JOGMEC(本部:東京都港区、理事長:河野博文)は、渥美半島~志摩半島沖(第二渥美海丘)おいて、第1回メタンハイドレート海洋産出試験の準備作業を進めておりましたが、3月12日に減圧法によるガス生産実験を開始し、メタンハイドレート層からの分解ガスとみられるメタンガスの産出を確認しました。
今後、ガス生産実験を継続するとともに、データの分析を進めてまいります。
なお、可燃性ガスの生産実験ですので、安全のため現場海域に接近しての取材等はお控えいただくようお願いします。
メタンハイドレート(注1)は将来の天然ガス資源として注目されており、2001年度から2008年度まで実施された「我が国におけるメタンハイドレート開発計画」(注2)のフェーズ1では、東部南海トラフ海域(静岡県から和歌山県の沖合にかけた海域)をモデル海域として地震探査・試掘などの調査を実施し、同海域において、相当量のメタンハイドレートの賦存を確認しています(注3)。
2009年度から開始された同計画のフェーズ2では、メタンハイドレートを分解させ天然ガスとして取り出す技術の開発を目指しており、世界初の海洋における実験となります(注4)。
第1回メタンハイドレート海洋産出試験は2年にわたり、昨年2月から3月にかけて、事前掘削作業として生産井やモニタリング井の坑井掘削を行い、6月から7月には、メタンハイドレート層から、圧力を保持したコアサンプル(地質試料)を含むコアの採取作業を行いました。今回の作業では、掘削、実験機器設置等の準備作業を経て、メタンハイドレート分解によるガス生産実験を実施中です。
- 作業予定期間:2012年(平成24年)2月~2013年(平成25年)8月頃
(事前掘削作業、ガス生産実験、廃坑作業を含む)
- 作業地点:渥美半島~志摩半島沖(第二渥美海丘)
- 事業主:経済産業省
- 関係者:JOGMEC(実施主体)、JAPEX(オペレータ)
- 使用船舶:地球深部探査船「ちきゅう」
- これまでの経緯:
2012年2月15日 |
事前掘削作業開始 |
2012年3月26日 |
事前掘削作業を終え、清水港帰港 |
2012年6月29日~7月4日 |
圧力コア採取作業 |
2013年1月28日 |
試験海域にてガス生産実験のための準備作業を開始 |
3月12日 |
ガス生産実験を開始 |
同日 |
メタンハイドレート層からのガスの産出を確認 |
- スケジュール(今後の予定):
3月末頃まで |
ガス生産実験終了・生産実験設備撤収 |
2013年8月頃 |
モニタリング機器等の周辺設備を撤収 |
第1回海洋産出試験は、商業生産ではなく、調査段階の実験作業ですが、成功すれば減圧法による海底面下のメタンハイドレートの生産状況や周辺環境への影響の把握など、将来のメタンハイドレートの実用化に向けた貴重なデータが得られることから、メタンハイドレートの資源開発研究にとって大きな前進となることが期待されます。試験の成果を活用して、今後予定されている第2回海洋産出試験の計画や、将来の商業生産に向けた技術基盤の整備(フェーズ3:2016~2018年度を予定)を進めていく予定です。
今回の実験は、可燃性ガスの生産実験ですので、安全のため現場海域に接近しての取材等はお控えいただくようお願いします。
生産されたガスは、下写真(1)バーナー部分にて燃焼処理を行います。また、ガスの生産量や風向きによっては、燃焼処理を行えない場合もあります(写真(2)放散塔より無色透明の可燃性ガスを一時的に放出する場合があります)。このように可燃性ガスを扱う実験ですので、安全確保の観点から、取材等のために接近する場合は、「ちきゅう」から2km(約1海里)以上距離をおいていただくようにお願いします。
また、現場海域に接近する場合には、船からの連絡が受信できるように、航空無線周波数(129.6MHz)、船舶無線VHF(16ch)を常時聴取いただき、必ず本船の指示に従うようお願いいたします。(接近する航空機・船舶があった場合、安全確保のためガス生産実験を中止せざるを得ない場合もあります)
フレア(燃焼)している映像・画像が、現場海域にて撮影されましたら、本ウェブサイトにて公開していく予定です。
(出典:JOGMEC)
- 注1: メタンハイドレートとは、低温高圧の条件下でメタン分子と水分子が結合して生成する氷状の物質です。分解して発生するメタンガスを、資源として利用することが期待されています。永久凍土地域の地下や、水深500m以深の海域の海底面下に存在します。
- 注2: 経済産業省が2001年に発表。フェーズ2ではJOGMECと独立行政法人産業技術総合研究所によるメタンハイドレート資源開発研究コンソーシアム(MH21、プロジェクトリーダー:東京大学増田昌敬准教授)が同開発計画を実施中。
- 注3: 東部南海トラフにおける調査対象海域では、約40tcf(約1.1兆立方m)のメタンガスに相当するメタンハイドレートの賦存を確認しています。これは、日本のLNG輸入量(2011年)の約11年分に相当します。このうち、メタンハイドレート濃集帯(ある程度の規模のメタンハイドレートがまとまって濃集しており、将来の資源開発対象と期待される箇所)は全体の約6分の1の面積であり、そこに全体の半分の約20tcfのメタンガスに相当するメタンハイドレートが賦存しています。ただし、資源として利用できる量は、実際にどの程度の量が回収できるかによります。
- 注4: 日本は、世界に先駆けて、カナダの陸上で、国際共同研究として過去2回に亘り、メタンハイドレート陸上産出試験を実施しています。2001年度に行った第1回の試験では、温度を上昇させてメタンハイドレートを分解する加温法(温水循環法)を試み、2007~2008年度の第2回試験では、圧力を低下させてメタンハイドレートを分解する減圧法を試みました。その結果、減圧法の方が、より効率的にメタンハイドレートを分解し、メタンガスとして産出できることを確認したことから、今回の海洋産出試験でも、減圧法による実験を計画しています。
この記事に関するお問い合わせ先
技術部メタンハイドレート開発課川本・長田
電話 043-276-9538
総務部広報課植松
電話 03-6758-8106