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銅の価格はなぜ上がっている? カーボンニュートラルとの関係について解説!

TOP画像 vol.25銅の価格はなぜ上がっている? カーボンニュートラルとの関係について解説!
 近年、太陽光発電施設のケーブルや、給湯器、室外機などの盗難が急増しています。その目的は、価格が高騰している「銅」です。では、なぜ銅の価格が高騰しているのでしょうか。実は、その理由にはカーボンニュートラルが関係しています。

 今回は、銅の価格上昇とカーボンニュートラルの関係、そして銅の安定供給に関する国内外の動向について解説します。

銅の性質と用途

 銅は人類が最も古くから利用してきた金属の一つで、その歴史は1万年以上に及びます。現在はその多様で優れた特性を活かし、インフラ設備や電化製品、調理器具など幅広い場面で使われています。特に、電気に関連するものには欠かせない金属資源であるため、昨今のIT産業の発展に伴い、銅の重要性はますます高まっています。

銅の特性と主な用途
特性 概要 主な用途
電気を通しやすい 銅は金属の中でも導電性が高く、効率良く電気を伝えることができる 送電線、屋内の電気配線、通信ケーブル、半導体、発電機、変圧器、配電盤
加工しやすい 柔軟で簡単に曲げ伸ばしできるため、複雑な形状にも加工できる 建築資材、仏具、仏像
熱を通しやすい 金属の中では熱伝導性も非常に高く、放熱や冷却を要する場面に適している ルームエアコン、除湿機、空気清浄機、電気冷蔵庫、電子レンジ、鍋などの調理器具
抗菌性が高い 細菌の増殖を抑える性質があり、衛生的な環境を維持することができる キッチンの排水口用ゴミ受け、病院の手すり

 

カーボンニュートラルの実現に向けて拡大する銅の需要

 2024年5月に銅の価格が史上最高値を更新するなど、ここ数年、銅の価格上昇が話題を集めています。その背景には、2050年のカーボンニュートラル達成に向けて世界中で導入が進んでいる、再生可能エネルギーや電気自動車(EV)が関係しています。これらには多くの銅が使用されているため、銅の需要も拡大しているのです。

再生可能エネルギーに不可欠

 風力発電、太陽光発電などの設備には、多くの銅が使用されています。例えば、洋上風力発電では、発電機のモーターや変圧器、送電線などに銅が用いられており、1メガワットあたり約11.5トンの銅が必要とされています。

 国際エネルギー機関(IEA)は、2050年までに太陽光発電容量は現在の約20倍、風力発電は約11倍に増加すると予測しており、その分、銅の需要も増えていくと考えられます。

経済産業省による試算では、今後、2030年導入目標である10GWの洋上風力発電機を製造するには、現在の国内需要の約10%分に相当する11.5万トンが必要になるとされている。

電気自動車はガソリン車に比べて銅の使用量が多い

 EVにはモーター用の銅線や、車載用バッテリーに使われるリチウムイオン電池などに銅が使用されています。1台あたりの使用量は80キログラムで、ガソリン車の約4倍に相当します。経済産業省の試算では、EVを100万台生産するには8.3万トンの銅が必要だと言われています。IEAの予測では、各国政府が温室効果ガスの実質ゼロ排出を目指す政策を実施すれば、2030年には世界のEV保有台数は約1億4500万台に達する見通しです。これに伴い、銅の需要も拡大し続けていくでしょう。

自動車1台あたりの銅使用量(キログラム)

出典:International Copper Association

銅の安定供給に向けた動き

 再生可能エネルギーやEVの急速な拡大に伴って、現在のペースで需要が増えていけば、供給が追いつかなくなるとの予想もあります。そのため、世界各国で銅の安定供給が重要な課題となっています。

世界の動向

 銅の長期的な安定供給を目指す取り組みが、世界各国で進められています。

 アメリカは2023年に、米国エネルギー省の「重要物資(Critical Materials)」リストに銅を追加しました。これにより、銅はコバルトやリチウムなどの希少金属と同様、資源確保のための資金援助の対象となりました。

 また、EUは2024年に、生産能力の強化や調達先の多様化、持続可能性の向上などを目的とした「重要原材料法」を施行しました。

 この法律において、銅は欧州経済にとって重要かつ供給リスクの高い原材料である「重要原材料(Critical Raw Materials)」の中でも、エネルギートランジションや防衛・宇宙産業などに関連し、生産量・埋蔵量の増加が難しいもの、かつ将来需要が伸びると予測される「戦略的重要原材料(Strategic Raw Materials)」に指定されています。

 さらに、カナダやアメリカといった先進国では、過去の鉱山を再開発したり、新たな鉱床を探査したりといった新たな銅鉱山開発に乗り出す動きも見られています。

日本国内の動向と安定供給に向けた取り組み

 現在、日本の製錬所で処理される銅精鉱(銅鉱石を砕いて粉状にし、不純物を除去して品位を高めた鉱石)は海外に依存しています。そうした状況の中で長期的な安定供給を確保するために、次のような取り組みに力を入れています。

安定的に資源が得られる銅権益の確保

 日本で供給されている銅精鉱には、海外の銅鉱山に出資して得た銅権益によるものがあります。銅権益とは、商社や非鉄金属メーカーなどが、出資などによって銅鉱山の採掘権や生産権を取得し、その鉱山で得られる銅の一部を確保する権利が得られるというものです。

 しかし、銅権益を取得している鉱山の枯渇などによって、将来的に日本の銅自給率が低下することが予想されています。そのため、日本では新たな銅権益の確保が急務となっています。

リサイクルの推進

 将来的な銅の需要に応えるには、採掘や輸入量を増やすだけでなく、リサイクルによって足りない供給を補っていくことも必要です。今までも、使い終わった銅製品や、製品を加工する際に出る銅のくずのリサイクルは行われてきましたが、今後は廃棄される家電や電子機器などを最大限に利用し、リサイクルする銅の割合を増やしていく必要があります。

 そのために、リサイクル技術の向上や、リサイクルできる製品の回収率を高める仕組みづくりが求められています。

現状、リサイクルされずに廃棄されている家電製品や電子機器は少なくない。

カーボンニュートラルと密接な関係にある銅

 銅は、再生可能エネルギーの設備や電気自動車に欠かせない金属であり、カーボンニュートラルの達成に大きく貢献する存在です。今後もその需要は増え続けると考えられ、銅の重要性はますます高まっていくでしょう。需要の拡大が続く一方で、供給が追いつかなくなることも懸念されており、銅の安定供給に向けた取り組みを進めていく必要があります。

 銅は家電や電子機器など、さまざまなところで使われています。銅価格の変動は私たちの生活にも大きな影響を与える可能性があるため、銅に関わる国内外の動向がニュースで取り上げられたときは、ぜひ注目してみてください。

記事掲載日:2024年12月16日

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