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COPってどんな会議?2024年のCOPの焦点についても解説!

COPってどんな会議?
 ニュースで、「COP」と呼ばれる国際会議の様子を目にしたことがある人は多いのではないでしょうか。しかし、具体的にどんなことが話し合われているのか、知っている人は少ないかもしれません。

 今回は、COPの基礎知識のほか、2024年11月にアゼルバイジャンで開催されるCOP29のポイントについても解説します。

COPとは

 COPとは「Conference of the Parties」の略で、「締約国会議」を意味します。締約国会議とは条約を結んだ国・地域が参加する会議のことで、多くの国際条約においてさまざまなCOPが存在します。

 その中で最もよく耳にするのが、気候変動に関する国際条約のCOPです。正式名称を「国連気候変動枠組条約締約国会議」といいます。

 ここでも、気候変動に関する国際条約のCOPについて解説します。

いつ、どれくらいの規模で開催される?

COP集合写真
出典:"December 1 - World Climate Action Summit"外部リンク by UN Climate Change外部リンク is licensed under CC BY 2.0

 COPは、毎年10月~12月頃に約2週間にわたって開催されます。通常、COPの後ろに開催回数をつけた形で表されます。2024年は29回目の開催となるため、「COP29」となります。

 約200の締約国の政府をはじめ、研究機関や企業などが議長国に集まり、首相級・閣僚級の会合のほか、気候変動に関するさまざまなテーマについて議論が行われます。最終日には、協議された内容をもとに合意文書が作成されます。2023年は198の締約国などから、約8万5,000人が参加しました。

COPのスケジュール(2023年のCOP28を例に)

COPで話し合われている内容

 COPでは気候変動や地球温暖化を軸に、主に以下のような内容が話し合われています。
 
  • 気候変動によって生じている問題の状況と、その対策
  • 各国の取り組み事例や温室効果ガスの削減の進捗状況の報告
  • 気候変動対策の方針に対する締約国間での合意形成
  • 具体的な行動計画の策定
  COPが行われる背景には、1992年にブラジルで開催された「国連環境開発会議」(地球サミット)で採択された「国連気候変動枠組条約(UNFCCC)」があります。この条約は、地球温暖化によってもたらされる人類や自然の生態系などへの悪影響を防止するために、大気中の温室効果ガスの安定化させることを目的に採択されたものです。全締約国に対して温室効果ガス削減の計画策定と実行、排出量の実績を公表することなど、原則や大まかなルールが定められていますが、具体的にこの枠組みをどう進めていくかは書かれていません。
 
 そのため、「国連気候変動枠組条約」をもとに具体的な行動計画や目標を設定する場として、COPが設けられています。

過去のCOPで採択された重要な取り決め

 COPは1995年の開催以来、コロナ禍で延期となった2020年を除いて毎年開催されています。そのうち、世界における気候変動対策の転換点となった重要な取り決めは、以下の3つです。

京都議定書(COP3/1997年)

 「京都議定書」は、1997年に京都で開催されたCOP3で採択されました。注目すべき点は、温室効果ガスの排出量削減について、初めて法的拘束力のある数値目標が設定されたことです。

 ただし、目標達成義務の対象となったのは先進国のみで、途上国は義務化されませんでした。これは、地球環境問題に関して先進国も途上国も共通の責任がありますが、問題への寄与度と解決能力においては両者に差異があるという「共通だが差異ある責任」の原則(注)に基づくものです。

(注)1992年に開催された地球サミットで採択された「環境と開発に関するリオ宣言」第7原則に記されています。

パリ協定(COP21/2015年)

 2015年のCOP21で採択された「パリ協定」は、2020年までの期間を対象としていた京都議定書に代わり、2020年以降の温室効果ガス排出削減を進める新たな国際的な枠組みです。

 京都議定書との大きな違いは、途上国を含むすべての国が気候変動の取り組みに参加する枠組みとなった点です。「2100年末での世界平均気温の上昇を、産業革命以前と比べて2度より低く、1.5度に抑える努力をする」ことを世界共通の目標に設定し、それをもとにすべての締約国が削減目標を5年ごとに提出、見直すことが定められました。

グラスゴー気候合意(COP26/2021年)

 2021年にイギリスのグラスゴーで開催されたCOP26。このとき採択された「グラスゴー気候合意」では、パリ協定に続いて「2100年末までに世界平均気温の上昇を1.5度に抑える」という目標が明記されました。

 さらに、この目標を実現するためには「2050年にはネットゼロにすること」の必要性が明示され、各締約国に対して野心的な対策が求められました。「ネットゼロ」とは、温室効果ガスの排出量を減らす、あるいは吸収する何らかの手段によって相殺して排出量を実質ゼロにするということです。

 これを受けて、多くの国・地域がネットゼロを目標に盛り込んだため、世界全体がネットゼロに舵を切ったターニングポイントとなりました。日本では2020年頃からネットゼロと同義の「カーボンニュートラル」という言葉がよく取り上げられるようになり、COP26に先駆けて具体的な目標設定や長期的な計画の表明を積極的に表明してきました。

