我が国には豊富な地熱資源が存在していますが、地熱有望地の多くは自然公園地域に分布しており、また地形が急峻で植生が密に発達しているところが多いため、いまだ十分な調査が行われていないところが多数存在しています。
JOGMECは、このような地域における地熱開発を促進するため、平成24年度から地熱資源ポテンシャル調査を実施し、民間企業の方々に様々な調査結果を提供しています。
地熱開発では、マグマ溜りなどから供給される熱(熱構造)、蒸気や熱水を供給する断裂系(流路)、蒸気や熱水を地下に封じ込める器(貯留構造)の3つの要素が揃ってはじめて大規模な開発ができると言われています。
このため、空中重力偏差法探査で断層の分布や基盤の深さを調べて流路を把握し、時間領域空中電磁探査と空中磁気探査で変質帯(帽岩)の分布を調べて器(貯留構造)の存在を確認します。
空中物理探査で抽出した有望域においては、地表調査により、地表の直接情報及びより深部の物理探査情報を取得し、ボーリング調査のターゲットを選定します。
さらに、ボーリング調査により地表下の地質、構造及び温度情報を把握することで地熱資源ポテンシャルの評価を行っています。
実施する調査内容は地域によってケースバイケースで、事業者の参入判断に必要な情報を取得するための調査メニューを都度組み合わせて設定しています。
【空中物理探査】
平成24年度より、北海道(武佐岳/弟子屈/大雪山(上川)/大雪山(新得・上士幌)/豊羽/ニセコ/登別/濁川(森・熊石・南茅部)/阿寒)、東北(八幡平/湯沢・栗駒/蔵王高原)、関東(栃木北部)、中部(志賀高原/飯縄山/八ヶ岳/浅間山(長野県側))、北陸(上越)、九州(くじゅう/阿蘇・小国/霧島)の計21地域で調査を実施しました。
【地表調査】
令和2年度より、北海道(大雪山(上川)/大雪山(新得・上士幌)/支笏洞爺/濁川(森・熊石・南茅部)/豊羽)、北陸(上越)、九州(くじゅう)の計9地域で調査を実施しました。
【ボーリング調査】
平成29年度より、北海道(弟子屈/濁川(森・熊石・南茅部)/豊羽/標津)、東北(湯沢・栗駒)の計5地域において計14孔の調査を実施しました。
令和5年度までに地熱開発、研究等を目的として、計169事業者等に調査結果を提供しました。
調査結果は、新規参入エリアの選定時に多くの地熱開発事業者に活用されています。
また、複数の地域で、解析結果を用いて地質構造解析や掘削ターゲットの選定が実施されています。
-
空中重力偏差法探査駐機風景
-
空中重力偏差法探査使用機材
-
空中重力偏差法探査飛行風景
時間領域空中電磁探査(HeliTEM)/空中磁気探査
-
空中電磁探査・磁気探査駐機風景
-
空中電磁探査・磁気探査飛行風景
-
空中電磁探査・磁気探査飛行風景
地表調査は、地表の直接情報及び空中物理探査より深部の情報を取得し、ボーリング調査のターゲットを選定するために実施します。主な手法としては、地表の地層・岩石や温泉水等を対象とする地質(・地化学)調査と、地下の地質構造や比抵抗構造を推定する物理探査(重力法・電磁法等)があります。
空中物理探査・地表調査により抽出したターゲットに対し、当該地域における地表下の地質・構造及び温度状況を確認するため、ボーリング調査を実施しています。掘削深度は確認内容に応じて500m~2,500m程度です。
-
ボーリング調査の様子
-
コア調査
地熱資源ポテンシャル調査報告書の提供方法については、以下をご参照ください。