技術ソリューション事業 技術開発テーマの決定
~平成25年度技術ソリューション事業公募採択のお知らせ~
JOGMEC(本部:東京都港区、理事長:河野博文)は、本年度より技術ソリューション事業を新たに立ち上げました。その技術開発公募「平成25年度技術ソリューション事業(技術開発・実証プロセス)」において、12件の採択を決定しました。
JOGMECは、本年度より技術ソリューション事業を新たに立ち上げました。本事業を通じて、産油国等が抱える技術的課題に対し、JOGMECとわが国企業等が一体となってその解決策を提案していくことで、わが国と産油国等との関係をさらに強化したいと考えています。
本事業の技術開発公募は、技術ソリューション事業を推進するために必要な技術を幅広い分野から発掘し、その技術を産油国等の抱える技術的課題を解決できるものに育て上げていくことを目的としています。第1回目となる平成25年度公募には、資源開発に関わる企業だけでなく、さまざまな業種・分野から46社もの企業や大学を含む公的研究機関に応募いただきました。そして、厳正なる審査の結果、12件の技術テーマとその技術開発実施者の採択を決定しました。
今後は、採択した案件について、技術開発実施者とともに技術開発を進め、石油・天然ガス開発技術として利用できるものとなるようブラッシュアップすべく取り組んでまいります。
技術ソリューション事業のコンセプト図
採択案件のいくつかについて、技術開発とそのねらいを簡単にご紹介します。
■化粧品原料の技術を石油・天然ガス開発へ応用する試み
技術開発実施者:第一工業製薬(株)
これまで化粧品用に開発されてきた生物分解性ナノサイズ材料を、石油・天然ガス開発の地中掘削の際に利用する増粘性流体(注1)として用いることができるよう技術開発を進めます。石油開発での回収量増加やシェールガス開発での環境問題解決が期待されます。
セルロース粉末をナノサイズ化・ファイバー化し分散させることで高粘度化した液体
(上段:顕微鏡写真、下段:外観)
■自動車業界の技術を石油・天然ガス開発へ応用する試み
技術開発実施者:曙ブレーキ工業(株)
これまで自動車部品として開発されてきた加速度センサ(一定時間ごとにどの程度速度が変化しているか測定するセンサ)を、地下構造を把握するため地震波測定(注2)における音波受信器として用いることができるよう技術開発を進めます。より高精度な地下構造の把握を通じて、資源量の正確な測定や油回収量の向上が期待されます。
加速度センサ
(注1) 増粘性流体とは、化学物質等によって粘度が高められた流体をいい、油の回収量増加に利用します。
(注2) 地震波測定とは、地上から発生させた音波が地下で反射した波を測定・解析することで、地下の構造(断層や水や石油といった流体の存在など)をとらえる方法です。
平成25年度技術ソリューション事業(技術開発・実証プロセス)の採択案件一覧(12件)は、下記の通りです。また、公募結果公示については以下のURLをご覧ください。
- http://www.jogmec.go.jp/news/bid/content/300113139.pdf
■高感度磁気センサ(SQUID)を用いた広域電磁検層システムの開発:要素技術開発
((財)国際超電導産業技術研究センター)
地表での金属探査において実績のある超伝導磁気センサ(Superconducting Quantum
Interference Device:SQUID)を、石油・天然ガス用の坑井へ適用できるように耐圧化、耐温化、小型化等の改良を行い、広域電磁検層システムの実現を目指した技術開発を行います。
■油ガス層モニタリング用MEMSセンサの実用化技術開発
(曙ブレーキ工業(株))
自動車用に開発された加速度センサ(一定時間ごとにどの程度速度が変化しているか測定するセンサ)を、地下の様子を把握するため地震波測定(注2)への適用にむけ技術開発を実施します。
■セルロースナノファイバーを主体とした生物分解性・環境適合性石油開発用ケミカルの開発 (第一工業製薬(株))
化粧品用途に開発された生物分解性ナノサイズ材料を用いた増粘性流体の油の回収量増加およびシェールガス開発へ適用するための技術開発を実施します。
■液体CO2フラクチャリングによるタイトリザーバー増進回収技術の開発 (京都大学)
シェールガス・シェールオイルのような浸透性の低い地層(タイトリザーバー)に存在する油ガスの回収量を増加させるために、流体を圧入し地層に人工的にき裂を作る(フラクチャリング)技術です。液体CO2によって、より効率的にき裂の造成を行う技術の実用化にむけ技術開発を実施します。
■マイクロバブルCO2圧入方式革新的WAG(Water-Alternating-Gas)技術開発 ((財)地球環境産業技術研究機構)
油の回収量を増加させる方法の一つとしてCO2の地下への圧入があります。CO2を直径数十マイクロメートルの微小なバブル状にして圧入することにより、従来のCO2圧入法よりも効率的な油回収法の確立にむけ技術開発を実施します。
■微生物利用EOR(注3)促進技術の開発 (石油資源開発(株))
栄養・活性剤を添加することで、メタンガス生成微生物を活性化し、地下の油の流動性を高めることで油の回収量を増加させる手法の確立にむけ技術開発を実施します。
■太陽熱を利用した油田随伴水再生水(Steam源)による原油増進回収システムの検討 (千代田化工建設(株))
粘度の高い重質な油生産には水蒸気の油層圧入が有効な方法です。中東など太陽日射の豊富な地域の油田において太陽熱を利用して水蒸気を作ることで環境にやさしい油の回収量増加技術が期待されるため、その実現可能性を調査・検討します。
■D-CPOXによる天然ガスからの合成ガス製造 - 反応器設計技術の確立 -
(千代田化工建設(株))
天然ガスを液体燃料または化学品原料として使うために合成ガスに転換する技術です。従来よりも画期的かつ高性能の新触媒を用いた反応システムの実用化にむけ開発を実施します。
■膜型CO2分離回収技術
(千代田化工建設(株))
天然ガスに含有される二酸化炭素を低コストで、しかもコンパクトなシステムで分離回収できると期待されるゼオライト分離膜とそのシステム化の技術開発を実施します。
■自己熱再生を用いた省エネルギーな随伴水処理
(大川原化工機(株))
油生産時に付随する随伴水の水分蒸発及び含有物の乾燥(乾固)工程において必要な熱を再生利用し、省エネルギーで蒸留水、および乾燥物に分離する随伴水処理装置の開発を実施します。
■NORM(注4)可視化技術の開発
(三菱重工業(株))
天体観測用に開発した世界最高レベルのガンマ線カメラを、油ガス田におけるラジウム等の天然放射性物質が濃縮した箇所の可視化に適用する技術開発を実施します。
■合理的NORM(注4)管理システムの開発
(日揮(株))
原子力施設における人工放射性物質用を管理するためのガイドラインや廃棄物処分シナリオなどを、油ガス田におけるラジウム等の天然放射性物質が濃縮した箇所の管理に適用するシステムの開発を実施します。
(注3) EOR ( Enhanced Oil Recovery):油の回収量を高めること。
(注4) NORM (Naturally Occurring Radioactive Materials):天然資源にもともと存在する放射性物質。
この記事に関するお問い合わせ先
技術ソリューション事業グループ企画チーム末廣
電話 03-6758-8671
総務部広報課西川
電話 03-6758-8106