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カナダにおいてSCWC技術の小規模実証試験始動!
~技術ソリューション事業「超臨界水を利用した超重質油部分改質技術の小規模実証試験」~

2015年5月8日

 JOGMEC(本部:東京都港区、理事長:河野博文)は、日揮株式会社(本社:神奈川県横浜市、代表取締役会長:佐藤 雅之氏)とともに、技術ソリューション事業フェーズ2案件「超臨界水を利用した超重質油部分改質技術の小規模実証試験」の研究開発を行っています。この度、日量5バーレル(約800リットル)のパイロットプラントをカナダ・アルバータ州の同国政府系研究機関の敷地内に設置し、実証試験を開始しました。今後は、引き続きデータ取得のための試験を行い、次フェーズの海外実証に向けて動き出す予定です。
 SCWC(Supercritical Water Cracking)技術とは、粘度が極めて高くかつ比重が重いために、パイプラインでの輸送が困難なオイルサンドや超重質油(以下「超重質油等」)を、生産現場において水のみを用いて部分的に改質することにより、粘度や比重を低減させ輸送を容易にする技術です。環境負荷が小さく、単純かつ経済的に超重質油等の開発・生産を促進しうる重要な技術として期待されています。
 この度、日量5バーレル(約800リットル)のパイロットプラントを用いて3月3日に実証試験を開始し、現在までにラボ・ベンチスケール(日量0.15バーレル:約24リットル)で得た装置パフォーマンスと同等の結果を得たことで、SCWC技術の装置スケールアップに成功しています。
 今後は当該プラントを用いた運転条件や装置構成の最適化を行い、長期運転試験を目指します。また、さらなるスケールアップに向けたエンジニアリングデータの取得を計画しています。
 また、実証試験と並行して、カナダ等の超重質油開発企業に対してプロモーションを行い、次フェーズである日量500~2000バーレル(約8万~32万リットル)の小型実証装置の設計を開始し、将来は日量3万バーレル(約480万リットル)の大型商業化に向けさらなるスケールアップを図っていきます。

共同研究概要

  1. 研究名:超臨界水を利用した超重質油部分改質技術の小規模実証試験
    「平成26-27年度技術ソリューション事業(技術開発プロセス)(フェーズ2技術開発)」として採択(平成26年10月7日)
  2. 実施期間:契約締結日から平成27年度末
  3. 予算概要:約10億円(機構負担50%)
  4. 実施内容:スケールアップに必要なデータの取得、長期運転試験を実施
  5. 実施場所:カナダ・アルバータ州 デボン市
  6. 装置能力:超重質油処理能力 日量5バーレル(約800リットル)

装置概観

経緯

 JOGMECは、昨年度より技術ソリューション事業を実施しています。本事業を通じて、石油・天然ガス資源を自国内に有する国営石油・ガス会社および国際石油・ガス会社等(以下「産油国等」という。)が抱える技術的課題 (ニーズ)に対し、JOGMECとわが国企業等が一体となって、その解決策(ソリューション)を提案していくことで、わが国と産油国等との関係をさらに強化したいと考えています。
 本技術開発公募は、超重質油田開発で課題となっている超重質油の経済的な輸送方法の開発に関するニーズに対して、油田近傍で適用できる超臨界水を利用した超重質油改質技術を保有し、かつJOGMECと共に実証試験を実施できるわが国企業等として、日揮株式会社からの提案を採択し、平成26年9月に事業を開始しました。

超臨界水を利用した超重質油部分改質技術について

 SCWC技術とは、超臨界水を用いて超重質油等を部分的に改質し、合成原油(Synthetic Crude Oil、以下「SCO」)を製造する技術です。
 水は、220気圧以上/摂氏374度以上で超臨界状態になります。この超臨界状態の水は、その熱により超重質油等を分解し、その高い親油性のため分解後の軽質分を溶解する能力を備えています。この能力を利用することで、粘度が高く比重の大きい超重質油等を、パイプライン輸送可能な粘度および比重のSCOに改質することができます。

SCWC技術の適用可能性・優位性

 超重質油はカナダやベネズエラ、コロンビア等に存在しており、重質油も含めると可採埋蔵量は在来型の軽・中質原油と同程度と言われています。特にカナダには、オイルサンドと呼ばれる状態で1,680億バーレルの可採埋蔵量があり、そのうち20%が地表付近に存在していますが、地下に存在する残りの80%はSteam Assisted Gravity Drainage(以下「SAGD」*1)法などの水蒸気を圧入する方法により一部が生産されています。
 生産後の超重質油をパイプラインで輸送するために、超重質油をコンデンセート*2やナフサなどの軽質油で希釈する技術(ディルビット(Dilbit)法)と、水素化分解やコーカー*3などで改質する技術(フルアップグレーダー(Full Upgrader)法)が一般的に用いられています。ディルビット法は、軽質油や希釈油用のパイプラインが必要であること、フルアップグレーダー法は化学反応を生じさせる触媒や水素が必要であること、コークスや硫黄など大量の固体副生物による環境への影響、プラントが大規模かつ操作が複雑であること等の問題点が挙げられています。
 一方、SCWC技術は、超重質油等を軽質油で希釈する必要がなく、触媒・水素などを用いず水のみを用いて改質し、フルアップグレーダー法に比べ小規模でシンプルな設備でパイプライン輸送可能なSCOを生成できます。この利点を生かすことで、超重質油等の製油所への輸送コストを低減できる可能性があります。
 また、SCWCプロセスから副生するピッチ*4を北米で需要が拡大している道路用アスファルトを含め高付加価値な製品として利用することにより、プロセスからの固体副生成物を最小化することも可能となります。

*1 SAGD:地層内に2つの坑井を上下に配置し、上部の坑井に水蒸気を圧入して、地層内の超重質油の流動性を増し、重力により下部の坑井内に流入させて回収する方法。
*2 コンデンセート:凝縮物という意味であり、地下では気体で存在しているが、地上では凝縮されて液体(油)になる成分をコンデンセートという。一般の原油より軽質でナフサに近い性状を有する。
*3 コーカー(Coker):重質油等の残渣成分を熱分解反応により軽質成分に転換する装置。
*4 ピッチ:重質油の熱分解で副生する残渣油。

この記事に関するお問い合わせ先

技術ソリューション事業グループ 企画チーム末廣

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総務部広報課伊藤

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