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vol.6 カーボンニュートラルで話題の「合成燃料」とは?
そのメリットから製造方法まで解説!

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 カーボンニュートラル実現に向けた取り組みが進む中、環境に優しくエネルギー密度の高い「合成燃料」が注目されています。すでに官民一体となって研究開発が進む合成燃料ですが、実はその裏には、JOGMECが民間企業と共同で開発した、「JAPAN-GTLプロセス」という技術が生かされています。ここでは、合成燃料がどのようなものなのか、期待される理由や製造方法、そしてJAPAN-GTLとの関わりについて紹介します。

話題の「合成燃料」ってなに?

 合成燃料とは、二酸化炭素(CO2)と水素(H2)を原材料として製造する石油代替燃料のことです。石油と同じ炭化水素化合物の集合体で、ガソリンや灯油など、用途に合わせて自由に利用できます。

 合成燃料は、再生可能エネルギー由来の水素(このような水素を「グリーン水素」といいます)と、発電所や工場から排出される二酸化炭素や大気中の二酸化炭素を使って製造することから、従来の化石燃料と違い、ライフサイクル上で大気中の二酸化炭素を増やすことがない、カーボンニュートラルな燃料と言えます。

JOGMECが天然ガスから製造した合成燃料。左からナフサ、灯油、軽油。「人工的な原油」とも呼ばれる合成燃料は、他にも用途に応じてガソリンやジェット燃料の代替として既存インフラ、設備で利用できる

合成燃料が注目される理由とメリット

 現在、火力発電に使われている化石燃料を、燃焼時に二酸化炭素を排出しない水素やアンモニアに置き換えようという動きが強まっています。また、ガソリン車から、電気自動車や水素を燃料とする燃料電池車への移行も進められています。しかし、水素やアンモニアで発電するには発電所設備の刷新が必要で、莫大なコストがかかります。長距離を移動する航空機や大型輸送トラック、船舶などの電動化や水素化は電池の高性能化やインフラの整備、リサイクルの問題など多くのハードルを越えなければいけません。そのため一部の用途については、まだしばらく、ガソリンやジェット燃料など液体燃料が必要になると予想されています。一方で、カーボンニュートラルへの取り組みも世界一丸となって取り組まなければいけません。

 そこで、合成燃料の出番というわけです。合成燃料を使うことのメリットは大きく4つあります。

合成燃料のメリット

  • エネルギー密度が高い
    長距離を移動する飛行機やトラック、船舶は、水素・アンモニアを利用したり、電動化するハードルが非常に高いとされています。その理由のひとつがエネルギー密度です。水素やアンモニアなどのガス燃料は、液体燃料と同じ体積から得られるエネルギー量が大きく劣ります。そのため飛行機や大型トラックで長距離を移動するには、これまでより多くの容積の燃料を積む必要がありますが、それには輸送機器自体を作り変えなければいけません。電動化についても同様で、現在の飛行機やトラックほどの距離を移動するには、電池の高性能化が必要です。体積あたりのエネルギー密度が高い液体の合成燃料なら、こうした問題をクリアできます。
  • 従来の設備が利用できる
    従来のガソリンやジェット燃料の代わりに合成燃料を使うことで、これまでの設備がそのまま利用できます。発電所や飛行機、トラックなど、これまで使っていたものをそのまま使えることは、経済性の面で大きなメリットです。
  • 資源国以外でも製造できる
    化石燃料の産地といえば、中東や北米、ロシアなどが有名ですが、水素と二酸化炭素で製造できる合成燃料なら、これまで化石燃料が存在しなかった場所でも製造できるうえ、枯渇リスクもありません。もしかしたら、日本でもガソリンや灯油を製造する未来がくるかもしれません。
  • 環境負荷が化石燃料より低い
    合成燃料は原油に比べて硫黄や重金属の含有量が少ないため、より環境負荷を抑えることができます。

合成燃料の製造プロセス

 では、多くのメリットを持つ合成燃料は、どのように作られるのでしょうか。合成燃料を製造するプロセスを見ていきましょう。
合成燃料の製造プロセスの図
  • 「原材料製造」
    合成燃料の原材料は水素と二酸化炭素です。水素は太陽光や風力で発電した電力で、水を電気分解して製造します。二酸化炭素は産業用の排気ガスや大気などから回収します。
  • 「合成ガス製造」
    原材料製造で製造・回収した水素と二酸化炭素を反応させ、合成ガスを製造します。
  • 「FT合成」
    合成ガスからFT(フィッシャー・トロプシュ)合成で合成粗油を製造します。言葉は難しいですが、合成粗油とはこれを加工(アップグレーティング)することで、ガソリンや灯油などを自由に製造できる液体です。化石燃料でいう石油のようなイメージです。
  • 「製品化」
    化石燃料でいう「精製」の工程にあたる作業で、FT合成で製造した合成粗油からガソリンや灯油などを製造します。灯油やジェット燃料、軽油、重油など、石油製品を自由に製造できます。

