JOGMECが開発した鉱害防止対策最新技術(JOGMECプロセス)を盛り込んだ2つのガイダンスを公表
~低コスト・低環境負荷を実現する新技術の実用化加速に貢献~
JOGMECは、経済産業省から「休廃止鉱山における坑廃水処理の高度化調査研究事業」を受託し、同事業の成果として「自然回帰型坑廃水浄化システム(パッシブトリートメント)の導入ガイダンス」及び「休廃止鉱山における坑廃水の発生源対策ガイダンス」を作成、公開しました。両ガイダンスは、国内で初めて作成されたものであり、鉱害防止対策を検討する際にガイダンスを活用することにより、最新の技術が反映され、坑廃水処理のコスト削減だけでなく、自然回帰を促し、低環境負荷の処理の実現が期待されます。
日本各地には、かつて金や銀、銅などを含む鉱石を採掘していた鉱山が多数存在し、採掘が終了した現在でも、旧坑道などから有害金属を含む坑廃水が流出する場合があり、適切に処理されていますが、半永久的に続くコストの削減が大きな課題となっています。
コスト削減の実現に向けては、坑廃水の水量削減や水質改善を目的とした「発生源対策」の実施や、坑廃水処理手法の効率化、とりわけ自然の浄化作用を活用する「パッシブトリートメント」の導入が期待されています。そこで、JOGMECは、経済産業省から「休廃止鉱山における坑廃水処理の高度化調査研究事業」を受託し、モデル鉱山におけるパッシブトリートメントの実証試験やシミュレーションモデルを活用した地下水流動解析を実施し、得られた知見や有識者からの意見を取りまとめ、それぞれの技術についてガイダンスを作成し、経済産業省及びJOGMECのHPで公開しました。
なお、パッシブトリートメントの実証試験結果については以下のリリースをご確認ください。
自然回帰型坑廃水浄化システム(パッシブトリートメント)の導入ガイダンス
パッシブトリートメントの概要と各手法について解説し、さらに実際の導入に向けた検討手順や、導入にあたってのコストやリスクの検討、工事やプロセスの立ち上げ方法の留意点などについて解説しています。また、これまでにパッシブトリートメントが導入された現場や実証試験等が行われた現場について、実際の事例としてガイダンス別冊に取りまとめました。
パッシブトリートメントについては、JOGMECでは調査研究(注1)に長年取り組んでおり、もみがら等の農業廃棄物を活用する「JOGMECプロセス」を考案し、これまで実際の休廃止鉱山のサイトで通水量100 リットル/分の実規模相当実証試験を実施し、年間通して安定して重金属の処理が行えることを実証しています。また、「JOGMECプロセス」は、坑廃水だけでなく、トンネル工事などの土木工事の際に発生する排水など重金属を含む汚染水の処理にも応用することが期待されます。
代表的なパッシブトリートメントプロセス(人工湿地型)の概念図
JOGMECは、鉱害防止事業を支援する機関として、今回作成・公開したガイダンスを活用し、坑廃水処理のコスト削減に取り組んでまいります。
発生源対策全般の概要を取りまとめ、発生源対策検討に向けたシミュレーション検討において必要となるデータ等を整理し、さらに統計解析やシミュレーション解析の手順について解説しています。また、モデル鉱山を選定し、実際に検討された具体例についてガイダンス別冊に取りまとめました。
発生源対策の概要図
自然回帰型坑廃水浄化システム(パッシブトリートメント)の導入ガイダンスの構成
1章 |
はじめに |
1.1 本ガイダンス策定の背景
1.2 本ガイダンス策定の目的
1.3 内容と構成 |
2章 |
パッシブトリートメントの概要 |
2.1 パッシブトリートメントの総論
2.2 パッシブトリートメントの主要プロセスの紹介
2.3 パッシブトリートメントの国内事例と海外事例の比較 |
3章 |
パッシブトリートメント適用に向けた現状把握 |
3.1 総論
3.2 水量・水質の把握
3.3 地形(立地)条件の把握
3.4 気象条件の把握
3.5 法規制関係の把握 |
4章 |
パッシブトリートメントに向けた事前調査 |
4.1 パッシブトリートメント導入に向けた事前調査の手順
4.2 導入可能なパッシブトリートメントの候補選定
4.3 室内調査、シミュレーションによる平衡計算
4.4 現地試験
4.5 現状把握及び各種試験を踏まえた導入システムの検討
4.6 リスク評価 |
5章 |
コストに関する検討 |
5.1 海外事例におけるコスト検討の紹介
5.2 コスト試算
5.3 コスト試算のケーススタディ |
6章 |
パッシブトリートメントの実導入 |
6.1 関係者とのコミュニケーション及び合意形成
6.2 設計・施工
6.3 システムの立ち上げ
6.4 維持管理
6.5 想定される不具合と対処方法 |
7章 |
おわりに |
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休廃止鉱山における坑廃水の発生源対策ガイダンスの構成
1章 |
はじめに |
1.1 本ガイダンス策定の背景
1.2 本ガイダンス策定の目的
1.3 適用範囲
1.4 内容と構成 |
2章 |
地下水制御による発生源対策検討 |
2.1 発生源対策の必要性の検討
2.2 発生源対策の進め方
2.3 対策完了後の管理
2.4 発生源対策の種別
2.5 各発生源対策 |
3章 |
最新技術を用いた発生源対策検討に向けた情報整理 |
3.1 最新技術を用いた各検討の手順
3.2 データの種別と概要 |
4章 |
坑廃水の水質将来予測のための統計解析 |
4.1 統計解析手法の概要
4.2 水質将来予測のための統計解析の手順 |
5章 |
鉱山地域における水量シミュレーション |
5.1 水量シミュレーション手法の概要
5.2 .鉱山地域における水量シミュレーションの手順 |
6章 |
鉱山地域における水質連成シミュレーション |
6.1 水質連成シミュレーション手法の概要
6.2 鉱山地域における水質連成シミュレーションの手順 |
7章 |
おわりに |
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この記事に関するお問い合わせ先
金属環境事業部 調査技術課高本、濱井
電話 03-6758-8032
総務部 広報課尾崎
電話 03-6758-8106