「石油メジャー」「オイルメジャー」「資源メジャー」って? 該当する企業や特徴を解説!
石油関連のニュースを見ていて、「石油メジャー」「オイルメジャー」「資源メジャー」「メジャーズ」といった言葉を耳にしたことはありませんか? もちろん、野球のメジャーリーグではありません。エネルギー業界の大企業を指す言葉ですが、どんな企業でどんな特徴があるのかは意外と知られていないのではないでしょうか。そこで今回は、エネルギー業界の動向を知る上で重要になる、これらの用語を解説します。
「石油メジャー」「オイルメジャー」「資源メジャー」「メジャーズ」……。似たような言葉がたくさんありますが、共通するのは「メジャー」という単語です。英語では「major」。辞書を引くと「大きい」「主要な」「重要な」などの意味が出てきます。その意味の通り、資源業界で「メジャー」というと、おおまかには業界の中でも大きな企業を指します。
一般的には「石油メジャー」「オイルメジャー」などが多く使われますが、資源エネルギー業界では「メジャーズ」がベーシックな呼び方です。そこで本記事では、「メジャーズ」を基準に解説します。
「メジャーズ」とは、欧米の株式市場に上場されている大規模な垂直統合型の石油会社のうち、上位5社を指す言葉です。垂直統合型の石油会社とは、石油事業の上流(探鉱・開発・生産)、中流(輸送・精製)、下流(流通・販売)の全てを一貫して行っている企業です。
資源開発の流れ
メジャーズは垂直統合型であることに加えて、規模の大きさも特徴として挙げられます。
- 自国以外に世界各国で事業を展開している
- 世界の石油企業の中で圧倒的な販売力を有している
メジャーズを構成するのは、数あるエネルギー関連企業でもトップに君臨する以下の5社です。
企業名 |
国 |
特徴 |
エクソンモービル
(ExxonMobil) |
アメリカ |
石油メジャー5社の中でも最大手。アメリカのシェールオイルや南米ガイアナなど大規模な石油開発に携わる。LNG事業にも力を入れる。 |
シェブロン
(Chevron) |
アメリカ |
石油メジャーの中では、エクソンモービルに次ぐ規模の大きさを持つ。石油事業のほか、CCSや水素、バイオ燃料、地熱発電などカーボンニュートラル実現に向けた事業も推進している。 |
BP |
イギリス |
石油メジャーの中では、いち早くカーボンニュートラル実現に向けた取り組みに着手し、再生可能エネルギー・CCS・水素なども強化している。 |
シェル
(Shell) |
イギリス |
2022年のエネルギー危機をきっかけに、石油事業以外に再生可能エネルギーにも重点を置いている。LNGトレーディングや水素、CCS、植林といったカーボンニュートラルの取り組みにも力を入れる。 |
トタルエナジーズ
(TotalEnergies) |
フランス |
石油や天然ガス事業のほか、大規模な再生可能エネルギー事業に取り組んでおり、日本の大規模洋上風力発電プロジェクトにも携わっている。 |
日本では馴染みの少ない企業もありますが、いずれもその時価総額(2022年時点)は、日本で最大手のエネルギー関連企業と比べても約10倍と圧倒的です。保有する莫大な資本や設備、ネットワークに加え、技術力でも他を圧倒し、エネルギー業界の中核を成しているといっても過言ではありません。
石油や資源に関わるニュースでは、「石油メジャー」や「スーパーメジャー」、「資源メジャー」など呼び方が似ている言葉に加えて、国営石油会社などメジャーズと混同されがちな言葉も存在します。媒体や文脈によって若干意味が異なる場合がありますが、それぞれ基本的な定義を紹介します。
用語 |
概要 |
オイルメジャー
石油メジャー |
「メジャーズ」と同義。 |
スーパーメジャー |
- 1999年~2003年頃に大手石油企業の再編が進んだ際に誕生した5つの企業を指す意味で、当時よく使われていた言葉。
- 「メジャーズ」「石油メジャー」「オイルメジャー」と同義だが、現在は使われることが少ない。
|
資源メジャー |
- 石油関連の話題の場合は、「メジャーズ」と同義。
