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世界に誇る地熱ポテンシャルを最大限に活用するために。
~「カーボンリサイクルCO2地熱発電技術」プロジェクト~

 国産エネルギー資源が乏しいといわれる日本。しかし、この国には世界有数のポテンシャルを秘めた資源が存在します。実は、日本は世界第3位の地熱資源量を誇る、世界でも指折りの地熱大国なのです。その一方、地熱発電設備容量でみると日本は世界第10位にとどまり、そのポテンシャルが十分に発揮されているとはいえません。
 こうした状況を変えていくため、JOGMECでは地熱発電のさらなる普及に向けた「カーボンリサイクルCO2地熱発電技術」プロジェクトを推進しています。

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タイトル1 地熱の特徴

世界トップクラスの資源量

 日本は世界有数の地熱大国です。各国の地熱資源量をみると、世界最大規模の地熱地帯をもつアメリカが第1位(3,000万kW)、多くの火山島からなるインドネシアが第2位(2,779万kW)、次いで日本は世界第3位(2,347万kW)に位置しています。豊富な地熱資源に恵まれた日本だけに、さらなる地熱開発が期待されています。
世界各国の主な地熱資源

CO2排出量が少なくクリーン

 火力発電の場合、石油や石炭、天然ガス等を燃やし、燃焼ガスや水を沸騰させてつくった蒸気でタービンを回して発電しますが、地熱発電では自然が生み出す蒸気や熱水を使って発電します。そのためCO2の排出量は火力発電より大幅に少なく、また太陽光発電や風力発電よりも少ないため、地球にやさしい発電方法といえます。
電源別の二酸化炭素排出量

天候などに左右されず安定発電が可能

 風力発電や太陽光発電といった他の自然エネルギーを利用した発電方法は、発電できる時間帯が限られ、天候や季節によって発電量が大きく変動するという特性があります。それに比べて地熱発電は一年を通じて一定量を発電できるという優れた安定性を持っているため、設備利用率も83%と極めて高い水準にあり、ベースロード電源と位置づけられています。
設備利用率の比較

持続的に利用できる国産エネルギー資源

 バイオマスや風力、太陽光、水力などと同様、地熱資源は持続可能な再生可能エネルギーであり、石油や石炭などの化石燃料のように、将来的な枯渇を心配する必要はありません。また、日本国内の地下の熱を利用する地熱発電は、海外からの輸入に頼ることがないため、エネルギー自給率の向上にもつながります。

地域振興にも貢献

 地熱資源の活用方法は、発電だけではありません。地熱発電所が稼働している地域では、発電後の予熱や熱水が農業や観光振興などに利用されているケースも多く、地域振興に貢献しています。

地熱資源及び地熱発電についてより詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。 地熱資源による地域振興についてより詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
タイトル3 地熱発電のしくみ

地熱発電には地下の「熱」「水」「器」が不可欠

 火山国である日本には110もの活火山が存在します。火山地帯の地下数kmから十数kmには地下深くから上昇してきた「マグマ溜まり」があり、地表に降り注いだ雨水や河川水の一部が長い時間をかけて地下深くに浸透し、さらにその一部がマグマ溜まりの近くにたどり着きます。
 マグマ溜まりの熱で加熱された水は高温の熱水や蒸気となって水を透しにくい岩盤の下やその隙間に溜まります。これを「地熱貯留層」と呼びます。
 生産井を掘ってこの地熱貯留層から高温の熱水や蒸気を汲み上げ、その力でタービンを回転させて発電するのが、地熱発電の一般的なしくみです。発電後の熱水は還元井を通して再び地中深くに戻されます。
 つまり地熱発電を行うためには、(1)地下の「熱」(=地下熱)、(2)熱を地上に運ぶための「水」(=地下水)、(3)水を地下で溜めている「器」(=地熱貯留層)、この3要素が不可欠となるのです。
一般的な地熱発電のしくみ

