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伊豆・小笠原ベヨネース海丘で海底熱水鉱床発見
-調査船第2白嶺丸により含金銀-銅鉛亜鉛の鉱化帯を発見-

2004年3月30日

 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(理事長:大澤秀次郎)は、経済産業省の委託を受け、平成15年4∼5月に伊豆・小笠原海域で深海底鉱物資源調査を実施し、ベヨネース海丘において海底熱水鉱床(白嶺鉱床(仮称))を発見しました。
 この鉱床は八丈島南方約120kmのベヨネース海丘、カルデラ内南東壁の水深700∼800m地点に位置し、南北600m、東西500mにわたってチムニーが密集しています。8カ所でサンプリングを実施し、チムニーを含む約1.8トンの多金属硫化物試料を採取しました。試料は、金24.1g/t、銀1,275g/t、銅1.14%、鉛5.57%、亜鉛35.03%などを含んでいます。
 伊豆・小笠原海域の明神海丘では大規模かつ活動的に成長しているサンライズ鉱床(規模:500m×400m、海底火山・熱水活動に関連した黒鉱タイプの多金属硫化物鉱床)の存在が知られており、今回発見した鉱床はこれに匹敵するものです。この調査結果は、地質学、鉱床学をはじめとする地球科学の多方面の研究にとって重要なデータを提供するものと考えられます。

1. 成果の概要

位置図

 本調査は、伊豆・小笠原海域の深海底に賦存する金属鉱物資源の分布状況の確認等を目的に、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構所有の調査船第2白嶺丸(2,127t)を用いて、平成12年度から実施しています。
 ベヨネース海丘の海底熱水鉱床は、平成14年度に実施した海底地形調査、磁気探査などの結果に基づき有望海域を抽出し、今年度、水中テレビカメラを用いた海底観察(16測線延べ21.8km)によって発見したものです。
 鉱化帯は、赤色、黄色の変色域が顕著であり、高さ3∼10mのチムニーが観察されています。鉱化帯の8カ所でパワーグラブによるサンプリングを、また、15カ所でコアラーやドレッジによるサンプリングを実施し、多金属硫化物(閃亜鉛鉱、方鉛鉱、黄銅鉱、黄鉄鉱など)を含む多量の試料を採取しました。

 得られた試料の主な分析結果は次のとおりです。


サンプル番 号 分析重量
g

g/t

g/t

%

%
亜鉛
%
サンプル性状
FPG-01-01 320 24.10 1,275 1.14 5.57 35.03 チムニー底部
FPG-02-01 360 1.67 690 0.45 4.67 17.00 チムニー底部
FPG-05-01 620 32.10 434 1.61 0.96 59.97 チムニー 表層部
FPG-05-02 180 0.90 1,330 1.16 7.64 42.23 チムニー内部
FPG-06-02 100 3.13 541 0.08 0.23 0.99 チムニー内部

2. 成果の意義

 本年度の調査では、鉱床の厚さは未確認であり、資源量の把握には至っていませんが、平面的規模は東北地方の黒鉱鉱床に匹敵し、分析品位も操業時の黒鉱鉱山の稼行品位より高い値です。今回の成果は、伊豆・小笠原海域では明神海丘、水曜海山に次ぐ第3の鉱床の発見であり、本海域の海底熱水鉱床賦存のポテンシャルが極めて高いことが一層明確となりました。また、今後の調査、解析により海底における熱水活動や多金属硫化物鉱床形成のメカニズムを明らかにする上で重要なデータとなることが期待されます。

以上


本件に係る有識者コメント
 産業技術総合研究所
 海洋資源環境研究部門 グループリーダー 飯笹 幸吉

 今回の発見の意義は、第一に、伊豆・小笠原弧の海底地形・地質構造と東北地方の黒鉱型鉱床が存在する場との類似性および同島弧における熱水硫化物に関する系統的な調査・研究から得られた探査手法の有用性を証明したこと、第二には、このような鉱床が存在する潜在的な海域がさらに広がったことなどが挙げられる。
 黒鉱型鉱床の宝庫といえる証拠がそろいつつある同島弧の海底は、まさに我々に最も近い鉱物資源獲得のフロンティアと言えるだろう。

 (連絡先)電話 029-861-3824 e-mail: k.iizasa@aist.go.jp
(参考)

〔海底熱水鉱床〕
 海底面から噴出する熱水から銅・鉛・亜鉛・鉄等の金属が沈殿し、海底面に集積したものをいう。含まれる金属は、海底面下の溶岩や堆積岩に浸透した海水が、海底下のマグマ等の熱源によって高温となり熱水として循環する過程で岩石から溶かし出されたものとされている。 伊豆・小笠原弧では、これまでに明神海丘、水曜海山の2箇所で顕著な海底熱水鉱床が知られている。

〔カルデラ〕
 輪郭が円形またはそれに近い火山性の凹地で、火口(噴火口:直径1∼2km)よりも大きいもの。

〔チムニー〕
 海底の熱水活動(熱水噴煙)によって供給された金属の硫化物、珪酸塩・硫酸塩等の沈殿が熱水噴出孔の周囲につくった煙突(柱塊)状の集合体。 〔黒鉱鉱床〕 海底火山活動に伴う熱水活動で形成された多金属塊状硫化物鉱床。銅、鉛、亜鉛のほか金、銀などの有用金属を豊富に含む。明治40年代から平成6年まで、主に東北北部で盛んに採掘された。
 "Kuroko"は世界共通の学術用語として通用している。
以上
  • チムニーの揚収写真1:
    FPG(ファインダーテレビ付パワーグラフ)で採取したチムニー(重量:360kg)

  • チムニーの揚収写真2(同心円の構造が観察される):
    FPG(ファインダーテレビ付パワーグラフ)で採取したチムニー(重量:1.3t)

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