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水素・アンモニアこれからのエネルギー資源。
~「2050年カーボンニュートラル」を達成するために~

 次世代エネルギーとして話題になっている水素・アンモニア。水素を燃料とした電池で動く自動車などが発売されていますが、実は発電用燃料としても活用できるのです。水素とアンモニアは、燃焼時にCO2を排出しないため、現在主に使用されている石油や石炭、天然ガスの代替エネルギーとして注目されています。日本政府は、「2050年カーボンニュートラル」を達成するための足掛かりとして、2030年度の発電量のうち1%を水素・アンモニア由来とすることを目指しています。

資源ミライ開発HPで使用した水素イメージ画像
タイトル1

燃焼時にCO2を排出しないエネルギー

 環境にやさしい次世代エネルギーとして注目されている、水素・アンモニア。燃焼時にCO2を排出しないことがその理由です。日本は現在、エネルギーのほとんどを輸入に頼っていますが、水素、アンモニア燃料が普及すれば、輸入先を多様化することができ、自国でのエネルギー生産も期待できます。

燃料だけではない水素の利用方法

 水素の利用先としては、燃料電池などをイメージする人が多いでしょう。FCV(Fuel Cell Vehicle、燃料電池自動車)をはじめ、家庭用の燃料電池「エネファーム」も一般家庭に多く導入されています。
 燃料電池としての用途のほか、天然ガスを燃料とした火力発電の燃焼時に水素を混ぜ、CO2を減らすという取り組みも始まっています。これはアメリカでは2022年から開始されていますが、日本は水素の輸送手段を確立していないため、海外の事例からノウハウを蓄積している段階です。

火力発電時のアンモニア混焼でCO2を大幅削減

 アンモニアも水素と同じように、燃料電池に利用する方法が研究されています。アンモニアは水素よりもエネルギー密度が高いため、遠く離れた国を結ぶ長距離船舶の燃料として利用することが想定されています。
 また、石炭を燃料とした火力発電の燃焼時にアンモニアを混ぜてCO2の排出量を削減する技術の開発が進んでいます。前述のように、水素は輸送手段が未発達ですが、アンモニアは肥料や化学品の原料として多く利用されており、輸送・貯蔵技術が確立されています。そのため、日本では火力発電の際にアンモニアを混焼する実証実験が進んでいます。
 国内の石炭火力発電所全てにアンモニアを20%混焼した場合のCO2の削減量は4,000万トンにも及びます。さらにアンモニアだけを燃焼させた場合、発電時のCO2発生量の約半分にあたる2億トンが削減できる計算です。

水素・アンモニア(直接利用)の想定利用先

[出典]資源エネルギー庁「水素・アンモニアを取り巻く現状と今後の検討の方向性」(令和4年3月29日)
水素・アンモニアを取り巻く現状と今後の検討の方向性

アンモニアが水素の運び屋に!?

 アンモニアは水素を運ぶための媒体としての利用可能性も秘めています。アンモニアの化学式はNH3で、水素を含む物質。水素を単独で輸送するのは非常にコストがかかるため、現在も大量に輸送されているアンモニアに姿を変えて運び、水素を取り出して利用するという方法が研究されています。
タイトル2

CO2の排出・処理方法により異なる水素の呼び名

 現在生産されている水素の多くは、化石燃料から製造されています。水素は燃焼するときにCO2を排出しませんが、製造工程でCO2を排出します。これを「グレー水素」と呼びます。そこで、CO2を地中に固定するなどして、排出されるCO2を削減したものを「ブルー水素」と呼びます。
 また、水を電気分解して水素を取り出す方法もあります。ここで、風力や太陽光などの再生可能エネルギーを電気として使うと、製造時にも全くCO2を排出しない、「グリーン水素」となります。現在は「グレー水素」が主体ですが、コストとCO2削減のバランスを取りつつ、将来的にはよりCO2フリーな水素を製造していくことが求められています。
 2020年には、福島県に世界最大規模の水素製造設備が完成し、稼働を開始しました。ここでは、再生可能エネルギーを使った水分解で水素を大量生産するプロジェクトが進められています。

水素の製造方法

水素の製造方法の図

アンモニアの製造にも水素が使われる

 アンモニア製造の過程では、水素が必要になります。現在、アンモニアは水素と同様に、化石燃料を利用して作られるグレーアンモニアが大半ですが、アンモニア製造時のCO2を地中に貯留することや、グリーン水素を使うことで、よりCO2フリーなアンモニアを製造することができます。

水素のイメージ図
タイトル3

広く普及させるための環境整備、供給量の確保が課題

 カーボンニュートラル達成に向け、水素・アンモニア燃料の利用割合を増やすためには、まずそれぞれが広く燃料として使われる環境が整わなければなりません。FCV(水素燃料電池自動車)を筆頭に、発電燃料としても普及し、需要を高めていくことが必要となります。しかし、比較的輸送体制が確立されているアンモニアも、その大半が肥料の原料として国内で消費されているのが現状です。今後、燃料としての需要が高まれば大量の供給が必要になるため、世界と連携をとり、国際的な水素・アンモニアのサプライチェーンを構築していくことも不可欠となります。
 大量の水素・アンモニアが必要となると、より製造過程のクリーンさが求められますが、グリーン水素の製造方法である水電解は他の方法に比べてコストが高いのが現状です。水電解装置のコスト削減はもちろん、さらに革新的な製造技術の開発が求められます。

水素・アンモニア燃料普及に向けてのJOGMECの取り組み

 JOGMECは、よりクリーンな水素・アンモニア事業の促進やバリューチェーン構築に向けて多面的な取り組みを推進しています。カナダのアルバータ州政府とは水素・アンモニアの製造や脱炭素に貢献する事業について覚書を交わし、オーストラリアではクリーンなアンモニアを製造し、日本に輸送するための調査を始めています。
 水素・アンモニア燃料の普及、ひいてはカーボンニュートラル達成に貢献するために、JOGMECの挑戦は続きます。

JOGMECが実施する水素・アンモニア関連プロジェクト

(注)世界地図に下記のニュースリリースの番号を配置
水素・アンモニア関連プロジェクトの世界地図に下記のニュースリリースの番号を配置

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