原油は、生産されると生産施設内の原油タンクに一時貯蔵した後、原油タンカーなどで順次需要地(日本等)に輸送されます。原油タンクに貯蔵している間に原油に含まれる成分のうち油分、アスファルテン、ワックス、水、砂、鉄錆などから成る沈殿物がタンクの底部に堆積する場合があります。この沈殿物を原油スラッジと呼びます。原油スラッジが原油タンク内に堆積すると、貯油量が減少するのみならず水分などによる底盤の腐食の問題が生じるため、原油スラッジを定期的に排出する必要があります。
原油スラッジの排出には、洗浄機から原油を噴射して原油スラッジを洗い流すCOW(原油共洗い)工法が用いられます。COWを用いて排出された原油スラッジは、産業廃棄物として廃棄処分されていますが、処分費用が甚大であることに加えて、原油スラッジには有用な油分が含まれたまま処分されていることが課題となっています。そこで、排出された原油スラッジから遠心分離技術により油分を回収し、その回収油を原油と混合することによって再原油化するための技術開発を、コスモ石油株式会社及びアブダビ石油株式会社と共同で2016年より開始しました。
2016年から2017年には、ラボ実験、小型遠心分離機(3立方メートル/時の処理能力)を用いたパイロット試験等を実施し、原油スラッジを50%以上削減し、回収油分を販売油として再原油化する原油スラッジ削減(SVR:Sludge Volume Reduction)技術の見通しを得ました。2018年からは、海外フィールドでの商業規模(10立方メートル/時の処理能力の遠心分離機2台)の実証試験に向けて実証試験装置の設計・製作に着手し、2022年に実証試験を実施した結果、原油スラッジを57%削減し、再原油の性状は原油と同等で再スラッジ化しないという成果が得られました。今後は技術改良を実施するとともに商業展開を検討してまいります。