JOGMEC 独立行政法人 エネルギー・金属鉱物資源機構

ホーム >  ニュースリリース >  2023年度 >  米国アラスカ州でメタンハイドレート層からのガス産出試験を開始~日本でのメタンハイドレート商業化に不可欠な長期生産挙動データ取得へ~

米国アラスカ州でメタンハイドレート層からのガス産出試験を開始
~日本でのメタンハイドレート商業化に不可欠な長期生産挙動データ取得へ~

2023年10月30日

 JOGMECは、メタンハイドレートの商業化に不可欠な長期生産挙動のデータを得るために、米国エネルギー省傘下の国立エネルギー技術研究所と協働でアラスカ州ノーススロープのプルドーベイ鉱区において進めていたメタンハイドレートの長期陸上産出試験の準備を完了させ、2023年10月24日(現地時間)にガスの生産を開始しました。今後は、長期生産挙動データの取得を目指すとともに、技術的課題の解決策の検証等を行う計画です。なお、メタンハイドレート層から生産されたガスは産出試験施設で自家消費し、エネルギー源として活用する計画であり、これは世界で初めての取り組みとなります。

試験設備全景写真(2023年8月撮影)

 JOGMECは、米国エネルギー省(U.S. Department of Energy : DOE)傘下の国立エネルギー技術研究所(National Energy Technology Laboratory : NETL)と協働で、アラスカ州においてメタンハイドレートの長期陸上産出試験の実現に向けて準備を進めてまいりました。2023年2月28日(現地時間)に産出試験で使用する全坑井の掘削作業を完了した後、ガス生産に向けた地上試験設備設置および試運転等を経て、9月19日(現地時間)に産出試験を開始し、10月24日(現地時間)にガス生産を確認しました。

 日本周辺海域にも存在が確認されているメタンハイドレートの商業化を目指す上では、長期の生産挙動を見極めることが不可欠であるため、今般の試験は、長期生産挙動データの取得、技術的課題の解決策の検証等を目的に、海洋に比べて相対的に試験の制御が容易でインフラの整っている陸上で産出試験を実施するものです。

 本産出試験では生産井2坑(PTW-1, PTW-2 : 図1参照)を準備しており、今般PTW-1のB層(地表面から深度約900メートル)の減圧を開始し、減圧が一定以上進んだ後、B層からのガス生産が確認されました。今後は、本坑井で長期の生産を続け、各坑井(GDW, PTW-1, PTW-2, STW)では坑内に設置した温度や圧力等のセンサーにて地層の変化を観測してまいります。なお、今後何らかの理由でPTW-1での産出試験が難しくなった場合は、PTW-2のB層またはD層(地表面から深度約750メートル)にて産出試験を継続する計画です。なお、生産されたガスは産出試験施設で自家消費し、エネルギー源として活用する計画であり、世界で初めての取り組みです。

図1 長期陸上産出試験に使用する4坑井(イメージ図) (赤点線枠が今般ガス生産を開始した生産井PTW-1のB層)

 本プロジェクトは、アラスカ州天然資源局(State of Alaska Department of Natural Resources : DNR)およびPBU鉱区権者(Hilcorp North Slope社、ExxonMobil Alaska社、 ConocoPhillips Alaska社、 Chevron USA社)の協力のもと、DOE/NETLとJOGMEC間で国際的な共同研究体制を構築して実施されています。

 DOE/NETLおよびJOGMECは、両者の間で運営委員会(Steering Committee : SC)を設置し、プロジェクトの方針などを協議・合意しながらプロジェクトを遂行しています。2023年6月には、アンカレジでSCミーティングを実施し、その翌日には日米双方のSCメンバー他プロジェクト関係者が、アンカレジから北へ1,000キロメートル以上離れたノーススロープにある試験現場を訪問、試験開始に向けた準備状況等を確認しました。

SCメンバー他プロジェクト関係者による試験現場訪問時の集合写真(敬称略)

(右より、Gabriela Intihar (Senior Program Manager), Ryan Peay (Deputy Assistant Secretary), Vanessa Nunez-Lopez (Director, Advanced Remediation Technologies Division)(以上DOE), Tim Collett (Research Scientist, USGS), 山本副本部長(エネルギー事業本部), 松澤グループリーダー(メタンハイドレート研究開発グループ), 沖中・中塚(同グループ)(以上JOGMEC), Sukru Merey (Scientist, USGS)

背景

 メタンハイドレートは、メタンガスと水が低温・高圧の特定の条件下で氷状の固体として形成される物質で、主に極地(永久凍土地帯)の地層中や大水深エリアの海底面下の比較的浅い層などに存在しています。日本周辺海域にも深海の海底面下に広くメタンハイドレートの存在が確認されており、過去2回、渥美半島から志摩半島の沖合(第二渥美海丘)において海洋産出試験を実施していますが、数週間程度の連続生産を実現したものの、メタンハイドレートの分解範囲は坑井周辺に限られ、ガス生産挙動の長期的な傾向は確認できておりません。
 将来の商業化に向けては、長期の生産挙動を見極めることが不可欠であるため、海洋に比べて相対的に試験の制御が容易でインフラの整っているアラスカ州陸上での長期産出試験を計画しました。同試験では、長期生産挙動データの取得に加えて、技術的課題の解決策の検証、長期生産に伴う課題の抽出等を目的としています。

 なお、本プロジェクトは経済産業省資源エネルギー庁からの委託事業として実施されています。

参考

この記事に関するお問い合わせ先

メタンハイドレート研究開発グループ青木、グラサーハイマン

電話 043-276-9536

E-mail mh21info@jogmec.go.jp

総務部 広報課柿平

電話 03-6758-8106

独立行政法人 エネルギー・金属鉱物資源機構
(法人番号 4010405009573)

〒105-0001 東京都港区虎ノ門2-10-1 虎ノ門ツインビルディング 16階(JOGMEC 総合受付)
電話(代表)03-6758-8000

Copyright© Japan Organization for Metals and Energy Security All Rights Reserved.