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洋上風力発電って何がすごい?
日本における再生可能エネルギーのメリットを解説!

洋上風力発電画像
 2020年以降の気候変動問題に関する国際的な枠組み、パリ協定を受けて、現在日本は「2050年カーボンニュートラル」の達成に取り組んでいます。一方で、日本は先進工業国であり、エネルギーを多く消費する生活を営んでいるにもかかわらず、エネルギー資源に乏しく、そのほとんどを輸入に頼っています。こうした課題の解決の切り札として、今注目されているのが再生可能エネルギーです。今回は数ある再生可能エネルギーの中でも、特に期待が高まる洋上風力発電を中心に解説します。

低い日本のエネルギー自給率

 「エネルギー自給率」という言葉を知っていますか? エネルギー自給率とは、日本全体で使われるエネルギーのうち、国内の資源でどのくらいのエネルギーをまかなえているかを示す指標です。エネルギー自給率が低ければ、資源国の動向による資源価格の上昇や為替の影響を受けやすくなります。

 資源エネルギー庁の調査によれば、2019年度の日本のエネルギー自給率は12.1%。これは他のOECD諸国と比べても低い水準です。特に2011年3月の東日本大震災以降、海外から輸入される石油、石炭、天然ガス(LNG)などの化石燃料への依存度はさらに高まりました。

主要国の一次エネルギー自給率(2019年)
(注) 表内の順位はOECD36カ国中の順位
出典:IEA「World Energy Balances 2020」の2019年推計値、日本のみ資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」の2019年確報値

 こうした状況の中、2022年2月にはロシアによるウクライナ侵攻が発生しました。それに伴い、ロシア産天然ガスの欧州への供給が制限されたことで、世界中で天然ガス価格が高騰しています。そこに円安が重なったことで、現在日本では、電気料金や物価などでインフレが進み、国民生活に大きな影響を与えています。世界中が不安定な今、国際情勢や為替の影響を小さくするためにも、エネルギー自給率の向上は日本にとって喫緊の課題と言えるでしょう。

今、再生可能エネルギーが求められる理由は?

 エネルギー自給率が低い日本では、現在、再生可能エネルギーの拡大が期待されています。再生可能エネルギーとは、発電時や熱利用時に二酸化炭素(以下CO2)などの温室効果ガスをほとんど排出しない持続可能なエネルギーのことです。そのメリットはたくさんありますが、今の日本には以下の2つの点が特に重要になっています。

再生可能エネルギーのメリット

温室効果ガスを排出しない CO2をはじめとする温室効果ガスを排出しない再生可能エネルギーは、環境にやさしいクリーンなエネルギー源。カーボンニュートラルの達成と経済活動の継続を両立するために不可欠。
国内のエネルギー源で発電可能 国内の自然由来のエネルギー源で発電するため、化石燃料のように燃料を海外に依存しない。エネルギー資源に乏しい日本にとって、エネルギー自給率向上に大きく貢献する。
 カーボンニュートラルの達成とエネルギー自給率の向上、これらに同時に貢献するのが再生可能エネルギーというわけです。一方で、天候や風況といった自然環境に左右されるため、発電量が不安定であるといったデメリットも存在します。メリットとデメリットを理解し、うまく組み合わせることで、日本全体の温室効果ガス排出量削減とエネルギー自給率の向上を目指すことが大切です。

再生可能エネルギーの種類と現在の状況

 再生可能エネルギーを使った主な発電方法とその特徴を紹介します。

主な再生可能エネルギーを使った発電方法とその特徴

太陽光発電 太陽光発電の導入で、ドイツとともに世界をリードしてきた日本。天候により発電量が左右されるが、住宅・工場・公共施設・未利用地などへ普及が進む。2012年に経済産業省が実施した固定価格買取制度(FIT)により急激に導入件数が増加した。
風力発電 風のエネルギーを電力に変える発電方法。陸上と洋上で発電が可能で、変換効率が高いうえに夜間も稼働できる。欧米諸国に比べると日本は導入が遅れているものの、経済性を確保できる可能性もあるなど急速に導入が進む。
地熱発電 昼夜を問わず24時間安定的に発電でき、長期間の操業が可能。開発期間が10年以上と長期にわたり、開発コストも高額になるが、日本には大きな地熱のポテンシャルがあるため、大規模開発に向けて期待が寄せられている。
中小水力発電 水力発電は安定した信頼性の高い電源である一方、大規模水力発電は国内に新たな適地がなく、中小規模の開発が進む。未開発地点が多くあるが、開発コストが課題。
バイオマス発電 生物資源を利用して発電を行っており、日本では太陽光発電に次いで大きな発電量を誇る。廃棄物の削減にも貢献できる一方、原料の安定供給確保、収集・運搬・管理コストなどの課題がある。
 上で挙げた以外にも、雪が持つ低い温度や年中一定を保つ地中の熱、空気の温度でさえも再生可能エネルギーとして利用可能です。海面の温かい水と深海の冷たい水との温度差を利用して発電する海洋温度差発電や、海の波の上下動や潮の満ち引き、海流を利用した発電方法なども研究が進められており、今後ますます再生可能エネルギーの活用が進むと見込まれています。