- 金属関連の話題で使われている場合は、金属資源業界の大手であるBHP(オーストラリア)やリオティント(イギリス)、グレンコア(スイス)といった「金属資源業界の大手企業」を指す。
|
セブン・シスターズ |
- 第二次世界大戦から1970年代前半までの期間に、世界の石油生産をほぼ独占状態に置いた石油会社7社のこと。
- 1975年に出版された「The Seven Sisters」という本のタイトルに基づいている。
|
国際大手石油会社
(IOC:International Oil Company) |
- 本社本部のある所在国以外で大規模な事業を行う石油企業。
- 石油メジャーはこのうちの上位5社であり、「IOC」の場合はコノコフィリップス(アメリカ)やENI(イタリア)といった、石油メジャー以外の垂直統合型の石油会社も含まれる。
|
国営石油会社
(NOC:National Oil Corporation) |
- 自国の地下に存在する資源を開発する権利を、自国の法律によって許可された上流(探鉱・開発・生産)開発企業。
- 特に石油・天然ガス資源が豊富な中東産油国のNOCは自国に大規模な生産設備を持ち、生産量だけで見ると石油メジャーを上回る企業も存在する。
- サウジアラムコ(サウジアラビア)、NIOC(イラン)、KPC(クウェート)、ADNOC(アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ国営石油会社)などが有名。
|
同じ意味のもの、同じ意味でも時代で呼び方が違うものなど分かりづらい点もありますが、基本的には上記の定義を理解しておけば困ることは少ないでしょう。
巨大で、歴史的に世界の大部分のエネルギーを供給してきたメジャーズですが、地球温暖化への対応が喫緊の課題となっている今、生き残りをかけてさまざまな道を模索しています。
たとえばこれまで、石油が与える環境への影響が問題視されると、より環境負荷の少ない天然ガスの拡充を進めてきました。そして今、さらなる環境規制へ対応するため、より環境負荷の低い水素・アンモニアの活用や、再生エネルギーの開発に力を入れ始めています。
こうした動きはメジャーズ同様、産油国である中東諸国でも同様です。
サウジアラビア |
グリーン・イニシアチブ(2021年)の中で、2030年までに電力の50%を再生可能エネルギーに転換、2050年までに炭素排出量ネットゼロといった、再生可能エネルギーや水素事業に積極的に取り組む姿勢を見せている。 |
UAE |
2031年までにUAEが水素の最大生産国の仲間入りをすることを目標とした「国家水素戦略2050」を発表。サプライチェーンの開発、クリーン電力を供給する水素オアシスの設立、国立研究開発センターの設立などが含まれている。 |
多くの産油国では石油資源に頼るのではなく、カーボンニュートラル社会の到来を念頭に、水素・アンモニアなど石油・天然ガスに代わる資源の開発や電化社会を見据えた取り組みが進められています。また、一部の産油国では従前より石油・天然ガスに続く資源として、鉱業部門への事業拡大を積極的に進めているなど、エネルギーとの向き合い方が上流から変化していることが読み取れます。
世界の大手企業の中でも、メジャーズのように長い歴史を持ち、ひとつの産業そのものの基盤となっている企業は多くありません。最近では、NOCや中国・インドといった新興国の国有石油会社も追い上げていますが、カーボンニュートラル戦略で先行するメジャーズがエネルギー産業をリードし続けることは変わらないでしょう。
そしてその動向は、日本のエネルギー政策を検討するうえでももっとも重視する指標のひとつとなっています。メジャーズの動向は単に一つの民間企業の動向ではなく、日本を含めた世界のエネルギー事情に大きな影響を与えているというわけです。
今後、メジャーズ各社のカーボンニュートラルに向けた新規事業や事業内容の転換はますます活発になっていくことが予想されます。世界のエネルギー事情、ひいては日本のエネルギーの未来にも繋がるメジャーズの動向。社会の動きを知るうえでも、ぜひチェックするようにしてみてください。