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知っておきたい天然ガスの基礎知識。
~LNG、パイプライン、水素製造…… 天然ガスの利用可能性~

 2020年10月、政府は2050年までにカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出と吸収で「ネットゼロ」を目指すこと)を実現すると宣言しました。天然ガスは現在、主に火力発電の燃料や、家庭で利用する都市ガスなどに利用されていますが、次世代エネルギーとして注目される水素を製造する際にも使われます。石炭や石油と比べて環境汚染物質の排出量が少ないという特性もあり、カーボンニュートラルの実現に向けて、注目を集めるエネルギー資源です。

タンカー/パイプライン
タイトル1 石油・石炭とどう異なるのか?天然ガスの特徴

石油や石炭と同じ化石燃料の一種

 天然ガスは、何千万年も昔の動植物の死骸が地中に埋没し、長い時間をかけて分解して発生したものです。このようにしてできた燃料を化石燃料といい、石油や石炭などもその仲間です。天然ガスというと大きな空洞にたくさん溜まっているイメージがあるかもしれませんが、実際は岩の割れ目や、1ミリにも満たない石の粒の隙間などに存在しています。

約6割が火力発電の燃料に

 天然ガスの約6割は火力発電の燃料として、残りの約3割は都市ガスの原料として使用される産業や生活を支える重要なエネルギー源となり、日常的に広く利用されている燃料です。

環境汚染の原因となる物質の発生量が少ない

 天然ガスが広く燃料として使用される理由の一つは、他の化石燃料と比較して、有害物質の排出量が少なく抑えられる点にあります。燃焼しても酸性雨や大気汚染の原因となるSOx(硫黄酸化物)が全く排出されず、NOx(窒素酸化物)、CO2(二酸化炭素)の排出量も石油や石炭よりも少量。石炭と比較すると、CO2の排出量は約6割にまで抑えられるのです。

石炭を100とした場合の排出量比較

[出典]CO2は「火力発電所待機影響評価技術実証調査報告書」(1990年3月)/(一財)エネルギー総合工学研究所
    SOx、NOxは「natural gas prospects」(1986)/OECD・IEA
石炭を100とした場合の排出量比較のグラフ

産出国が世界各地に点在している

 日本が輸入する石油の大部分は中東に集中しているため、中東の情勢により供給が滞ってしまうリスクが懸念されています。一方、天然ガスは供給地域が多角化されており、中東に頼らない供給が可能になります。なお、日本国内でも、新潟県、千葉県、北海道などで国内消費量の2%を占める天然ガスが生産されています。

世界の天然ガス生産量

[出典]BP 「Statistical Review of World Energy 2021」を基に作成
世界の天然ガス生産量のマップ

埋蔵量が豊富で安定した採掘が可能

 以前は天然ガスの可採年数は数十年と言われていましたが、新たな資源の発見や採掘技術の進化により、可採年数は延び続けています。特に2000年代後半に起きたシェール革命により、天然ガスの生産量は飛躍的に増加。シェールガスが多く産出できるようになったアメリカは、天然ガス輸入国から一転して輸出国となりました。天然ガスは現在、今後数百年にわたり安定した採掘が可能と言われています。
(タイトル)天然ガスの輸送方法

長距離輸送の課題を解決した天然ガス液化技術

 環境への影響やエネルギーセキュリティ面など、さまざまなメリットをもつ天然ガスですが、石油や石炭とは異なり「気体」であるため、遠方への運搬には適しません。この課題を解決したのが、天然ガスを液化(LNG化)して輸送する技術の確立です。日本は世界で初めてLNGを発電用燃料として利用し、現在のLNGビジネスの礎を築いてきました。

パイプラインとLNG、2つの輸送方法

 天然ガスの輸送方法は、気体のままパイプラインを通す方法と、上述のようにLNG化して運ぶ方法の2つに大別できます。
 地理的に近い地域への天然ガスの輸送には、パイプラインが使用されます。この方法では天然ガスを気体のまま送り届けることができ、欧州や北米では、歴史的に早い段階からパイプラインの敷設が進展し、大陸全体にパイプライン網が整備されています。
 LNGとは、Liquefied Natural Gasの略で、日本語で言うと「液化天然ガス」。天然ガスは-162℃まで冷却すると無色透明の液体になり、容積も600分の1に圧縮されるため、タンカーに載せて遠くの国まで運搬することが可能です。天然ガス生産国とパイプラインで繋がれておらず、四方を海に囲まれている日本では、この方法を使って輸入しています。また、これまで中国や韓国、台湾といった北東アジア地域での消費が主流でしたが、近年では、欧州をはじめ東南アジア、南アジア、南米など世界中でLNGが流通するようになっています。

天然ガス輸送の概念図

天然ガス輸送の概念図

パイプラインとLNGのメリット・デメリット

パイプラインとLNGのメリット・デメリットの表
(タイトル)天然ガスのこれから

日本国内で海洋ガス田開発へ

 2022年3月から、島根・山口県沖で新たなガス田を開発すべく、試掘調査が行われています。これはINPEXが実施する調査で、JOGMECが出資をしています。商業化できる規模の天然ガスが発掘できれば、エネルギーの安定供給に直結する事業です。

 この事業について詳しく知りたい方は下記をご覧ください。

次世代エネルギー「水素」の製造にも天然ガスを使用

 天然ガスは現在日本のメインエネルギーとして使用されていますが、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、水素やアンモニアを使った燃料電池など、CO2を排出しない燃料や、太陽光や風力などの再生可能エネルギーと共存していくことが不可欠です。
 天然ガスは、次世代エネルギーとして注目されている水素を作る際にも使用されています。しかし、水素は燃焼してもCO2を排出しませんが、天然ガスを使用して水素を作る際には、CO2を排出します。この製造過程でできたCO2を、地中に埋めたり再利用したりするなど、他の技術と組み合わせてCO2排出量を削減する取り組みが進められています。

 天然ガスは、これからも私たちの生活や産業に欠かせないエネルギー資源です。JOGMECは今後も、天然ガスの安定供給に向けた取り組みや、水素ガス製造など新たな活用に向けたプロジェクトを推進していきます。

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