地熱発電とは?その仕組みからメリット・デメリットまで解説
カーボンニュートラルの実現に向け、CO2をほとんど排出しない再生可能エネルギーの導入が、世界各国で進められています。太陽光発電や風力発電など、さまざまな再生可能エネルギーがある中、今、日本で大きな期待が寄せられているのが地熱発電です。
地熱発電とは、その言葉から「熱」を使った発電方法だと誤解されることがありますが、正しくは地下から取り出した「蒸気」でタービンを回す発電方法です。
火山などの地下深くにはマグマだまりがあり、その周辺の岩石は、マグマによって熱せられています。そこに地下水が浸透すると、高温の熱水がつくられます。そのとき、キャップロックと呼ばれる、水を通さない層が上部にあると、熱水がキャップロックの下に閉じ込められることになります。そうした場所を地熱貯留層と呼びますが、地下深くにあることから、温度・圧力も非常に高い環境です。そんな高温・高圧の地熱貯留層に、地上から井戸を掘ると、貯留層の中の蒸気や熱水は圧力の低い地上に向かって噴出します。この蒸気でタービンを回すのが、地熱発電です。
地熱貯留層に穴を開けることで蒸気を取り出す。やかんに水を入れて沸騰させたとき、注ぎ口から蒸気が出るのと同じ原理。
メリット |
安定的に発電できる
太陽光発電や風力発電と異なり、天候や季節、時間などによる発電量の変化はない。24時間365日、安定的に稼働することが可能 |
純国産のエネルギーを利用できる
自国の資源を活かせるため、化石燃料などと異なり、資源国の動向に影響されない
多段階利用ができる
発電後の熱水利用(ハウス栽培や養殖事業)など、エネルギーの多段階利用により、地域と共生した開発が可能 |
デメリット |
開発リスクが高い
新たな場所で地熱発電を開発する場合、掘削した井戸が蒸気にあたる成功率は2~3割。発電に必要な量の蒸気が数十年単位で生産できなければ採算がとれないので開発を断念する場合がある |
開発に時間がかかる
地熱貯留層の調査から開発、事業開始するまでに、少なくとも10数年の歳月が必要。民間企業にとって、投資から回収するまでに長い時間がかかることは投資決定への大きなハードルになる |
自然の力を活用する多くの再生可能エネルギーは、天候や時間による発電量の変化がつきものですが、地熱発電は24時間365日、安定して稼働できます。また、エネルギー資源に乏しい日本にとって、純国産のエネルギーを利用できることも大きなメリットです。
一方で、デメリットは開発難度の高さです。
直接見ることのできない地下の様子を調べ、必要な蒸気がとれるかどうかわからない地熱貯留層を的確に掘り当てなければなりません。掘り当てたとしても、十分な蒸気や熱水が得られないこともあります。さらに、すべてうまくいっても事業化までにかかる時間は10年以上。数年の時間とお金をかけても開発に至る成功率が低いうえ、成功しても投資を回収するまでにさらに非常に長い年月がかかります。民間企業にとって、とてもリスクの高い事業といえるでしょう。
火山列島である日本は世界有数の地熱資源量を有する一方、開発が中断していた時期が20年以上あり、利用では世界に遅れをとっています。
アメリカやインドネシアなど、地熱資源量が多いのは火山が多い国。日本も例外ではなく、世界3位という地熱資源量を誇ります。
国別地熱資源量ランキング
1万kW=10MW 1MW=1,000kW
出典:資源エネルギー庁(総合資源エネルギー調査会資料2016年6月)をもとに作成
一方、発電可能な電力量を示す地熱発電設備容量では、55万kWで世界10位です。アメリカやインドネシアといった地熱先進国はもとより、近年発電量が急増しているトルコやケニアといった地熱新興国にも追い越されてしまっている状況です。
現在の全国の地熱発電設備容量は55万kWで、発電電力量は3,000GWh。日本の電力の0.3%を構成する。
日本の地熱発電は、1990年代半ば以降、設備容量が横ばいの時代が続きました。その理由は、開発難度の高さに加え、開発に関連する法令の規制、それから温泉事業者をはじめとする地域住民から心配の声が上がることなどです。
しかし、2050年のカーボンニュートラル実現には、世界3位という地熱資源量を活かすことが欠かせません。そこで現在、2030年に現在の約3倍となる148万kWの設備容量に拡大するという目標が掲げられています。その目標達成に向け、規制緩和や温泉のモニタリングを通じた周辺への影響評価、リスクマネーの供給をはじめとする事業者のサポートなど、官民一体となった導入拡大が進められており、多くの新規プロジェクトが動き出しています。
エネルギー自給率の向上や資源エネルギーの安定供給だけでなく、カーボンニュートラルの実現にも大きく貢献する地熱発電。最近は化石燃料の代替エネルギーとして注目される水素を、地熱発電の電力を利用して製造し、各地に搬送するという新たな取り組みも始まりました。今後、日本がエネルギーに関する課題に立ち向かう中で、地熱発電は今後さらにその重要性を増していくことでしょう。