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特集1:SPECIAL対談 AIの専門家とエネルギー開発を語る(2)

資源開発のAI活用は始まったばかり

小西 資源エネルギー分野でのAIの活用という点では、異常・予兆検知の用途で資源開発企業が取り組み始めています。たとえば油ガス田を開発する際、井戸を掘る掘削機や原油をくみ上げるポンプ等の機器にセンサーを設置し、異常や予兆を検知することで、掘削や生産における障害を未然に防ぐ、といったものです。まだ開発中ですが、ビッグデータを蓄積できれば、AIで解析し、「このような障害が発生する可能性が高い」「すぐにメンテナンスが必要」などの予測ができると期待されています。

比戸 AIの活用を異常検知から始めるのは非常に賢明だと思います。資源エネルギー開発では、一度の事故で数十億、数百億が一気に吹き飛ぶこともあると聞いています。経済的な効果は非常に大きく、取り組む価値は高いと思います。

小西 ほかにも、原油・天然ガスの生産施設では、これまでパイプラインの腐食の有無などを人の目で直接点検していましたが、最近はドローンで撮影した画像を使った保守点検が始まっています。今後、AIの画像認識技術を使えば、AIが異常の有無を判断してくれるようになるかもしれません。最近は赤外線カメラで撮影した画像を基に、漏洩したメタンガスを自動検知できるセンサーシステムも市販されています。そういったものをドローンに搭載できれば、作業の大幅な効率化が図られるとともに、人では発見できない微量の漏洩も防げるようになるでしょう。省力化、人員の安全確保という点で非常に期待されている取り組みです。

比戸 それは素晴らしいですね。センサー技術の発達はAIにとって非常に重要で、高性能なセンサーを安価に導入できることは大きなアドバンテージになります。弊社では自動車部品の点検や食品製造現場における異物混入の監視などに、AIによる外観検査案件を多く手掛けていますが、ドローンを使って撮影した画像から異常を検出するというソリューションも、技術的には非常に似ていると思います。

小西 一方、資源開発の上流では、地下構造を調べることも重要なテーマです。これまで、人力や専用機器で情報を集め、専門の技術者がその地域の歴史を数億年前までさかのぼり、「ここに原油が多くたまっているのではないか」といったことを、長年の経験と知識の蓄積に基づき判断してきました。人間の持つ知識の蓄積や経験をAIで再現するのは難しいのではないかと思いますが、どう思われますか?

比戸 おっしゃる通り、そのハードルはとても高いと思っています。今の技術では、AIが学習できるのはデータだけなので、人間だけが持つ知識や経験をどうAIに反映させるかは大きな課題です。伝統の技のようなものがあったとして、すべてヒアリングから導き出し、AIで再現することは困難です。とはいえ、人間は百発百中ではないにしろ当てている。そこにはなにかがあるはずで、それを解明するにはデータの量がひとつの問題になってきます。

小西 データの量ですか?

比戸 そもそも資源エネルギー分野は、AIを活用するのが難しい分野のひとつです。その理由は、データの集めづらさにあります。AIは、教師データと呼ばれる膨大なデータを学習させることで予測精度を高めていきます。逆にデータが少ないと、偶発的なデータの比率が上がり、判断の精度が下がります。そのため、学習させるデータが多ければ多いほどAIは優秀になるのですが、資源エネルギー開発の場合、実際の地下の構造を見ることはできず、地下構造に関するデータも限られています。世界中で探査を行う技術者の知識もデータとしてまとまっているわけではありません。情報を集めるために掘削するにしても巨額の資金が必要です。ほかの分野よりも圧倒的にデータの収集が難しい点が、AI活用のハードルの高さです。これは先ほど話に出た、AIを活用した異常検知でも同様です。異常検知はあらゆる産業分野で不可欠な機能ですが、ほとんどの分野でAIに学習させるデータが足りません。異常は本来発生してはならないものなので、サンプル数に対し、その中に含まれる異常データの割合が決して高くありません。

小西 ということは、現在、AI活用が進んでいる分野は比較的容易にデータを蓄積できるということでしょうか。

比戸 おっしゃる通りです。たとえば、2015年頃からAIが威力を発揮し始めたのは、画像認識や音声認識の分野です。現在、インターネットで、猫の画像を検索するとさまざまな猫の画像が表示されるのは、AIに大量の猫の画像を学習させたおかげです。スマートフォンに「明日の朝7時に起こして」と話しかけるだけでアラームをセットしてくれるのは、AIに大量の音声データを学習させたおかげです。画像データや音声データは簡単に集まるため、AIの認識性能は日々向上し続けています。
JOGMEC デジタル推進グループ デジタル技術チームリーダー 小西祐作
JOGMEC デジタル推進グループ デジタル技術チームリーダー 小西 祐作
1999年静岡大学理工学研究科(修士)修了。2000年石油公団入団。
2019年5月、デジタル推進グループ担当調査役、2020年より現職。
技術部探査技術課長を兼務しながら、日本の石油・天然ガス開発業界やJOGMEC内への、デジタル技術の普及・促進に取り組む

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