二酸化炭素排出抑制に貢献し、石油回収率を高める「炭酸ガス(CO2)圧入攻法」
原油の飛躍的増産と環境保護の一石二鳥の「CO2圧入によるEOR」
油田の油は、鍾乳洞の地下水のように溜まっているものではなく、岩石の中のミクロン単位のごく小さな孔に溜まっています。自然のエネルギーを利用して、石油を回収する一次回収では石油は5~25%程度しか回収されません。
この小さな孔に溜まっている油を井戸に向けて押し流すために周りから水を圧入する等して生産を増やしますが、二次回収と呼ばれるこういった手法を行っても地下にある油のうち回収できる量は30~40%程度にしかなりません。
これに対して、CO2圧入攻法に代表される増進回収技術(EOR=Enhanced Oil Recovery)はより大きな効果と高い回収率が期待されます。JOGMECでは長年増進回収法にかかわる研究を進めてきましたが、近年進めている実験や研究では油層(貯留岩層)内に炭酸ガス等を圧入することで、地下の石油の性状を変化させて原油回収率が大幅に改善されることが確認されています。
また米国などで一般的には、圧入する炭酸ガスは、自然の炭酸ガス田から採取して使いますが、JOGMECは日本企業が高い技術を有する発電所等の排気ガスからの二酸化炭素分離技術に着目し、これを圧入ガスとして使用する方法の検討を行っています。中東や東南アジア等、炭酸ガス田が多くない地域では、製油所、発電所等から出る排気ガス中の二酸化炭素を取り出して使う方法が有効であると考えられ、また地球環境にもやさしい、一石二鳥の方法だと考えています。
CO2圧入によるEORは炭酸ガスを油層内に圧入することから、炭酸ガスの大気中への排出抑制、ひいては地球温暖化防止にも寄与する技術として注目されています。
CO2EORの概念図
CO2EOR適用の例 (CO2濃度分布)
二酸化炭素分離回収技術の概念図