上に関する様々な技術開発が行われています。その一つとしてJOGMECでも技術開発に取り組んでいるフルウェーブフォームインバージョン(FWI)を用いた地下イメージングについてご紹介します。

フルウェーブフォームインバージョン(FWI)とは

 反射法地震探査を用いて地下構造をイメージングする過程では、地下の速度分布の情報が必要になります。速度分布は取得されている波形データから推定することになりますが、従来手法の一つに走時トモグラフィという手法があります。取得データのうち最初に到達する波(初動)の到達時間の情報をもとに、地下の速度分布を推定するのが走時トモグラフィです(図1)。一方、FWIでは全ての波の情報を用いて速度分布を推定します。全ての波形情報を使用することから、走時トモグラフィに比べ高分解能な速度分布の推定が可能です。FWIによってより確からしい速度分布を得ることができれば、最終的なイメージング結果の精度も向上することが期待されます。実例も報告されており、FWIによって推定された速度モデルを用いることにより、イメージング結果が向上していることが確認できます(図2)。

図1.走時トモグラフィとフルウェーブフォームインバージョンの違い

図1.走時トモグラフィとフルウェーブフォームインバージョンの違い

図2.走時トモグラフィ(上段)とフルウェーブフォームインバージョン(下段)の比較<br />左は速度分布の推定結果、右はイメージング結果 (Sirgue et al., 2010)

図2.走時トモグラフィ(上段)とフルウェーブフォームインバージョン(下段)の比較
左は速度分布の推定結果、右はイメージング結果 (Sirgue et al., 2010)

JOGMECでの取り組み

 JOGMECでは西オンタリオ大学や西オーストラリア大学とともに、FWIに関する技術開発を行ってきました。
 2013年には西オンタリオ大学、INPEXと共同で、構造が複雑な新潟陸上油田で取得された2次元反射法地震探査のデータに対しFWIを適用し、地下構造解釈の一助となる高分解能な速度情報を得ることができました(図3)。推定された速度モデルは近傍の坑井のデータとも整合的であり、国内陸上探査へのFWIの適用の有効性を示すことができました。

図3.新潟陸上油田の2次元反射法地震探査データに対する<br />走時トモグラフィ(上)およびFWI(下)による速度推定結果(亀井ほか, 2014)

図3.新潟陸上油田の2次元反射法地震探査データに対する
走時トモグラフィ(上)およびFWI(下)による速度推定結果(亀井ほか, 2014)

 2016年には西オーストラリア大学とともに、坑井間地震探査の実験データに対してFWIを適用し、走時トモグラフィに比べ高分解な速度モデルを得ることができました(図4)。

図4.坑井間地震探査データに対する走時トモグラフィ(左)およびFWI(右)による速度推定結果<br />(Kamei et al., 2017)

図4.坑井間地震探査データに対する走時トモグラフィ(左)およびFWI(右)による速度推定結果
(Kamei et al., 2017)

 また、この実験では地中にマイクロバブルを含む水を圧入し、その前後で複数回坑井間地震探査データを取得しました。それらのデータに対しFWIを適用し、マイクロバブル水による速度変化を把握することで、圧入したマイクロバブル水がモニタリングできるかの検討も行いました。
その結果、1mという高い解像度でマイクロバブル水が移動したと思われる領域を推定することができました(図5)。

図5.FWIによる速度変化推定結果(Kamei et al., 2017)

図5.FWIによる速度変化推定結果(Kamei et al., 2017)

 JOGMECでは生産や増進回収法(EOR)適用時の地下の流体の動きを把握するためのモニタリング技術の開発を行っており、その要素技術の一つとしてFWIを検討しています。FWI用いた地下イメージングにより流体の動きを高分解能で把握し、原油が適切に生産できているかを知ることで、原油回収率の向上に貢献したいと考えています。

今後

 今後もFWI等の活用を通して、地下イメージングの向上を進めたいと思います。現在は西オーストラリア大学とともに、弾性波FWIの技術開発を進めています。FWIには音波の伝播を扱う音響波FWIと、変位の伝播を扱う弾性波FWIがあります。音響波FWIは現在商用で使用され始めており一般的になりつつありますが、弾性波FWIは音響波FWIよりも多くの物性を評価できるものの、解析手法が複雑で、多くの計算機能力が必要なこともあり、まだ開発途上にあります。今後、弾性波FWIの実データへの適用も進めてゆきたいと思います。


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