条件を満たさないために地熱発電を行えないエリアが多数存在

 日本の地熱資源量は2,347万kWで世界3位を誇ります。しかし、全国の地熱発電所の発電設備容量の合計はわずか54万kWにとどまり、総発電量の0.2%に過ぎません。世界有数の地熱ポテンシャルを持ちながら、地熱発電がそれほど普及していない理由の一つが、前述した「熱」「水」「器」の関係です。
 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(略称:NEDO)が1985年から2010年にかけて実施した調査において、地下に高温が確認されたものの熱水の兆候が認められなかった地熱エリアが多数発見されています。地下に「熱」はあるものの、「水」と「器」という条件を満たさないため、地熱発電を行えないエリアが数多く存在しているのです。

過去に行われた「水」を使った高温岩体発電技術

 日本では以前より地熱発電の普及に向けた新技術の研究開発が進められてきました。代表例が、「高温岩体(HDR)発電技術」です。
 これは、地上から高圧水を注入して地下の岩体に亀裂を生じさせることで「器」を造成させるとともに、熱を回収するために「水」を地上の圧入井から注入して、生産井にて地熱蒸気を取り出すという技術です。HDRが確立されれば、人工的に発電必要な蒸気を作り出すことが可能になり、地下に「熱」さえ存在すれば地熱発電が行えるという夢のような技術でした。
 しかし、さまざまな理由から2000年代初頭に国における地熱技術開発は中断となり、HDRに係る研究開発も停滞していました。
タイトル4 カーボンリサイクルCO2地熱発電技術

地熱発電促進の気運が高まる中で新プロジェクトが始動

 政府は2015年に、2030年の国のエネルギーミックス(エネルギー源の組み合わせ)の目標値を発表し、地熱発電設備容量を現在の3倍となる約150万kWに拡大していくことが計画されています。また、2020年10月には、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルを目指すことを宣言しています。この目標の実現に向け、CO2排出量が少なく、かつ豊富な資源量を有する地熱発電のさらなる普及が求められています。
 地熱発電促進の気運が高まる中で、JOGMECは2021年7月より、地熱技術開発株式会社及び大成建設株式会社とともに「カーボンリサイクルCO2地熱発電技術」の開発を進めています。

HDRの技術応用により誕生した新技術

 「カーボンリサイクルCO2地熱発電技術」は、前述のHDRの研究開発で培った技術が応用されています。ポイントは、大きく2つ。1つ目が「CO2」を使って地下に「器」を造成すること。2つ目が「CO2」により地下の「熱」を取り出すことです。それぞれ具体的に解説します。

「CO2」を使って地下に「器」を造成

 CO2を使うことにより、水よりも小さい破砕圧で岩盤を破砕することが可能です。また、3次元的に亀裂が進展し、熱交換に有利な細やかな亀裂面が形成されると考えられています。
 さらに、圧入したCO2は細部に広がり、貯留層の端部で鉱物として固定されることでCO2の「殻」が生成され、漏洩の少ない高性能な人工貯留層が形成されると期待されています。
CO2を利用した人工貯蓄形成のしくみ

「CO2」により地下の「熱」を取り出す

 「カーボンリサイクルCO2地熱発電」では、高温状態の地熱貯留層にCO2を圧入し、熱媒体として循環させて高温になったCO2を回収してタービンを回転させることで発電が可能になります。
 深い地盤中では温度と圧力が高いため、CO2は液体と気体の両方の性質(高密度、低粘性)を持った超臨界状態となります。超臨界CO2は、低粘性のため小さな亀裂面に入り込みやすく、熱交換を効率的に行えます。また、高密度で圧縮率が大きいため、生産井での採熱の効率が向上することも期待されています。
カーボンリサイクルCO2地熱発電技術のしくみ

2025年度までに基礎技術の確立を目指す

 本プロジェクトでは、2021年度から2025年度の5年間で、全体システム設計などの基礎技術の確立を目指しています。
 「カーボンリサイクルCO2地熱発電技術」は、日本が持つ地熱ポテンシャルを最大限に活かせる可能性をもった技術です。この技術が確立されることで「水」と「器」という条件が揃わなくても、地下の「熱」さえ存在すれば地熱発電が可能になると考えられています。そして、日本国内には十分な地下熱を有する有望エリアが多数確認されています。
 少し先の未来では、地熱発電が今よりずっと身近に感じられる社会になっているかもしれません。
カーボンリサイクルCO2地熱発電技術普及のシナリオ

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