世界各国で導入が進む風力発電

 さまざまな種類がある再生可能エネルギーですが、中でも今注目されているのが洋上風力発電です。風力発電は、その名の通り、風力を使ってブレードを回転させて発電する発電方法のこと。陸上と洋上に大別されますが、今注目されているのは洋上風力発電です。

 洋上風力発電は大量導入、大型化によるコスト低減に加え、発電設備は構成機器や部品点数が多いことなど経済波及効果が期待されることから、再生可能エネルギーの主力電源になることが予想されています。そのため、欧州を中心に世界各国で導入が拡大しています。

 たとえば、英国では政府と産業界がパートナーシップを築き、英国サプライチェーンの生産性と国際競争力の向上を目的に、2019年に「洋上風力発電戦略(OWSD)」を策定しています。2030年までに洋上風力発電の30ギガワット導入を目指すとしています。

 近年は中国・台湾・韓国を中心に、アジア市場の急成長も見込まれています。IEAの試算によれば、全世界の洋上風力発電の導入量は2018年の23ギガワットに対し、2040年には約24倍の562ギガワットが見込まれるなど、各国が国を挙げて導入に取り組んでいます。

洋上風力発電の各国政府目標

地域/国 目標
EU 60GW
300GW
(2030年)
(2050年)
ドイツ 40GW (2040年)
アメリカ 22GW (2030年)
中国 5GW (2020年)
台湾 5.5GW
15.5GW
(2025年)
(2035年)
韓国 12GW (2030年)
出典:IEA Offshore Wind Outlook 2019、各国政府公表情報を元に作成
 

高いポテンシャルを誇る日本の洋上風力発電

 欧州やアジアを中心に、世界中で洋上風力発電の導入拡大が見込まれる中、四方を海に囲まれた日本でも、そのポテンシャルの高さに注目が集まっています。

 一般的に、洋上は陸上に比べて風況がよく、機材の運搬や周辺の障害物等を考慮する観点からも、陸上より大きな風車を建設することが可能です。国土が狭く、海に囲まれた日本にとって、相性のいい発電方法と言えるでしょう。
 

日本周辺の洋上風力発電の適地とエリア別の導入イメージ
出典:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、洋上風力産業ビジョン(第一次)より作成

 そこで日本政府は2020年12月、従来の導入目標を大幅に引き上げ、2030年までに1,000万キロワット、2040年までに浮体式洋上風力発電も含め3,000万~4,500万キロワットの洋上風力発電の導入を目標とすることを打ち出しました。1,000万キロワットは、一般家庭約600万世帯分の電力を賄える規模です。

 2022年には国内初となる商業規模の大型案件が稼働を開始した秋田県の能代港・秋田港のほか、北海道石狩湾新港、茨城県鹿島港、福岡県北九州港で大型洋上風力発電の設置が進められています。発電設備の建設、操業を通じた地域振興や新たなサプライチェーンの構築といった経済波及効果も期待されることから、官民一体となって日本各地で広がりを見せています。
 

秋田県は約300基の風力発電が設置されている

洋上風力発電の普及をJOGMECも推進

 エネルギー自給率の向上と地球温暖化防止の観点からますます重要性が増している洋上風力発電。これまで、国内では複数の事業者が同一の海域で重複した調査を実施することで、地元漁業における操業調整が発生するなど地域住民への負担が課題となっていました。それに対し、今後はJOGMECが代表して発電事業の検討に必要な初期段階の調査を実施し、その調査結果を事業者へ提供する役割を担うこととなりました。それにより、JOGMECは洋上風力発電導入の効率化、加速化に貢献していきます。

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