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海洋工学ハンドブック

ハンドブック「序」より

 海洋工学は、海洋観測、海洋資源の開発・生産、海上輸送・航行、港湾など様々な分野で応用されている工学技術の包括的な名称である。海洋資源の開発・生産では、水産を除けば石油・ガスが広く利用されている分野で、その開発に必要な海洋構造物を設計・建造し、現地に設置して運転を開始するためには、船舶工学、土木工学、海洋工事技術、海中作業技術など様々な工学技術が必要である。

 1990年代以降、石油と天然ガスの約1/3 は海洋から生産されるようになり、探鉱が大水深域から氷海に展開され、そのために必要な設備を設計する海洋工学の重要性は増している。海洋の石油・天然ガス生産は2009 年には、水深2,934m に達し、氷海のような極限海域でも多くの試みが行われている。大水深と氷海では設備を海上ではなく海底に設置するサブシーシステムが効果的で、サブシーファクトリーの開発が進められている。

 海洋工学の個々の分野では、海洋構造物の入門書、海洋構造物の運動解析に関する入門書や専門書、あるいは、海洋の波・風・流れ等に関する専門的解説書などがあるが、海洋石油開発と石油技術者と海洋工学技術者を対象にした平易で包括的な解説書はない。

 このような状況に鑑み、主として構造物の観点から本ハンドブックを作成した。内容は、海洋構造物とその付帯設備、海洋構造物の解析・設計、建造、輸送、設置、保守に関する解説である。

海洋石油開発は、一般に次のようなステップで実施される。

探 鉱:地質調査⇒物理探査⇒試掘⇒総合地質評価⇒探掘⇒油層評価
 
開 発:開発計画策定生産設備建設開発井掘削・仕上げ
 
生 産:生産・出荷⇒保守・管理
 
撤 去:廃坑・設備撤去

  青字でアンダーラインを付した部分が海洋工学の大きく関与するステップである。試掘と開発井掘削・仕上げには、掘削リグが用いられる。油田の開発計画を立案する時には、生産設備と出荷設備の機能とコストおよび信頼性に関する情報が必要である。生産設備を建設する時には、設計から設置に至る広範な技術が必要となる。油田の生産・出荷を続けるためには、プラットフォームや係留等の生産設備の保守・管理が必要である。

海洋構造物は、陸域から孤立した厳しい海洋環境の中で、掘削・生産等の作業を行うために必要な労働力、食料、燃料、動力設備、作業設備、通信装置等を搭載し、安全に操業できるシステムでなければならない。即ち、海洋構造物は複合システムである。

本ハンドブックは、これらの技術を次のように4 部に分けて解説している。

第1部:海洋開発技術と海洋構造物(掘削・生産システム、パイプライン、タンカー)
第2部:開発計画(大水深開発、氷海開発、海洋天然ガス開発)
第3部:海洋構造物の建造・操業・撤去(建造・操業・撤去・コスト・事故統計)
第4部:海洋構造物の解析と設計

 第1部では、海洋石油開発に用いられている主要な構造物として、ジャッキアップリグやセミサブリグなどの掘削用構造物、ジャケットや浮遊式生産システムなどの生産用構造物、海底坑口装置・海底セパレーターなどの海底生産設備、パイプライン・フレキシブルライザー・ブイなどの送油設備とタンカーについて解説した。

 第2部では、大水深開発の現状として、代表的な石油開発フィールドであるメキシコ湾、北海、ブラジル沖等を紹介した。また、開発計画策定法、および氷海開発の現状と埋蔵量を解説した。さらに、海洋天然ガスの開発技術と動向を解説した。

 第3部では、海洋構造物として、ジャッキアップリグ、ジャケット、浮遊式生産システム、パイプラインなどを取り上げ、その建造、輸送、設置、運転、保守について解説した。建造は、建造方法、工程、コストを解説し、輸送では、輸送方法、曳航馬力、ウェザールーティングを解説した。設置は、海洋調査、ジャケットや浮遊式生産システムの設置方法、作業船団と潜水作業を解説し、運転および保守では、船内組織、資材の補給、保守点検と作業用ROV 等を解説した。生産を終了した油ガス田の廃鉱と設備の撤去に関する国際基準および地域基準と撤去の現状を紹介した。開発費と操業費などのコストデータと操業に関する契約について解説し、さらに事故統計データを紹介した。

 第4部では、海洋構造物の解析設計法と設計基準を概説し、解析設計の具体的手法として、波・風・潮流などの自然環境の性質と数学的取扱法、ジャッキアップリグやジャケットなどの着底・固定構造物の荷重と強度解析法、セミサブや一点係留システム等の浮体の運動と強度の解析法、係留解析法を解説した。API のジャケットのルールとDNV の海洋構造物基準の概要と環境安全に関する基準を紹介した。

 本書は1994年に最初の解説書が完成した。海洋石油開発の大水深への急速な進展に鑑み、99年に全面的な加筆修正をするとともに、電子出版として内容を整えた。その後、2002年に第2版、2005年に第3版、2007年に第4版、2011年に第5版、今回2016年に第6版を出版し、都度最新情報の追加を行ってきた。今後、広く多くの方の意見を入れて、さらに充実した解説書となるように改訂し、石油及び海洋技術者の実務や研修に役立ち、石油の探鉱・開発に貢献できれば幸いである。

平成28年12月

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