3つの取り決めの主なポイント

取り決め 採択年 開催地 ポイント
京都議定書 1997年
(COP3)
日本 京都 先進国に対して、法的拘束力のある温室効果ガスの排出量削減の数値目標が初めて設定される。
パリ協定 2015年
(COP21)
フランス パリ 気温上昇に関する世界共通の目標が設定され、全締約国に対して5年ごとの削減目標の提出と見直しが定められる。
グラスゴー気候合意 2021年
(COP26)
イギリス グラスゴー ネットゼロの重要性が示され、世界全体が2050年のネットゼロを目指す流れに。

2024に開催されるCOP29のポイント

 2024年のCOPは29回目。アゼルバイジャンの首都バクーで、11月11日~11月22日に開催される予定です。会議の焦点は、主に以下の3点になると考えられます。

エネルギーの産出国が議長国

COPの様子

 議長国は会議全体のリーダーシップをとり、主要な議題を設定することができるため、議長国によって議論の方向性が大きく変わるという点でとても重要な存在です。2022年は先進国を中心に、温室効果ガスの排出量削減に向け、再生可能エネルギーを中心とした議論が展開されてきました。しかし、2023年のCOP28では、新興国かつ大規模なエネルギー資源の産出国であるアラブ首長国連邦(UAE)が議長国となり、アブダビ国営石油会社(ADNOC)のCEOがCOPの議長を務めました。

近年のCOPの議長国

回数 開催年 議長国 開催地
21 2015年 フランス フランス パリ
22 2016年 モロッコ モロッコ マラケシュ
23 2017年 フィジー ドイツ ボン
24 2018年 ポーランド ポーランド カトヴィツェ
25 2019年 チリ スペイン マドリード
26 2021年 イギリス イギリス グラスゴー
27 2022年 エジプト エジプト シャルム・エル・シェイク
28 2023年 アラブ首長国連邦 アラブ首長国連邦 ドバイ
29 2024年 アゼルバイジャン アゼルバイジャン バクー

 2023年のCOP28では、今後もエネルギー需要が伸びる見込みの新興国にとって、気候変動問題に配慮しながらどのようにエネルギーを確保するのか、化石燃料を排出する立場のエネルギー業界が気候変動に取り組むことの重要性が示されるなど、エネルギー産出国が議長国になったことにより、エネルギーへのアクセスを確保しながら、いかに気候変動問題への具体的な解決策を提示するかという視点での議論が行われました。
 
 2024年の議長国であるアゼルバイジャンも、UAEと同様に新興国であり中央アジア地域の主要なエネルギー資源産出国です。昨年の流れを受けて、今年は具体的な取り組みについての議論がどのように展開されるかが焦点となるでしょう。
 

エネルギー業界の動向

 2023年のCOP28において、議長国のUAEはサウジアラビアとともに、石油・ガス企業50社が石油・ガス脱炭素憲章(OGDC)に参加したことを発表しました。OGDCは端的に説明すると、エネルギー業界が参加する気候変動問題対策の新たな枠組みです。

 OGDCに参加する企業は、遅くとも2050年までに自社の操業から排出される温室効果ガスをネットゼロとすること、2030年までに二酸化炭素に比べて温室効果の高いメタンガス(注)の排出量をほぼゼロにすることを目標としています。この1年間で、OGDCを中心としたエネルギー業界がどのように気候変動に取り組んできたのか、そして今後どのように取り組んでいくのかという点も、注目すべきポイントのひとつです。

(注)メタンは都市ガスの主要な成分として知られ、地球温暖化への影響を評価する温室効果係数では、排出から100年後時点で二酸化炭素の約28倍、20年後時点では約84倍と高いことから、その排出を短期間で削減することが重要な気候変動対策としてエネルギー業界における取り組みが進んでいます。

天然ガス輸送のこれから

 ロシアは世界有数の天然ガスの生産国であり、その大半を欧州に輸出していました。しかし、2022年のロシアによるウクライナ侵攻の影響で、今後は主要な輸出先や輸送ルートが変化する可能性があります。

 アゼルバイジャンは東ヨーロッパと西アジアの境目に位置しており、ロシアにも接しています。そのため、ロシアがどこにどのようなルートで天然ガスを輸送するにしても、重要な要衝となることは間違いありません。

アゼルバイジャンは黒海とカスピ海に挟まれたコーカサス地域に位置し、カスピ海沿岸の油田開発で発展すると同時に、エネルギー資源の要衝としても重要な地域。

私たちの生活にも関係してくるCOPでの決定事項

 COPは、気候変動に関する世界全体の方向性が定まる会議です。ここでの議論や合意された内容は、各国の政策や企業の事業方針の策定にも関わるものであるため、私たちの生活にも無関係ではありません。議論はこれまでのCOPの流れや、議長国の特徴を踏まえて展開されるので、それを踏まえて2024年のCOPの動向もチェックしてみてください。

記事掲載日:2024年11月6日

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