クリティカルミネラル(重要鉱物)って何? 用途や重要性について解説!
近年、ニュースなどで「クリティカルミネラル」について取り上げられる機会が増えています。クリティカルミネラルとは「重要鉱物」という意味ですが、どういった鉱物が「重要」とされており、なぜ注目されているのかご存知でしょうか。
今回は、注目の高まる「クリティカルミネラル(重要鉱物)」について、基本的な知識や、その重要性についてわかりやすく解説します。
「クリティカルミネラル(重要鉱物)」とは、ある国や地域にとって経済的・産業的に不可欠でありながら、供給リスクが高い鉱物資源を指します。
どの資源がクリティカルミネラル(重要鉱物)に含まれるのか、明確な定義は国によって異なり、政策や産業の動向次第で変動することもあります。例えば、アメリカでは2022年に、米国地質調査所(USGS)がアメリカにとってのクリティカルミネラル(重要鉱物)として、50種を指定しました。
多くの国で、クリティカルミネラル(重要鉱物)とされている鉱物資源には、以下のようなものが挙げられます。いずれも、電子機器や自動化技術など高度な性能を必要とするものに活用されています。電気自動車(EV)や再生可能エネルギーの設備にも欠かせません。
つまり、クリティカルミネラル(重要鉱物)を安定的に確保できるかどうかが、その国の革新技術の発展や経済の発展、さらにはカーボンニュートラル達成のカギを握っているといっても過言ではないのです。
鉱種名 |
主な用途 |
リチウム |
- リチウムイオン電池(EVのバッテリー、スマートフォンやノートパソコンなどのバッテリーなどに使用)
- 大容量蓄電池
|
コバルト |
|
ニッケル |
- ステンレス鋼(建設、自動車、航空宇宙、建築現場などで使用)
- リチウムイオン電池
- 大容量蓄電池
|
銅 |
- 電気配線
- 半導体
- 発電機
- 風力発電、太陽光発電設備
- 大容量蓄電池
|
グラファイト |
|
レアアース |
- テレビ、スマートフォン、パソコンなどのディスプレイ
- EV車の小型モーター
- 石油精製や自動車排ガス浄化などに使われる触媒
- 風力発電設備
|
鉱物資源に関しては、「レアメタル」「レアアース」といった言葉もよく耳にします。
日本におけるレアメタルとは、1984年の鉱業審議会レアメタル総合対策特別小委員会で以下のように定義されており、31鉱種(レアアースは17元素を総括して1鉱種、PGMを1鉱種)がレアメタルとされました。
- 地球上に存在が稀であるか、あるいは抽出が困難なもの
- 現在工業用需要があるか、又は今後見込みがあるもの
- 埋蔵及び生産がごく少数の国に偏在し、ほぼ全量を特定国からの輸入に依存せざるを得ないため、各種要因により供給途絶の危険性があるもの
レアアースは、スカンジウム、イットリウムの2元素にランタノイドと総称される15元素を加えた17元素からなるグループで、希土類元素とも呼ばれています。
クリティカルミネラル(重要鉱物)は各国が経済的・産業的に重要で供給リスクが高い鉱物資源として定めているもので、どの資源が該当するのか明確な定義がなく政策や産業の動向次第で変動するのが特徴です。
クリティカルミネラル(重要鉱物)が注目されている理由
クリティカルミネラル(重要鉱物)が注目を集めている理由としては、以下の2点が挙げられます。
2050年のカーボンニュートラル達成に向けて、各国で再生可能エネルギーやEVの普及が進められています。2023年に行われたCOP28では、「世界全体で再エネ発電容量を3倍」にすることが提案され、日本を含む有志国が賛同しました。また、国際エネルギー機関(IEA)によるEVの販売シェアの予測では、自動車の全販売台数に対するEVの販売シェアは2023年実績18%だったものが、2035年には50%を超えるシナリオもあると予測されています。
こうした動きに伴って、クリティカルミネラル(重要鉱物)の需要も高まっていくと考えられています。IEAが公表したシナリオでも、2040年までにクリーンエネルギー技術に使用される鉱物資源の大幅な需要増加が予想されています。
IEAによるクリティカルミネラル(重要鉱物)の需要予測
(注)クリーンエネルギー技術用途について、2050年ネット・ゼロ達成シナリオに基づく予測
出所:Outlook for key minerals – Global Critical Minerals Outlook 2024 – Analysis - IEAをもとにJOGMECが作成
クリティカルミネラル(重要鉱物)に含まれる多くの鉱物資源は、鉱山開発に限らず製錬などの中間工程といったサプライチェーン全体が特定の国に集中しており、世界全体がそれらの国からの供給に依存せざるを得ない状況となっています。
供給国の多くは政情などが不安定であるため、情勢によっては安定的な供給が難しくなるリスクを抱えています。さらに、将来的に需要が急増して供給が追いつかなくなった際には、世界各国との間で資源獲得競争が起きることも懸念されています。こうした中で、いかに安定的な供給を確保するかが、世界各国で大きな課題となっています。
クリティカルミネラル(重要鉱物)のサプライチェーンの現状(2023年)
出所:Outlook for key minerals – Global Critical Minerals Outlook 2024 – Analysis – IEAおよびCobalt Market Report 2023- Cobalt Instituteより、
2023年のデータをもとにJOGMECが作成
クリティカルミネラル(重要鉱物)の安定供給に向けた日本の課題
日本におけるクリティカルミネラル(重要鉱物)の確保は、そのほとんどを海外からの輸入に依存しており、供給リスクが高いのが現状です。
そのため、日本ではクリティカルミネラル(重要鉱物)の安定的な供給に向けて、以下のような取り組みを検討・実施しています。
取り組み |
概要 |
供給源の多角化 |
資源国での新たな鉱山の探査・開発 |
省資源技術の開発 |
使用する資源量を少なくしても高い性能を発揮できる技術を開発することで、需要を抑える |
金属資源のリサイクル |
使い終わった電化製品やEVなどからクリティカルミネラル(重要鉱物)を取り出し、再利用する技術の開発や、回収率の向上 |
備蓄体制の強化 |
供給不足に備えて備蓄しておける体制作りや、制度の整備 |
再生可能エネルギーやEVに欠かせないクリティカルミネラル(重要鉱物)は、2050年のカーボンニュートラル達成という目標に向けて、ますます重要性が増していくでしょう。需要も大幅に増加していくと考えられますが、現在は一部の国にサプライチェーン全体を依存しているという課題があるため、世界各国で協力しながら安定的な供給を目指していく必要があります。日本はもちろん、世界各国の今後の動向に注目してみてください。
記事掲載日:2025年5月15日