合成燃料の製造に生かされるJOGMECの「JAPAN-GTLプロセス」

 カーボンニュートラルの実現とエネルギー問題の解決に有効な合成燃料。2022年4月、政府は合成燃料を「グリーン戦略」における重要な技術の1つに選定しました。現在、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「グリーンイノベーション基金事業/CO2等を用いた燃料製造技術開発プロジェクト」(2022~2028年度)の下、商業化に向け、官民連携による合成燃料の製造技術の研究開発が進められています。

 実はこの「CO2等を用いた燃料製造技術開発プロジェクト」は、製造プロセスをすべてゼロから開発するわけではありません。このプロジェクトの背景には、JOGMECが民間企業と共同で、1998年から2012年にかけて取り組んできた日本独自のGTL技術「JAPAN-GTLプロセス」が生かされています。

 GTLとは、「Gas to Liquids」の頭文字をとったもので、ガスを液化することを意味します。ガスの液化というと「LNG(液化天然ガス)」をイメージするかもしれませんが、GTLとLNGは根本的に異なる技術です。

LNGとGTLの比較

LNGとGTLの比較の図
 LNGは天然ガスの温度を下げることで組成を替えずに液化し、輸送しやすくする技術です。輸送後は温度を上げ、元の天然ガスに戻して利用します。一方、GTLは、天然ガスであるメタン(CH4)などを原料として、ガソリンやジェット燃料、灯油、軽油などの液体燃料や化学品を製造し、そのまま利用する技術です。

 GTLと合成燃料の違いは、原料の違いにあります。GTLの原料が天然ガスである一方、合成燃料の原料が水素と二酸化炭素という点です。つまり、合成ガスを製造したあとの流れはそのまま転用できるということです。約10年前に確立したJAPAN-GTLプロセスにおける原料以外の部分、つまり、合成ガス製造からFT合成、アップグレーティングまでの製造プロセスを最大限に活用しつつ、原料が変わったことに伴う合成ガス製造技術や、製造効率を飛躍的に高めるための革新技術を新たに開発することで、合成燃料の早期商業化を目指そうというわけです。

JAPAN-GTLの歴史

 JAPAN-GTLプロセスの開発プロジェクトでは、まず、1998~2000年度にかけて、JOGMECと民間企業3社が共同で実験室レベルの研究をスタートさせ、日本独自の合成ガス製造技術とFT合成技術を開発しました。2001~2004年度には、JOGMECと民間企業5社と共同で、北海道苫小牧市にGTLパイロットプラントを建設し、日量7バレルの液体燃料の製造を成功させました。

 さらに、2006~2012年度には、民間企業6社と共同で、新潟県新潟市にGTL実証プラントを建設し、日量500バレルの液体燃料の製造を達成させたのです。500バレルとは約80キロリットルですが、小型ながら一定の生産規模であり、実証プラントは、開発プロジェクトを通して、3,000時間連続運転を実現。運転時間は通算1万時間を超え、技術としての完成を確認し、GTL生産技術として商業利用できる技術完成を得たという評価を受けています。
 

JAPAN-GTLの実証プラント(2006~2012)

 GTLは、天然ガスから液体燃料を製造する技術であり、製造される液体燃料の環境負荷が石油由来の燃料に比べて低いという利点を持ちます。石油由来の燃料との競争では、資源量も多く相対的に安価な天然ガスと資源がタイトになりつつある原油との価格差が拡がればGTLが経済的に有利になる期待がありました。

 ところが2011年以降、石炭などに比べCO2排出量の少ない天然ガスへの需要が急激に高まったことで、天然ガス価格と原油価格の価格差は狭まりながら上下に変動し続ける状況になりました。CO2排出を抑えて持続可能性を高めた社会を求める流れと共に、上述の経済状況の中で、JAPAN-GTLプロセスは商業化の機会が得られない状態が続きました。

 このような中、2050年カーボンニュートラルという大きな目標が掲げられ、改めてCO2の循環利用を模索する動きに注目が集まるようになりました。CO2を出さないクリーンな水素と組み合わせて合成燃料を作る技術の検討が始まり、JAPAN-GTLプロセスが再び脚光を浴びることとなったというわけです。

 JOGMECはこれからもJAPAN-GTLプロジェクトで蓄積した技術や経験を活かし、合成燃料開発プロジェクトを積極的にサポートする予定です。ぜひ今後の動向に注目してください。

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