地熱資源ポテンシャル調査の流れ 地熱を資源へと変えるために
地熱発電を行うためには、次の3要素が不可欠です。
- 地下の「熱」(=マグマ等の熱源)
- 熱を地上に運ぶための「水」(=地下水・蒸気)
- 水を地下で溜めている「器」(=地熱貯留層、断層などの割れ目と粘土などのキャップロックから構成される)
これらの徴候を空中・地上・地下から探り、地熱資源開発の可能性を見出すために行うのが、地熱資源ポテンシャル調査です。
JOGMECでは、民間事業者が地熱資源開発に参入する前段階において、全国各地で基礎的な地熱資源ポテンシャル調査(注)を実施しています。
(注)調査の結果は順次公表しており、これまで空中物理探査およびボーリング調査の報告書・測定データを延べ300程度の開発事業者などに提供し、その後の地熱探査・開発などに活用されています。(2022年12月現在)
「器」がありそうな場所を広範囲から抽出
地熱資源のポテンシャルが見込まれながら、十分な調査が行われていない地域を対象に、広域の地質構造を把握して有望エリアを絞り込むために実施する調査です。飛行機やヘリコプターなどに観測機器を搭載し、地下に「器」がありそうな場所を広範囲から抽出します。地下の岩石密度分布を測定する「空中重力偏差法探査」や、地下500m程度まで岩石の電気抵抗の分布を測定する「時間領域空中電磁探査」など複数の調査手法が用いられます。
有望エリアを調査員が歩き地熱資源の徴候を探る
空中物理探査などで特定した有望なエリアに調査員が出向き、温泉や蒸気などの「熱」と「水」の徴候や、粘土などの熱水変質帯、断層などの分布を調べ、地下に「器」がありそうな場所を空中物理探査よりも詳しく推定します。また、岩石試料を採取・分析して、調査地域の地質や年代などの成り立ちを明らかにします。これらの情報を基に、さらに調査を進めるために重要となる、地下の様子を推定した地熱構造モデルを作成します。
露頭を観察し、ハンマーで叩いて岩石を調べ、周辺の地質構造やその成り立ちを推定する
現地で得た試料を化学的に分析・解析
現地で採取した岩石、温泉水、噴気ガス、土壌、土壌ガスなどの試料を化学的に分析・解析する調査です。地下の「熱」「水」の発生のメカニズムや、「器」の温度などを推定します。これらの情報を地質調査などで得られた知見と統合して、地下で「水」がどのように存在しているかを考察した地熱流体流動モデルを作成します。これらの調査によって、ボーリング調査を実施するべき場所が絞り込まれていきます。
現地で簡易的にpH や温度などの水質を分析し、めぼしい試料は持ち帰ってさらに詳しく分析する
地表から地下の情報を探る(物理探査)1 〈電磁探査(MT法)〉
地面の電流と磁場を観測し地質や粘土層(器)を推定
地下の岩石物性の分布を地表または空中で測定し、地下構造を推定する手法を物理探査といいます。地熱ポテンシャル調査における物理探査では、重力探査や電磁探査を実施するケースが一般的で、電磁探査のうち最もよく用いられる手法が地磁気地電流探査(MT、Magneto-telluric法)です。MT法による調査では、地面にわずかに流れる自然の電流と磁場を観測することにより、地下の電気が流れやすい場所、すなわち「器」の可能性が高い場所を推定します。
電極とコイルを埋め、測定器で観測。この作業を1つのプロジェクトで延べ数十カ所で行う
地表から地下の情報を探る(物理探査)2 〈重力探査〉
地上の重力を測定して地下の地質構造を推定
重力には、地下に密度の大きな岩石が存在すると大きくなり、逆に密度の小さい岩石の上では小さくなるという特徴があります。密度の異なる岩石が接している場所は、「水」の通り道、すなわち「器」となり得る断層である可能性があります。このような場所を重力のギャップとして検出する手法が重力探査です。地形に現れていない古い火山のカルデラ構造などもきれいに抽出することができます。
山に重力測定機器を持ち込み、地形の影響を考慮してわずかな重力の違いを正確に測定する
地下の岩石を採取して「熱」「水」「器」の状況を確認
地質調査や物理探査で絞り込んだ有望地において、ボーリングマシン(試錐機)と呼ばれる掘削機を使用して地下の岩石を採取。各種調査で推定した地下の「熱」「水」「器」の状況を直接確認します。ボーリングの深度は確認内容に応じて変わり、主に地下の温度確認を目的に浅部ボーリング(深度500~1,000m程度)、熱水・蒸気確認を目的に深部ボーリング(深度2,000m程度)を行います。調査後のボーリング孔は原則埋め戻します。