鉱物組成や岩石の内部構造は、貯留岩や根源岩を始めとする“岩石”の性状を評価する上で基本的な情報です。現在、JOGMECでは2種類の走査型電子顕微鏡(SEM-EDS、FIB-SEM)及びSEM-EDSに電子顕微鏡レベルで岩石表面の鉱物マッピングが行えるQEMSCAN(Quantitative Evaluation of Minerals by SCANning electron microscopy)機能を付加した鉱物評価システムを導入しています。これらにより岩石を構成する鉱物組成(量比)や鉱物分布、微細孔隙構造の情報を得ることができます。また、孔隙径分布(孔隙の大きさ毎の頻度)も岩石の性状評価に重要な要素であり、NMRによる孔隙径分布の測定も実施しています。
今後、石油・ガス開発のみならず、CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)分野でのCO2と鉱物との反応評価(炭酸塩鉱物の形成等)やCO2流体の挙動評価(微細構造内での流動シミュレーション等)において、詳細かつ正確な岩相評価への利用が期待されます。
FIB-SEM(集束イオンビーム搭載走査型電子顕微鏡
FIB-SEMとは、集束イオンビーム(FIB)を搭載した走査型電子顕微鏡(SEM)です。FIBにより試料の表面を削りながらSEM画像(2次元画像)を連続で撮影することができます。得られた2次元画像を再構築することで、3次元画像を得ることも可能です。
図1.FIB-SEM走査型電子顕微鏡
SEM-EDS with QEMSCAN(鉱物定量評価システム内蔵エネルギー分散型X線分光装置搭載走査型電子顕微鏡)
当該機器は一般的なSEM-EDS分析装置にQEMSCAN(鉱物定量評価システム)を付加したものです。QEMSCANはSEM画像を観察すると共に、エネルギー分散型X線分光装置(EDS)によって試料表面の化学組成を求めることができます。SEM画像取得の際に検出した反射電子により、物質の密度情報を反映することで、得られた化学組成情報と組み合わせて鉱物を自動で特定し、試料表面の鉱物分布を画像(鉱物マッピング分析)として得ることができます。
図2.EDS搭載走査型電子顕微鏡(QEMSCAN)
NMR現象を利用して岩石の貯留層特性を評価します。具体的には、水素原子に一定方向の磁場を与えることで発生する共鳴シグナルの減衰時間(T2)を測定しています。孔隙径が小さいほどその減衰が早いことから、T2分布を見ることで孔隙率、浸透率、 Clay Bound Water、孔隙径分布を推定することができます。
図3.NMRコア分析装置